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失恋からの求愛

 好きという気持ちは厄介だ。

 そう、アニス・フィールドは思う。

 私はこんなにひどい裏切りをされたのに、まだあの人が好きなのだ。


 公爵令嬢として生まれた私には婚約者である王子がいた。

 この国の第一王子だ。

 でも彼は、私を選ばなかった。

 悲しい気持ちになって私は自分のスカートを強く握る。


「どうしてこんなことになったのだろう。私は、“運命”を知っていた」


 そう小さく呟く。

 私はこの運命を知っていた。

 異世界の物語、そう、乙女ゲームなるものの物語の中で……私は悪役になって、婚約破棄を突きつけられてしまう。


 その運命を変えたくて、私は全てに手を打った。

 でも、自分の力で彼が手に入ると私は自分の力を過信していたのかな?

 結果は、今に至る。


 でも一つだけ、それらをすべて覆す方法がある。

 乙女ゲームの記憶と同じ私が誰にも話していない秘密の力。

 それを使えばいいのだ。


 この世界にはまだ魔法が根付いているけれど、私の持っているこれは祝福と言われる特別な力。

 だから私はこの力を秘密にして……でも、私は見捨てることができずに力を使ってしまった。

 普通の魔法に偽装して、だけれど。でも、


「呪いを解いてあげたから“ありがとう”ではないのね。誰も知らない普通ではない呪いだから……知っている人間でないと解けないから、疑われた」


 力を使った私に待っていたのはそれだった。

 そう口に出して私は違うと気づく。

 違うのだ。


 そう、違う。

 私が大好きだった王子は、私と婚約破棄をしたくて、そう言いだしたのだ。


『君は僕を好きでないのだからいいだろう』


 そう私に告げて去っていった王子。

 私には理解できないその言葉が頭の中で未だに回る。

 力を使えばいつだってこの出来事は変えられる。


 でも私はそんなものに頼らず、彼の心が欲しかった。

 贅沢であったのだろうか? もっと私が手段を択ばなければ……。

 そう思っているとそこで部屋の扉が開かれた。


「やあ、アニス、婚約破棄をされたんだって? 私と婚約してくれないか?」


 そこで、いやいや振り返ると傷心の私の前に幼馴染のオズワルドが現れたのだった。








 現れたオズワルドはやけに機嫌がよさそうで、殴り飛ばしたい気持ちに私はかられた。

 それを必死で我慢しながら、


「オズワルド、私は婚約破棄された王子がまだ好きで、誤解されたのもつらくて、一人でいたの」

「うん、その話は知っている。皆もそう噂しているしね。本当の悪役でないから、“悪役令嬢”と呼ばれている」


 そんな名前で呼ばれているとは知らなかった。

 でも今はどうでもいい。

 オズワルド、私は昔から彼が苦手だ。


 昔初めて出会った時から、顔を見合わせた瞬間、


「ブス」

「それは女の子に言う言葉じゃないわ! 絶対に許さない!」


 といって追いかけました。

 それ以降もそんな調子の相手だったのだが……。

 そこでオズワルドが私に、


「それでいかがですか?」

「何が?」

「私と婚約していただけませんか?」


 その笑顔と声にその時私は……怒りを覚えた。

 八つ当たりをしたい気持ちになってしまう。

 だからすぐに頷いてやるものかと思った私は、


「まずは、普通にデートから誘うでしょう?」

「なるほど、デートをしていただけるという事ですね。では、明日の朝八時ごろお迎えに上がります」


 そう機嫌がよさそうにオズワルドは部屋から出て行った。

 何かがおかしい。

 何がおかしいのだろうか。


 私は必死に考えてそこで気づいた。

 私、オズワルドとデートをすることになってる。

 そう、予想もつかない出来事が私に降りかかったのだった。


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