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太陽国ソレイユ

今回も作者の別作品「おっさん船医」を更新しています。

興味のある方は覗いてみてください。

 太陽国ソレイユ。

 初代(・・)勇者ファンダシオン・スールヤ・ソレイユが建国した国であり、人間界では最も繁栄すると同時に魔界に距離が近い国である。

 今より500年前、世界は魔王率いる魔物により世界は闇に覆われる寸前まで追い詰められた。その時、とある一人の青年が立ち上がった。

 その青年こそがファンダシオンであった。


 ファンダシオンは女神より聖剣を授けられ、その力を持ってして魔物を駆逐し、魔族を倒し、魔王を打倒し魔界へ押し戻した。人類はギリギリまで追い詰められたが一先ず勝利出来たのだ。


 その際に彼と彼の仲間達によって、太陽国ソレイユは建国された。


 ファンダシオンは言った。

 『いずれ魔王はまた現れる。我々はその為に準備しなければならない。人類の防波堤として、此処で魔界を監視し、奴等の侵攻を食い止めねばならない。いずれまた現れる『勇者』を我々は待ち続ける。また太陽が昇るその日を』


 その言葉の通り、魔王は五十年の年月の後またも現れた。元々ファンダシオンは魔王を追い詰めこそしたが倒し切る事は出来なかった。魔界にいけるだけの余力も人材も無かったのだ。

 だからこそ、魔王を撃退して出来た猶予で太陽国ソレイユを建国したのだ。魔王が復活した、その時には既にファンダシオンは亡くなっていたが彼の意思を継いだ人々が魔王軍との戦いに明け暮れた。

 太陽国ソレイユはそれに対し備えをして来たのだ。


 だが、それだけのことをしてもまたも人類は追い詰められようとしていた。『勇者』によって一度は追い詰められた魔王は2代目『勇者』の力を持ってしても打ち破ることができなかった。魔王は対策し、自らの力を分け与えた幹部を生み出していたのだ。

 勇者は魔王本人だけでなく、幹部とも戦うことを強いられ、太陽国ソレイユも次第に疲弊していった。

 そこに魔物と魔族を封じる力を持つ存在が現れた。『聖女』の誕生であった。

 『勇者』と『聖女』により、今度こそ魔王は討ち取られ魔物と魔族は『聖女』の力により魔界に封じ込められ、魔王もいない今魔王軍は大規模な攻勢を仕掛けることが出来なくなった。

 魔界と人間界の境界、そこはトワイライト平原と呼ばれ両界にとって最前線の場所となっていた。


 太陽国ソレイユはこうして建国された歴史を持つ。

 その為この国の人々は、自らを人類の守護者であると自負しており、使命感があり、全員誇り高かった。

 兵士、騎士、竜騎士、魔法使い、魔術師……全ての戦闘職の人材は魔王軍との戦いに備えて日夜訓練を行い、魔王が現れれば戦場に身を投じた。


 魔王が現れ、その度に戦火を交える。

 その数、既に4回(・・)。今回の魔王軍による侵攻を含めたら五度目だ。

 しかし、その全てを太陽国ソレイユはトワイライト平原にて防いだ。

 勿論、魔王側も馬鹿ではない。時には裏をかかれ別の国を滅ぼされたり、多大な被害を受けたこともあった。『勇者』が各国を回って魔族や魔物を倒すのもこうして別の場所から現れた魔王軍を倒す為である。

 だが、魔王軍の本隊である膨大な魔物と魔族をトワイライト平原で押し留め続けたのは『勇者』に劣らぬ功績であろう。


 そして今回200年ぶりに現れた魔王軍に対し、太陽国ソレイユは国家緊急事態の報をかけた。軍民問わず一丸となって魔王軍と対峙する。


 それこそが太陽国ソレイユの存在意義なのだから。


 太陽国ソレイユは膨大な数の魔物をトワイライト平原にて迎え撃っていた。













 王都ハルマキス。そこは、世界最大にして並ぶものはいない大国の首都であり、最も繁栄した都と言われている。

 昼間はこの国の人々と他国から訪れた商人が行き交い、活発な声がなくなる事はない。

 更にはこの王都ハルマキスは太陽の名の通り、夜になっても魔石を使った"永続する街灯(ルーチェランプ)"が王都を照らすことから人々の往来が絶えない。


 更にこの王都、500年続く国であるから常に改良が加えられ続け拡大の一途を辿ってきた。立ち並ぶ家も昔ながらの石の家から最新技術を使った建造物まであり、新旧の技術の家が立ち並ぶ様からは、太陽国ソレイユの紡いできた歴史を感じられる。

 今やこの王都を囲む城壁は五重になっており、更には用水路も地下で作り、水を確保するだけでなく、防御用の水堀としても利用している。

 更には目には見えないが魔法技術による結界まで施されている。


 魔界に程近いというのにこれ程までに人で賑わうのは、太陽国ソレイユが大国であるという象徴(・・)であり、堅牢な城壁への信頼(・・)であり、そして何より『勇者』の存在(・・)があるからだった。






 剣と剣が撃ち合う鈍い音が聞こえる。


 王族の棲むユーリウス城のとある広場で二人の男が戦っていた。

 身の丈程の大剣を背負った鍛え抜かれた体に角刈りの男、オーウェン・ローバストは剛剣を振るい、攻めてくる剣戟をいとも容易く受け流し、逆に攻める。

 それに食い下がるは『真の勇者』と名高いユウ・プロターゴニスト。彼は額に汗を掻きながら必死にオーウェンに攻撃していた。


「【大巌砕き】」

「くっ、【見切り】そして【速斬撃】」

「おおっと危ねぇな。だが、まだまだァッ!」

「うわぁ!?」


 オーウェンは簡単に【速斬撃】という【高斬撃】より威力が落ちるもその分速さが勝る技能(スキル)をユウのように【見切り】を使わずにいとも簡単に避ける。

 そして明らかに超重量級の大剣を小枝のように振るい、ユウの動きを阻害する。

 それはさながら嵐のような攻防で容易には近づけない程激しいものだった。

 その後も食らいついたがまさかの焦るあまり突撃しすぎ、オーウェンに足を引っ掛けられ転んだ所に頭上に大剣を突きつけられた所で修行は終了した。


「ま、負けた……」

「ひゅー、さっすが勇者様だな。もう俺についてくるなんてよ」


 疲労なんて感じさせない軽い口調でオーウェンが口笛を吹きながら評価を下す。

 ユウはその言葉に首を横に振る。


「いいや、まだまだだよ。僕なんて一流の戦士のオーウェンや近衛騎士団長ルヴィンさんには遠く及ばない」

「そう謙遜する必要はないと思うけどな。ま、技術に関しては確かに年季が違うとも言えるな。だがよ、旦那はまだ聖剣を手に入れたばっかりだろ? それにあの力だって使ってないじゃねぇか」

「あれは確かに勇者だけの強力な技能(スキル)だよ。だけどそれで勝っても意味がない。僕の力は聖剣によるものが大きい。勇者の技能(スキル)に頼って、勝利したとしても、それじゃ本当の意味で実力を身につけることは出来ない。……そう結局僕は、本当の意味でフォイルくんには勝てなかった」

「旦那」


 オーウェンはユウとフォイルが幼馴染であったことを知っている。

 あれ以来ユウはのめり込む様に強さを求めるようになった。それは確かに必要な事だがオーウェンにはそれが無理をしているように感じた。だが、それでも彼が強さを求めるならとこうして稽古に付き合っているのだ。

 暗くなった雰囲気を変えようと、オーウェンはユウの肩に腕を回す。


「ところでよ、旦那。実はこれから行く俺の行きつけの店にかわいこちゃんがわんさかいるんだけど、一緒にどうだ? 勿論お触りもおーけーだ」

「え!? い、いや僕そんな店は」

「そんなに狼狽えるなよ。初心じゃあるまいし。旦那だってもう20に近いだろ? なら、綺麗なお姉ちゃんたちと少しくらい楽しい思いをしてもバチは当たらないと思うぜ」

「で、でも僕は勇者だしそんな店に行って何か噂とかたったら……」

「勇者どうこうの前に旦那は一人の男だろ? なら、一発これヤッて一人前の男になろうぜ?」


 まだ固辞するユウを肩を組んでさぁ行くぞーとオーウェンが無理に連れて行こうとする。


「こ〜ら〜、何ユウくんを誑かしてるのかな?」

「ふ、ふふふ不潔です!」


 それを遮るように立つ二人の人影。

 メイ・ヘルヴィンとクリスティナ・シビュラだ。

 メイは軽く咎めるように目を少し細く。

 クリスティナは錫杖をギュッと胸元に持ち、顔を赤くしながら睨んでいた。


「オーウェンさん、あんまりユウくんを困らせないであげて。ユウくんは純情なんだから直ぐに騙されたりしちゃうわ」

「そうです! ユウさんは勇者なんですよ! そんな、い、いいい……いかがわしい場所に連れて行くなんて女神様が許しません!」

「やっべ、勇者さんの保護者が来ちまった。これは旗色が悪い。俺は逃げさせてもらうぜ」

「誰が保護者ですか!」


 スタコラサッサとユウから手を離し逃げ出したオーウェンを、建物の陰から現れた青い鱗の飛竜が首根っこを掴み上げ宙ぶらりんにした。


<キュルルッ♪>

「うご!?」

「くりす姉! メイ姉! 捕まえたぞ!」

「げっ、ファウ坊おまえ裏切るのか!」


 青い鱗の飛竜のキュアノスと獣人と呼ばれる種族と人間とのハーフのファウパーンだ。

 キュアノスはオーウェンを咥えながら嬉しそうにブラブラと左右に首を振る。


「ぐぇっ、し、絞まるっ。や、やめろー! 俺はただ旦那を一丁前の男にしてやろうと思っただけだ! 何が悪いんだ!」

「ユウさんは勇者なんですよ! そんな不純な所、連れて行って良い訳ないじゃないですか!」

「勇者の前に一人の男だろ! なんで束縛されなきゃなんねぇんだ! これは人権侵害だ! 断固として扱いの改善を要求する! そして不当な人質の解放を請求するぞ!」

「結局自分が逃げたいだけじゃないですか! ファウパーンくん絶対に離しちゃだめですよ! 今日という今日はその心を正してあげます!」

「それは洗脳だろ!?」

「矯正です! 貴方が真人間になるための!」

「だからそれが、が、ぐ、ま、まてくびがっ」


 嬉しそうにキュアノスが左右に首を振ることでオーウェンの首が締まり顔色が悪くなる。


「キュアノス、そろそろオーウェンさんの顔色が悪くなってきたから離してあげて」

<キュ? キュルキュル>

「おげぇっ」

「きゃ、くすぐったいわ。ふふっ」

 乱雑にオーウェンを放り投げた後、キュアノスはメイの方に近寄り首を擦り付ける。子が母に甘えるような動作だった。

 ユウは慌てて息も絶え絶えなオーウェンに近づく。


「大丈夫かい? オーウェン」

「旦那、流石に死ぬかと思ったぜ……。やいファウ坊! キチンとキュアノスを躾けておけよな、仲間に殺されるとか勘弁だぜ!」

「ご、ごめん。けどキュアノスからすればあれでも戯れるくらいの感覚だから」

「魔獣にとっての遊びと人間にとっての遊びはかなり違うからね……そういえばキュアノスはメイちゃんにも懐いてるよね」

「あ、そう? キューちゃん可愛いもんね!」

<キュル♪ キューキュー♪ >

「へっ、やっぱり母性が違うんだな。ちんちくりんとは心も体も違ぇ」

「オーウェンさん? 神の顔も一度までですよ?」

「へーへーそれはすまな……ん!? 待てよ、心狭すぎるだろ!?」

「当然です! 私は女神様ほど優しくありません、間違った人にはビシバシ指導していきますよ!!」

「おい? 何錫杖(しゃくじょう)振りかぶってんだ? 何を唱えてるんだ!? や、やめろ仲間に対して奇跡を使おうだなんて何考えてるんだこのあほっ!」

「あほじゃないですから! ……じゃなかった、あほじゃありません!」

「だ、ダメだよ二人とも喧嘩しちゃっ」

「ユウ兄、オイラ知ってるよ。あぁ言うのを痴話喧嘩って言うんだろ?」

「「何言ってやがる(いってますか)、ファウパーン!!」」

「ひぃっ!?」


 怒鳴るオーウェンとクリスティナ。


 そんな彼らに近付く、騎士の一団があった。

 その中で最も豪華なマントを羽織って、オーウェン以上の大剣を背に携える巨躯の騎士。黄昏を彷彿とさせる髪色に、百戦錬磨の雰囲気を漂わせる年嵩(としかさ)の男性。


「此処にいらっしゃいましたか、勇者様」

「っ、ル、ルヴィンさん。お恥ずかしいところをっ!」


 ルヴィン・オールマイティ・ルーキフェル。

 太陽国ソレイユの誇るコロナズマ近衛騎士団の近衛騎士団長。その腕は一流でオーウェンすら彼に剣技では敵わない。それはつまり、勇者伝来の技能(スキル)を抜きにすれば、ユウですら彼には敵わないということだ。

 彼と拮抗出来たのはフォイルとグラディウスだけである。

 あれ程争っていたクリスティナとオーウェンも慌てて背筋を伸ばす。


「畏まらないで下さい。私はただ伝言をお伝えにやって来ただけです」

「えっ、伝言ですか?」

「はい。メイ殿。テュランノス国王陛下からの召集命令です」









 荘厳な、それこそ限られた者しか訪れる事の出来ないユーリエル城。

 元々は王都を一望出来るよう高い岩山に築いた城であり、この国では城壁を除けば最も高い建造物である。太陽国ソレイユを訪れた人々は何よりも、王都に入れば見えるこの城を見て簡単な息を吐く。


 そんなユーリウス城の内部。

 玉座へと至る所に座る一人の男性。

 右に掲げられるは太陽国ソレイユの誇りを示す、まさしく太陽を模倣し、そこに剣が聳えている旗。左に掲げられるは同じく太陽を模倣し、剣の代わりに錫杖がある旗。

 玉座の背後にあるのは初代勇者ファンダシオンが掲げし聖剣と魔を払う聖女、そして魔王が倒される場面の絵であった。


「ユウ・プロターゴニスト。国王様の命令に馳せ参じました」


 ユウが頭を下げると同時にメイ達も頭を下げ、膝をつく。

 その先にいる一人の男性。偉丈夫な身体に赤を基調とした豪華絢爛な衣装に、王冠を被った男性。

 その相手こそ太陽国ソレイユの()国王テュランノス・ディグニティ・オルグレン・ソレイユ。

 ファンダシオンの子孫であり、大国である太陽国ソレイユを治める王である。

 そんな彼は、ユウが頭を下げるのを見ると慌てて立ち上がった。


「頭をあげてくれ勇者殿! 貴方様は世界の希望、それに対し儂はあくまで一国の王に過ぎない。本来であれば逆の立場であるのだ。儂は貴方に世界を救ってくれと懇願することしかできない」

「いいえ。僕はただ聖剣を扱える一個人でしかありません。民を、国を導ける国王陛下と比べたらその偉大さも歩んできた道も、重みも、何もかもが違います」


 ユウは本心からそう思っていた。

 国を導くという点でおいて、若造の自分が叶うはずがないと。人間性でも自身よりも上の先駆者である。だからこそ、頭を下げるのは当たり前のことなのだ。


 しかし、テュランノスからすればこの対応は非常に困る。何故ならユウは『真の勇者』であり、世界を救う聖剣アリアンロッドの担い手だ。そんな彼にこのような態度を取らせるのは国王として、そして個人として余り好ましくなかった。

 何故ならこっちは頼む事しかできない立場なのだ。

 しかしそれが彼の性質(たち)であるとも理解しているテュランノスは彼の幼馴染に目を向けた。


「ヘルディン殿、プロターゴニスト殿は昔からこうなのか?」

「はい、ユウくんは昔からこうです」

「メ、メイちゃんっ!?」

「はっはっはっ! やはり勇者殿は几帳面すぎるらしいな! 今も、慣れない所作にぎこちないのがわかるぞ?」


 メイにまで同調され、そこでユウは初めて年相応の顔を見せる。テュランノスに笑われ、ユウは顔を赤らめる。

 勇者であろうと肩肘を張っているのをテュランノスに見抜かれた。


「この場では格式ばった表現など不要だ。儂は腹を割って話し合いたい。そもそも人類を守る者という括りでは儂らは同士だ。ならばこそ、同士に格式張った対応など不要。寧ろ邪魔でしかない。違うかな?」

「……そう、ですね。わかりました。でも、僕は昔からこのような話し方なので国王様の望むような対話は出来ないと思います」

「いや、そんなことはない。今、儂は御主の目を初めて真正面から見た。良い目をしている。志を共にする者同士、儂は御主と友になりたい。……ユウ殿、儂と友となってくれないか?」


 テュランノスは真っ直ぐにユウを見た。その目はどこまでも真摯である。

 ユウは彼の真摯な心に押されて、頷いてしまう。それを嬉しそうにするテュランノス。


 ーーフォイルの時の国王とは、正に器が違っていた。


「良かった。それでは勇者殿幾つか聞きたいことがある。聖剣の力の方は如何かな?」

「今は問題なく扱えます。オーウェンにも修行をつけてもらっていますし、技能(スキル)についても発動には問題ありません。まだ完全に慣れたとは言えませんけど……」

「ならば良かった。技能(スキル)が使えるようになっても慣れるまでは時間がかかるからな。これも女神オリンピアの導きがあってこそだろう」

「……」


 女神オリンピア。

 人々を導き、職業(ジョブ)を授ける神様。


 人は女神の【神託】によって『職業』を得て、技能(スキル)を習得できる。そうすることで魔王軍に対しても対抗できる。

 人に力を与え、導いてくれるその御業(みわざ)は正に神の名に相応しい人類の守護者だ。

 

 ただ……ユウにとっては複雑な気持ちである。

 何故なら女神は『偽りの勇者』としての役割をフォイルに押し付けた張本人。対話も出来ない以上、その心も何も分からず、ただただ幼馴染をあんな目に合わせたとあれば必然印象も悪いと言うもの。


 ユウからは見えないがメイも、そっと視線を下げた。何も思っているのか、ユウからは見えないしわからない。


 それでもユウが女神を恨んでいないのは、元の彼の優しい性格と何よりフォイルの遺言(死んでない)が理由だ。


「……すまん、今のは聴かなかった事にしてくれ。少しばかり無遠慮過ぎた」

「いえ。国王様の立場も理解していますから」

「そうか……感謝する。それでな実は今日勇者様達に来てもらったのはそれだけではない。ルヴィン」

「はっ」


 案内の後、テュランノスの側に控えるように直立不動していたルヴィンが一歩前に進み出る。王を守る剣であるルヴィン。彼の手には上質な紙で何かが記された手紙があった。


「此処に一通の手紙があります。各国に派遣させた諜報員からですが、ソドォムにて魔王軍の怪しい動きがあるとの情報がありました」

「魔王軍……!」


 人類に仇す諸悪の根源。或いは元凶。

 フォイルによって『爆風』のダウンバーストが討ち取られて以来、大きな動きがなかったが最近になってまた活動を始めたらしい。


「知っての通りソドォムは我が国と協約を結ぶ大切な国だ。しかし、ソドォムだけでは魔王軍に対抗出来ない。だが我が国も戦力を例のトワイライト平原に割かれている以上あまり余裕もない。『真の勇者』である貴公の力が必要だ。だが……勇者殿は聖剣アリアンロッドを手に入れて日が浅い。まだ戦えぬというのならば此方の方で何とか戦力を抽出して」

「行きます」


 ユウは即答した。

 これから行くのは戦場だ。

 今までの魔獣退治や盗賊退治、悪党とは違う。

 相手は魔族。人類の天敵。

 フォイルに着いて行く日々だったが分かる。

 奴らは一変の容赦なく人を害する。悪意と殺意と害意を持ってして。

 正直言って怖い。恐ろしい。



 だけど。

 だけれども。



僕は勇者なんだ(・・・・・・・)。だから戦います」


 王と周りの大臣達が感嘆する。流石は勇者だと。


「そうか、行ってくれるか! いや、良かった。実の所余りこちらも余裕があるとは言えなかったのだ。何か欲しいものがあれば言ってくれ。用意しよう。それくらいしか出来ぬのが歯痒いのだが……」

「わかっています。国王様にはこの国を守る義務があることを。この国がトワイライト平原で大多数の魔王軍の魔物を押し留めてくれているからこそ、僕達はトワイライト平原を突破してきた強力な魔族と魔物のみに注力することが出来ます。奴らは僕達が倒しますから安心してください」

「ユウさん、私も行きます。女神様より授かった奇跡で、力になりますから!」

「ま、旦那が行くんなら俺も行くしかないわな」

「オイラも行くよ!」

「皆……そうだね。行こう」


 皆を元気づけるように笑うユウ。

 だけど、その姿は何処か無理をしているように見えて。


「ユウくん……」


 メイだけが少しだけ心配そうに見ていた。




 太陽国ソレイユについてですが、モデルがあります。

 それはルクセンブルクという要塞群です。そこは小国ながらも古い町並みと要塞群が世界遺産に登録されるほどです。

 是非ともご覧下さい。そうすれば筆者のイメージしている太陽国ソレイユの街並みが少しでも伝わると思います。昔の街並みと現代の建造物が共存する国の容姿は正に世界遺産に相応しいと思います。

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