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私、バイトなうなんですけど何故か会いたく無いやつと遭遇しました

2日連続!多分今日の投稿の後暫く間が空きます!

「アルちゃーん!エールお代わり!」

「はい喜んでー!」


レストラン…というよりも居酒屋だが…にアルの元気な声が響き渡る。


キッチンの中ではロムが四苦八苦している。初めて使う器具ばかりで全く分からないのだ。


それに対してアルはキッチンはこなせる上にこの店のシステムも既に店長と話し合って効率化に成功している。しかもキッチンをこなせるだけならまだしもホールスタッフまで完璧にこなす。


「アルは本当にお嬢様だったのか?」


とロムは皿を洗いながら独り言を呟いた。


二人はこの店で働きだしてかれこれ一週間経っている。ロムは疑問に思っているが、そもそもアルは前世は飲食業で働いていたのだ。これ位は朝飯前である。


「アルちゃん、何か新メニュー思い付いた?」

「店長さん、取り敢えずこんな感じですか?」


キッチンから出てきた店長と呼ばれたおばさんにアルは屈託の無い笑みを浮かべてメモ用紙を渡しながら答えた。その笑顔を見て何人もの男性客が顔を真っ赤にしてる事も知らずに。


「何々…パンケーキのバリエーションが四種類と…スポンジケーキ?それとハンバーガー…良いわね!」


店長は興奮した様にメモ用紙を握りしめ厨房へアルを引きずりながら戻っていった。


「アル…生きて帰ってこいよ」


一人ロムの声がこぼれたのであった。


さて、その頃のアルはと言うと…


「違いますよ店長!パンケーキの生地はもっとさっくり混ぜるだけですよ!」

「こ、こうかい?」

「あーもー!何でそんなに筋肉バキバキなんですか!ボールが変形してるじゃないですか!」


パンケーキの試作に苦戦していた。何せここの店長は元々凄腕の冒険者だったのだ。


このロズヴェルク連邦皇国のギルドは二つあり、一つは以前紹介した商業ギルド。もう一つは冒険者ギルドだ。


たとえ中世の様な世界でも、獣の肉や珍しい薬草はそんじょそこらの一般人には入手は難しい。


なのでロズヴェルクは冒険者ギルドを設立、そこのランクによって採取してくるものを決めた。それによって効率よく且つ、有能な兵士になれる人材を発掘するということに成功したのだ。勿論商業ギルドとも繋がりがあるので流通に関しても問題は無い。


で、この店長は元々はランクトリプルSの冒険者だったのだ。トリプルSは最高ランクであり、その力はワイバーン程度なら素手で屠れるレベルである。


因みにこの店長、力加減は滅法苦手である。


「貸してください店長!ほら!こうするんですよ!」

「ほぉー…うまいもんだな」

「できない店長がおかしいんですが⁉︎」


そんな感じで一月経ったある日、アルは遂にイヤーな事と直面した。


カランカラン!とベルの音が鳴る。


「いらっしゃーっせ!」

「ここに…見目麗しい貴族の娘の様な小娘が居ると聞いたのだが?」


そう、アルの父親ことノルディック・ケルベルトがやってきたのだ。そのでっぷりと下腹を揺らし、パンパンの服をまとって。


慌ててアルとロムはキッチンへと避難する。それを見た店長は綺麗な柳眉を顰めて聞いてきた。


「ど、どうしたんだい?」

「あれ、私の元父上()。多分私の捜索に何らかの理由で来たんだと思う…心当たりは全く無いけど」

「店長、アレはアルの敵です。出来れば六千分の五千九百九十九殺しで始末してください」


珍しく毒を吐くロムを見て店長もこのおっさん…ノルディックがアルにとって害であると判断した。


「よ、よぉし…と、取り敢えず穏便に帰ってもらうか…?」


店長は軽くこめかみに青筋を立てながらノルディックにオーダーを伺いに行く。


「何のことでしょうか?」


その一言で呆れる様にノルディックは鼻で笑いながら言い放つ様に命じた。


「分からん奴だな…私にその娘と合わせろ」

「冷やかしなら失せな!」

「な⁉︎」


しかし、その発言の瞬間ブチリと何か切れた音がすると既に店長はカチ切れていた。


「ったくよ?あ?ここは売春宿じゃねぇんだぞ?理解してもの言ってんのかおっさん?」

「貴様…!私を誰だと」

「知らねえよ、耄碌ジジイが」


いつもの様なガサツな態度に怒りが加わり、かなり男勝りな話し方になっている。キッチンからこっそり覗いていたアルとロムは少しビビっていた。


「貴様、女の分際で私に楯突こうと言うのか!」

「あたしが女の分際でっていうならテメェは狸の分際で…だなぁ?」


プルプルと震えるノルディック。店長は容赦なく言葉を続ける。


「第一そんな娘が居たとして何だ?お前に関係あんのか?あ?」

「私の娘の可能性があるのだ!アレは私の道具だ!私の金の為に存在してるんだ…ぞ⁉︎」


ノルディックの言葉は少し詰まった。理由は簡単だ。そのブヨブヨの首に店長の指が食い込み、持ち上げているからだ。


「帰りな、次来たら…消すぞ?」


そう言って力一杯扉の外へと放り投げた。そしてスマートフォン型の水晶版の魔道具を取り出すと憲兵にあっさり通報した。


ポカンと眺める二人。


「て、店長?」

「あ?ああ悪い悪い、少し怖がらせちまったな」


気まずそうに頬を掻く店長。それを見て抱きつくアル。


「店長…カッコいい!」

「弟子入りさせてください!」


二人からの称賛プラス謎の入門を受け取り少し恥ずかしげに『そ、そうか?』と答える。


外からは


「おい貴様ら!私を誰だと…!」

「隊長、この豚どうします?」

「門の外に焼豚みたいに縛ってから捨てとけよ」

「「「ウーッス」」」

「待て…止めろ…私はピギャアァァァ‼︎‼︎」


叫び声がするが店内の客と店長達はスルーしてこの日は終わった。


が、ノルディックの所為でアルデヒド皇国には場所がバレ、捜索隊が来るのはこの後だった。

おまけ☆作者と店長の会話

作者(以下、藍)「店長さん凄いですね!」

店長(以下、店)「まぁな!カカカカカッ!」

藍・「しかし、おばさんと表記した…ヒィッ⁉︎包丁が⁉︎」

店・「あたしゃまだピチピチの52だ!おばさんと言うな!」

藍・「す、すいませんでしたぁ‼︎(でもおばさんだよな?)」

店・「作者?」

藍・「はい?」

店・「次変なこと考えたら刻んで出汁にするぞ?」

藍・「ウヒィィ‼︎」

店・「大体まだ外見的にゃイけるだろ?」

藍・「確かに出るとこ出てますし腰回りとかシュッとしてますし…顔も結構若作りですよね?パッと見三…げふん!二十代に見えますし」

店・「今のは言い直せたから聞かんかったことにしてやろう」

藍・「所でロム君が貴女に弟子入りしたがってますけど…?」

店・「ばっ⁉︎取らねぇよ!」

藍・「でも…あんな引き締まった青年が貴女と二人きりで生活してくれるんですよ?どうです?」

店・「…」

藍・「あっ!ちょっと逃げないで!…って言うか足はやっ⁉︎」

それではまた次回♪

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