表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『彼』(仮題)  作者: ちくわ
3/5

理性と本能。

朝の通学電車内。

変わらない日常。

変わらない『私』と『彼』の距離。


実は変化は始まっている。

『私』の中だけは。


走り出す本能。

止める理性。

迷走、暴走、出口の無い迷宮。






 ――――7月



 今日から期末試験。



 眠たい。



 最近遅くまで勉強してるからなあ。



 試験だからお昼で学校終わりだし、帰ってちょっと寝よう。



 けど、おかげで結構自信ある。



 学年50位以内でお小遣いボーナス5,000円。



 20位以内ならボーナス10,000円。



 さすがに20位は無理。



 でも50位は狙えると見た。



 『彼』をチラリと見る。



 安定の『彼』。



 もう毎朝過ぎて、『彼』が背景の一部になってきた気がする。



 20位かあ。



 狙ってみようかなあ。



 20位以内取れたら『彼』に声かけてみようかなあ。



 ……。



 いやいやいや、意味がわからない。



 そもそも20位とか絶対取れないし。



 いくら頑張っても変わらないんだよ。



 また『彼』をチラリと見る。



 毎朝、顔見るんだけどなあ。



 ほんの数メートル離れてるだけなのになあ。



 遠いね。



 試験最終日。



 長く辛かった日々も今日で終わり。



 今日までの試験の手応えは悪くない。



 20位以内はやっぱり厳しいかなあ。



 ……。



 うん、無理だね。



 明日から補講期間に入るから学校は休み。



 どこか遊びに行きたいなあ。



 『彼』をチラ見。



 ここに予定空いてる女の子いてますよ。



 いかがですか。



 スマホを触ってる『彼』。



 そうですか。



 残念です。



 ていうか、彼女いるのかな。



 いそうな気もするし、いない気もする。



 つまり50%。



 さらに、私が『彼』の好みのタイプかどうか。



 これも50%。



 つまり私が『彼』に命中する確率は25%。



 あれ?



 男と女ってそんな単純だったっけ。



 もっと複雑だったような。



 そもそも、どうやって恋人同士になるの。



 やっぱり告白だよね。



 むしろ告白以外に付き合う方法ってあるの?



 私、中学の時5回告白されたけど彼氏いないよ。



 男関係は全然リア充じゃないよ。



 年齢=彼氏いない歴だよ。



 だって、話した事ない男子に告白されてもオーケーできないじゃん。



 ん。



 なるほど。



 とりあえず友達になればいいとかかな。



 よし。



 友達を目指そう。



 でわ、『彼』と友達になる方法を述べよ。



 その際、ある程度までの強引な手段を許容するものとする。



 テストか。



 テストなんだな。



 ていうか、強引な手段って何。



 『彼』をチラリと見る。



 その読んでる本貸してくれませんか?



 君、誰。



 喉乾いてませんか? ジュース買って来ましょうか?



 怖いよ。



 なんか方向性が違う気がする。



 答えがハッキリしてる学校の試験の方が簡単だわ。



 とりあえず友達か、最低でも挨拶する知り合いにならないとダメってことはわかった。


 

 『彼』の駅に到着した。



 いつもどおりホームの階段に向かう『彼』。



 それを見送る私。



 まあ、このままでもいいけどね。



 私は『彼』を毎朝見れて満足だよ。



 って明日からほぼ夏休みじゃん。



 あと何日学校あったっけ。



 数えるくらいしかないよね。



 9月まで見れないのかなあ。



 ちょっと憂鬱。



 試験終了。



 帰りの電車。



 この時間は座れるくらい空いてる。



 せっかく試験終わったんだし、友達誘って遊びに行けばよかったなあ。



 あとで中学の友達にLINEしてみよ。



 『彼』が朝降りる駅に着いた。



 ん。



 んん。



 『彼』が乗ってきた。



 しかも同じ車両。



 マジか。



 すごい偶然。



 なんという僥倖(ぎょうこう)



 『彼』も試験終わって帰るところなのかな。



 安定の読書スタイル。



 ブレないね。



 ん。



 もしかして。



 これってチャンス?



 チャンスって事でいい?



 それとも罠?



 誰の罠なの。



 『彼』の巧妙な罠。



 『彼』が私を罠にかける必要性がわからない。



 罠じゃないなら、消去法だとチャンスが残る。



 前向きだね。



 チャンスじゃない可能性は?



 実はピンチとか。



 なるほど。



 でも、特に身の危険は感じない。



 チャンスでもピンチでも無く、罠でも無いと。

 


 そこから導き出される答えは一つ。



 ただの偶然。



 あ。



 それだわ。



 この偶然を活かしてみようか。



 どうやって活かそう。



 何の本読んでるんですか?



 君に教える筋合いはありません。



 一緒に写真撮ってくれませんか?



 ナンパじゃん。



 もしくは、あなたのファンですって言ってるようなものでしょ。



 まあ、喜ぶ人もいるんだろうけど。



 なんか違うなあ。



 『彼』の許可を取ろうとするのがいけないのでは?



 どういうこと。



 明日から『彼』を長期間見れない可能性がある。



 いつでも『彼』を見れるようにする。



 『彼』を保存する。



 『彼』の許可を取らずに。



 スマホ触ってるフリして写真撮っちゃう。



 隠し撮り。



 男が女にすると犯罪だけど。



 逆はいいんじゃないの。



 ダメでしょ。



 仮に撮ったとしてどうするの。



 見て癒される。



 満足感を得る。



 プリントアウトする。



 間違った方向に走ってない?



 私、ストーカーの素質あるのかな。



 素質ってなに。



 性癖なのでは。



 いい事、思い付いた。



 隣に座っちゃう。



 全然犯罪じゃないよ。



 こんなに席空いてるのに?



 空いてる電車で、いきなり知らない人が隣に座ったらどう思う?



 すごく、怖いです。



 ちょっとだけとかならどうだろう。



 隣に座って、次の駅で降りちゃう。



 それなら5分か10分くらいだし。



 これなら犯罪でもないし、『彼』に顔覚えて貰えるのでは?



 覚えて貰えそうだね。



 気持ち悪い奴って。



 9月から朝の電車、乗る車両変えるかもね。



 それは困る。



 もう普通に声かけちゃおうかな。



 こんな偶然滅多に無いだろうし。



 難しく考えて、変な作戦を持ち込もうとするからダメなんだよ。



 私、顔もスタイルも良いんだからさ。



 男子なら声かけられて悪い気しないのでは?



 自分で言うのか。



 性格悪いね。



 何て声かけるの。



 よく会いますね。



 そうだっけ?



 彼女いるんですか?



 います。



 いるのかあ。



 知らないけど。



 私と遊んでくれませんか?



 違う意味にとられるよ。



 私と付き合って下さい。



 だから話した事ないんだってば。



 ていうか、話しかける気ないでしょ。



 よし。



 もう『彼』と友達になろうとするのやめる。



 今までどおり『彼』をコッソリ、愛で(めで)続けよう。



 それが現実的だよ。



 たしかに。



 それがお互いにとって最良の道だよ。



 お互いって。



 『彼』は関係無いでしょ。



 私が騒いでるだけ。



 気持ち切り替えたら楽になった。



 うん、これでいい。



 『彼』と同じ電車に乗って通学する。



 今までどおり何も変わらない。



 ちょっとかっこいいなって思うだけ。



 だって、これは恋じゃないんだから。



 電車が私と『彼』の最寄駅に到着する。



 先に電車を降りる『彼』。



 少し間をおいて降りる私。



 一定の間隔を空けて『彼』の後ろを歩く。



 改札を出る『彼』。



 数秒後、私も同じ改札を出る。



 家はどの辺なんだろう。



 ……。



 ちょっとだけ、ついて行ってみようかな。



 『彼』の背中に引き寄せられる。



 やめなさい。



女子高生ってこんなクダラナイこと考えてるの?

っていうツッコミは無しで。

※個人の感想です。 御利用は計画的に。



理性と本能の不毛な議論。

出口は見えない。


次話『水着』 でも場面は電車内。

え? なんで?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ