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私、バラします


アルとロムは朝出勤して、まず驚いた。


「アルベリア・S・ケルベルトを出しなさい」

「んな奴いねぇっつってんだろボケ!帰れ帰れ‼︎」


何故なら店長が沢山の騎士相手に本気でカチキレていたからだ。ゆうに十人は居るだろうに蒜まずにキレている。


「嘘を言うな。それならこの店に来たアルとやらを出せ」

「うちの娘を何でお前らみたいなムサイ男共に引き渡さにゃならんのだ?何のメリットが有るんだ?ああ?」

「お前にメリットが無くても我々にあるのだ…平民が楯つくな、鬱陶し…いぃ⁉︎」


一人の騎士が突然膝を折る。それもその筈、その鎧は腹の部分が拳状に凹んでいたのだ。六発も。


流石にアル達も遠目に見ていて震えた。あの人、色々やばい…と。


「ごちゃごちゃうるせんだよ!こっちは仕込みに仕入れと忙しいんだよカス!帰れっつったら帰れやボケ共が‼︎」

「くそっコイツを取り押さえろ!」

「邪魔っ‼︎」

「うおおおおべららっ⁉︎」


店長の腕が消えたと思ったらその横に居た騎士の顔が鎧ごとベコベコのボコボコになる。


裏拳を高速で放っていたのだ。残りの騎士達も何とか店長を抑えようとするものの全員次々と沈められていく。


二分後、そこはまさに死屍累々と化していた。店長は既に面倒事が終わったとばかりに水晶板を取り出し、憲兵に連絡する。


余りにも早い手際にポカンとしていたが、この事で、アルとロムも一つ決意した。


二人は物陰から出ると店長の前に行き、頭を下げる。


突然現れたと思ったらいきなり頭を下げられ目を白黒する店長。


「ど、どうしたお前ら⁉︎」

「今までお世話になりました!」

「ありがとうございました!」


アル達の行動の意味が分からずクエスチョンマークを浮かべる店長。


「このままだと店長に迷惑をかけると思います…」

「俺は兎も角、彼奴らの狙いはアルです…なので俺はここに残れますけど、アルは残れません…何より俺はまだ力がありません」

「だから私は雲隠れします」

「俺はアルを守れる位強くなる為にここに残ります」

「待て待て待て!話の意味が分からんぞ⁉︎」


マシンガントークに一旦打ち止めを入れ、聞き直す。


「は?という事はアルは出て行ってロムはここに…その…弟子として残るって事か⁉︎」

「「はい」」

「いや、はいじゃねぇよ⁉︎」


滑らかなノリツッコミを入れる。が、アルとロムは首を傾げるだけである。


アルは可愛らしいが、百八十センチのロムがやると何と無く微妙な雰囲気である。


「大体、アル。お前は女の子だろ!こんなにか弱そうな少女を見捨てるなんて出来ないんだよ!」

「店長…アルはか弱く無いですよ?」

「何言ってんだロム!こんなに可愛らしい女の子がか弱くなかったら世界がどうかするぞ⁉︎」


ロムに食ってかかる様に怒鳴る店長。が、それを冷静に対処する。


「実は俺もつい最近知ったんですけど、アルは人には無い知識を色々持ち合わせているみたいで…しかも魔力はハッキリ言って魔王レベルじゃ無いんですかね?」

「…はい?」

「更にはその知識の所為で殺傷能力の無い魔法すら殲滅魔法を上回るという始末で…」

「……な、何の話だ?」

「え?アルの事ですよ」


目を点にする店長。それもそうだ。目の前の十四、五歳の少女が自分をも上回る戦力の保有者と言われて信じられるはずがない。


「ち、ちょっとこっち来い」


アルの手を引いて街の格技場に連れて行く。そしてその格技場の真ん中に立ち会う。


「本当に…ほんとーに強いんだよな?」

「少なくともアルに勝とうと思ったら店長二万人は必要ですね」

「ほ、ほぉ?」


流石に青筋を浮かべ直す店長。ここまで馬鹿にされたら後には引けない。


ロムとしては事実を述べただけなのだが…


「アル!行くぞ‼︎」

「あ、はい。よろしくお願いします」


武器であるバスターソードを構え、ゴォッ!と気合をいれる店長とペコリと頭を下げてお辞儀するアル。


瞬間、バスターソードは縦に振り下ろされる。真っ二つになるアル。


「あれ?おいおい…あたしが二万人は必要じゃなかったのかよ?」


が、アルの死体は霧になる。


「じゃあ行きますね」


背後から声が聞こえる。慌てて振り向くと魔力で髪をふわりと浮かせたアルがいる。宙に浮き、目は青く燃え盛る炎の様に光り、線を残す。


「な、何だよそれ…」

「じゃあ初期火炎魔法…プチファイアの更に下のミニファイア」


ミニファイア…初期火炎魔法の中でも最弱の魔法である。その威力はまさにロウソク。ぶっちゃけくしゃみで消せるレベルである。


筈なのだ。店長はその目の前の余りにあり得ない光景に顔を青褪めさせた。


確かにロウソクサイズだ。ただし、まるで球のように丸い。その上そのミニファイアの中からは信じられない魔力の圧を感じるし、数は八つ。


「じゃ、撃ちますよ」

「う、撃つ?」


アルは腰から自家製の拳銃…と言ってもたかだか喫茶店のマスターに残ってる記憶はYou○ubeのコイルガンを元に製作している。


が、ここは異世界。


材質は彼女のチートスキルを行使して手に入れたアダムニウスというチタンの十分の一の重量、モース硬度の最硬度のダイヤの七百倍、且つどの金属よりもしなやかでタフな超希少金属(ハイパーレアメタル)で作成されている。


そこに作ったミニファイアを次々と入れる。


何か嫌な汗が背中を伝う。


「死なないでくださいね」


アルの朗らかな笑顔とは裏腹にその銃から放たれたのはまるで強烈なレーザー。


「っ‼︎」


慌てて側転する。数瞬前まで店長のいた床の石材は蒸発(・・)していた。


「どんどん行きますよー」

「はぁ⁉︎あと何発あるんだい⁉︎」


店長の予想は残り七発。だがアルの口から出てきた回答は店長の戦意をへし折るには十分過ぎるものだった。


「あとは…魔力が尽きるまでだから…多分無限に撃てるかな?ミニファイアだし」

「………っ⁉︎」

「少なくとも後二年栄養補給さえ出来れば撃ち続けても魔力は全体の一パーセントくらいしか消費しませんね」


その言葉を聞き、店長は完全に勝てないと思った。何せ初期魔法でこの威力。しかも弾数制限は無い。勝てる筈が無い…と心が折れた。


「わかった…あたしの負けだよ…こんなに強かったんだな、アル」

「えへへ…」


撫でられてついつい頬を緩める。


読者の皆さんは知ってると思うが、アルは前世が二十二歳、今世は十五歳。足すと三十七歳。三十路である。歳にも無く…とはこの事だろう。


「で、結局アルは出て行くんだよな?」

「お世話になりました!けど、ちゃんと偶には遊びに行きますし手伝いにも行きますよ!」

「俺はまだまだ強くなりたいからご指導お願いします!師匠!」


そんなこんなでアルは騎士達が再度来る前に街を離れるのであった。

おまけ☆作者とアルの会話

作者(以下、藍)「アル、強かったんだね」

アル(以下、ア)「まさか前世で見ていたYou○ubeがこんな所で役立つとは思いませんでしたよ」

藍「一応聞くけど…喫茶店のマスターなんだよね?」

ア「そうですよ?」

藍「職業軍人や、それ系統の人では?」

ア「日本でそんな人なんてそうそういないでしょ?第一私、大学出た後そのまま引き継いで経営してた感じだし」

藍「大学?どんな?」

ア「大学というより専門学校だね。調理専門校だよ」

藍「なら普通に専門がっk…」

ア「おっと、私のマグナムが火を噴いちゃった♪」

藍「おいおいおい!掠ったぞ⁉︎見ろ!天辺が禿げちゃったじゃないか!」

ア「別に元々丸刈りだったからいいじゃん」

藍「待て…何でまだ構えている?」

ア「取り敢えず死んでリセットさせようかなと…」

藍「い…」

ア「い?」

藍「いやぁぁぁぁぁっ‼︎」

ア「…えい」

藍「ギャーーーーッス⁉︎」

ア「又つまらぬ物を撃ってしまった…」

それではまた次回。

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