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ダンジョンの中へ

著者の別作品「おっさん船医ですが処刑されました。しかし生きていて美少女美女海賊団の船医やっています。ただ、触診をセクハラというのはやめて下さい。お願いします」も更新致しました。

興味のある方はぜひお読みください↓

https://ncode.syosetu.com/n7090eo


「情報通り、開けた空間に出たな」


 整備された階段を降り、明るい場所が見えてきたと思ったら見えてきた光景に俺は驚いた。


 視界一杯に広がるのは、入り組んだ路地のような広場であった。それが果てしなく続いている。更には地下であるにも関わらず、まるで太陽があるように天井が光り輝いていた。


「驚きました……地下に、こんなに広い空間があるだなんて」

「ほぇー……中、明るいんだ」


 地下にこんな空間が広がっているとは思わなかったのだろう。アイリスとフィアがほおけた顔をする。


 そんな俺達の様子に、案内役(サポーター)として一緒に潜ったシルが一歩進み出て説明をする。


「此処は最初の階層"始まりの間"だよ。ダンジョンは階層毎に名前がつけられているから。この階層は、その名の通り初めてダンジョンに入る人が必ず足を踏み入れる所だから、そう言われてる」

「ということは、これまで見つかった階層にはそれぞれ名前があるのか?」

「うん。今発見されているのが四階層だから、上から"蔓延りの間"、"気象の間"、"未知の間"って呼ばれてる」


 シルの言葉に、俺はそれぞれの名称の意味を考える。


 名前からすると、それぞれの名称がその階層の趣向を表していそうだ。そんなことを考えているとキキョウが口を横から挟んでくる。


「それはまた。大層なことね。人って、物事に名称つけるの好きよね」

「ぼっちだって昔大層な異名で名乗っていたじゃないですか」

「うっ!?」


 アイリスの言葉にキキョウは喉を詰まらせたみたいな声をあげる。


 『氷霧』のスウェイ・カ・センコ。


 キキョウが八戦将として属していた際に名乗っていた名前だ。そのことを言っているのだろう。


 自らの黒歴史、忘れたい過去なのかキキョウは慌てながら、話し出す。


「そ、それならカチコチ騎士も鬼っ娘の父親もついていたじゃない! ほら、『鉄壁』とか『鬼武刀』とか!」

「私は、民衆が数多の魔獣の侵攻を退ける様から、いつの間にかそう呼ばれ、いつのまにか定着してしまった故」

「父ちゃんは、その強さから畏敬と畏怖から他の奴等にそう呼ばれてるって言っていたよ」

「確かにエドアルドさんやグリゼルダさんもそう呼ばれていたことはありました。けど、お二人は他者から名付けられたのであったであって、自ら名乗った訳じゃないのです」

「ぐぬぬ……!」


 キキョウが悔しげに唸る。

 俺はそんな二人の様子を苦笑いしながら見つめていた。相変わらず、仲が良いというかなんというか。険悪そうに見えて、あんな会話はアイリスとキキョウにとって日常なのだ。だから言葉ほど仲が悪くないことを知っている。


「にいちゃん達、何か異名を持っていたのか?」


 俺達の話を聞いていたシルが問いかけてくる。


 しまった、今は案内役(サポーター)のシルもいるのだった。


「あ、あぁ。すまない、変だったか?」

「ううん。冒険者は、異名をつけられるのを喜ぶから。別に、女神から称号(・・)として与えられた訳じゃないのに」

「所謂箔がつくという物ですね。冒険者とは腕っ節を重んじるとお伺い致しました。ならば、己を誇示する異名を求めるのは、自然の道理なのやもしれませぬ」


 エドアルドが内容を補足する。


 確かに、冒険者ギルドで会ったデイフットも『風痕』と名乗っていたな。あれとは別にパーティ名としては《残光の軌跡》と呼ばれていたから、おそらくは『風痕』は異名だったのだろう。


 異名と称号、どちらも似たような響きだが実態は全く違う。


 女神オリンピアから優れた偉業を成した際に、与えられる称号は同時に固有技能を得ることが出来る。対して異名はあくまで人が勝手に名付けたものに過ぎない。だから、それによって何か特別な力を得られるわけじゃない。


 まぁ、人から覚えられるという点では異名が付くことは損ではないだろう。そもそも、異名だ称号だと言っても、称号をそのまま異名としている人もいるくらいだし。言っていて何だが、ややこしいな。


 俺は会話しながら冒険者ギルドで得た情報の中に興味深い話があったのを思い出す。


「異名で思い出したけれども、どうやら名だたる冒険者が今ダンジョンに潜っているらしいよ。確か、『天花』と言ったか。どうやら一人(ソロ)で最高ランクにまで上り詰めたらしい」

「一人でですか? はぁ〜、それはすごいですね。どんな人なんでしょう?」

<ガゥゥ>


 アイリスが驚き、丸い瞳を更に丸くする。ジャママもまた興味深そうに一鳴きする。


「冒険者の最高位ねぇ。ならきっと筋肉ムキムキのゴツい漢に違いないわね。素手で魔獣を殺せるようなやつよ」

「む! たとえそうでも父ちゃんの方が強いよ!」

「ちょ!? 引っ張るのはやめなさいっ、服が破けるでしょ!?」


 キキョウの言葉に、フィアが噛み付いた。

 グリゼルダさん大好きなフィア。そこは譲れないのだろう。グイグイと抗議するようにキキョウの袖を引く。フードが破けそうになり、キキョウは慌てていた。




「とりあえず、最初はおれに着いて来て。いずれ魔獣が現れると思うけども、それまで大まかなこの階層の道や構造を案内するから」


 シルの先導のもと、俺達は歩き出す。


 一時間くらいだろうか。


 歩いたり、説明を受けたり、時には他の探索者に出会うことはあっても魔獣には全く出会わなかった。


「意外と魔獣に出会わないものなんですね」


 アイリスが呟いた。その言葉に、先頭のシルが振り返った。


「冒険者だけじゃなく、探索者も沢山いるから。魔獣は下に行けば行くほど強くなる。実力の低い人が多くいる第一階層じゃ、獲物の奪い合いになることもある。だから、此処で魔獣を沢山狩ろうとするのはあまり向いていないよ」

「確かに上の広場にあれだけの探索者や冒険者がいたんだ。彼らが全員此処に来ると考えれば獲物の取り合いは必然だな」

「地下の階層にいけばまた魔獣も多くでる。でも、さっきも言ったけど強い魔獣も増えるから第四階層までいけるのは殆どいない。絶対にいけるのは、《残光の軌跡》のパーティだけだと思う」

「あぁ、あの時の男か。確かに彼ならば、いけるだろうな」


 俺は冒険者ギルドでの出来事を思い出す。見た時から感じた強者の気配。


 戦っている所は見てないが、デイフットであれば最下層に行けると言われても納得できるだけの風格というものがあった。


「そうでした。私の方でも一つ、奇妙な集団の話がーー」

<ガウッ!!>


 何か思い出したのかエドアルドが話そうとした時、ジャママが吠える。


 俺たちは会話を切り上げ、直ぐに戦闘態勢に入った。


「え、え、な、何っ」

「下がっているんだ、シル。魔物が来る!」


 ジャママが唸る先。


 まだ何も見えて来ないが、俺達は何かが来ていると理解した。


 俺は目を凝らし、巧技である"感知"を使用する。


 やがて近づいて来る地響きと共に増していく存在感。


<フォロロロロッ!>

<キュゥゥゥー! キュゥゥゥー!!>

<ウホホホッ、ウホホホホッ>


 何処から集まったのか。先程までは見る影もなかった多種多様な魔獣が、明らかに俺達に向かって突進してきていた。

 

「どうやら早速現れたようだ。けど、見た感じ普通の魔獣にしか見えないな」

「あれは"刀角鹿"に"翔跳蝗"!? そして最後にいるのは"双巨腕猿"!? なんでっ、こんな所に出るだなんて!」


 シルが驚いた声をあげる。


 どうやら何度かダンジョンに潜ったシルからしてもこんな最初の階層で出てくるような相手ではないらしい。


 そのことは気になるが、それよりも俺は自らの力が何処まで通じるのか武者震いしていた。


「熱烈歓迎じゃないか。だが、好都合か。このダンジョンに住むという魔獣の力を押し計らせてもらおう! "月凛花"!」

<フォロッッ!?>


 俺は特に突出している先頭の"刀角鹿"とシルが呼んでいた魔獣をすれ違い様に斬りつけた。首の動脈を斬られた魔獣は勢いそのままに倒れ伏す。


 そのまま俺は巧みに剣を振るい、周辺にいた魔獣の急所を的確に切り裂く。すると横から頭がデカい魔獣が俺へと突進しようとするのが見え、避けようとする。


「【要塞(フォートレス)】」

「エドアルド!」

「私が貴方の盾となります。【大盾潰し】」


 そこへ割って入るエドアルド。明らかに重量のある魔獣の突進を大盾で受け止め、そのまま逆に押し付けることで複数体魔獣を押しつぶす。


<ウホホッ、ウホッ>

「危ない、やっくん!」


 エドアルドを邪魔だと思ったのか、奥にいた巨大な腕を持つ大猿(ゴリラ)が進み出て、その丸太のような大きさの手を向ける。それを見てフィアが駆け出し、両手を構える。


「力比べならあたしが負ける訳ない! 【無双乱舞拳】」

<ウホォォッ!!?>

「ぶい!」


 フィアの倍以上の大きさの相手だったがフィアは真正面から殴り勝った。フィアは自慢げに指でピースをする。


 相変わらず凄まじい力だな。俺は感心する。


「すごい……強い」

「そうですよ! アヤメさん達は強いんです!」


 譫言(うわごと)のように呟くシルに、アイリスが自分のことのように自慢している。

 実力を買ってくれるのは嬉しいが、ちょっと恥ずかしいから落ち着いて欲しいな。だが、思ったよりもスムーズに戦えている。


 そう思ったら、魔獣の群れの中から何かが飛翔し、アイリス達の方へと向かっていった感じ。

 

「空を飛んでたら安全だと思った? 邪魔よ、【突き穿つ氷の槍ピアス・アイス・スピア】」


 飛行手段を持っていたシルが"翔跳蝗"と呼んでいた魔獣も、キキョウが使った魔法によって胴体が貫かれ、そのまま撃ち落とされた。


 ほっと安堵の息を吐く。


 気付けば魔獣の数も残り少ない。


「これで最後だ! "緋華"」

<カッッッ……>


 俺は最後に残った魔獣をトドメを刺す。

 魔獣はぐらりとそのまま倒れ伏した。その様子を見て、俺は剣を納めた。付近に魔獣が居なくなったのを確認したアイリスが、歩み寄ってきて問いかける。


「流石です! みなさん! 怪我はありませんか?」

「あぁ、俺は大丈夫だよ。エドアルドとフィアは?」

「問題ございません」

「あたしも!」


 俺の言葉に二人が返事をする。結構な数がいたがどうやら誰も怪我はしなかったらしい。喜ばしいことだ。


「キキョウ、さっきは抜けた奴を迎撃してくれて助かったよ」

「別に、あれくらいどうということはないわ。でも、褒められるのは嫌いじゃないわ。もっと褒めても良いのよ!」

「あぁ、流石だよ」


 俺は途中で抜けた"翔跳蝗"を対処してくれたキキョウをねぎらう。キキョウは機嫌良さげに、笑みを浮かべていた。


<ガルル……?>

「ジャママどうしました? ……そうです、そうでした、どうして魔獣が一斉に襲ってきたのでしょう? もしかして何か理由が……」


 そんな最中、ジャママが魔獣を見て唸っていた。ジャママの様子から何かを悟ったのか、そう言って魔獣の死体に側に近寄ろうとするアイリス。


 すると魔獣達の体が光り輝いた。思わず、目を細める。


「えっ!? これは……!」


 驚いた声をあげるアイリス。


 だが、それは俺も同じだった。


「魔獣が消えていく……!」


 光に紛れ、先程倒した魔獣達の姿が消えていく瞬間を目にした。


Twitterでアイリスの絵を描きました。

興味があればご覧ください→ https://mobile.twitter.com/Shinonome_duke

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