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私、国を出ます

三話目です!ビバ・サンワ!

「ねぇ、此処は?」

「私の下宿ですが…?」

「ふぅん」


アルベリアは現在御者の下宿に居た。簡素なベットと机、クローゼットのみ置かれた質素な部屋である。


あの後、御者はアルベリアの泊まる場所を探し、結局自分の下宿まで連れてきたのだ。


御者は目の前にいる美少女にドギマギして動きがぎこちない。唐突にアルベリアは御者の前にちょこんと座る。そして今後の事を話し始めた。


「私は喫茶店をやりたい」

「は、はぁ…………………はぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


突然のその言葉に声を上げる。うるさいとばかりに耳に指を突っ込んでアピールするアルベリア。御構い無しに御者はアルベリアの肩を掴んで反論する。


「お嬢様!貴女の様な箱入り娘がそんな事急に出来る筈がありません‼︎もう少し現実を‼︎」

「出来るわ」

「しかし!」

「それと私はもうケルベルト家の者じゃないわ…だからアルベリア…は長いからアルと呼びなさい」

「え…」


更に追加される無茶なオーダーに顔を引き攣らせる。しかし目の前の少女は一切引く気配がない。


諦めて御者はその案でまずは行きましょう…と若干投げやりに答えた。


「しかしアル様…「様と敬語も無し」流石にそれ「様と敬語止めないと泣くよ?」はい…じゃあアル、これで良いか?」

「うん」


アルベリア改めアルはその答えに満足そうに頷くと一つ思い出した。


「そう言えば貴方の名前は?」

「私はロムです…じゃなかった、ロムだ」


危うく敬語になりそうになり慌てて正すロム。それを見てクスリと笑うアル。


「ねぇロム」

「うん?」

「刃物ある?」

「あるけど…何するの?」

「良いから良いから」


意味も分からず棚から仕事用のナイフを取り出す。アルはそれを受け取ると外に出て行った。暫くするとミディアムの髪形にカットされたアルが帰ってきた。


「アル⁉︎何をしてんの⁉︎」

「髪切った」

「何で⁉︎どうして⁉︎」

「フリフリして邪魔。後洗うシャンプーとかも無いのにあんな長いのぶら下げても浪費になる。ついでに重かった」


さっきまで腰ほどの長さのあった綺麗な黒髪は今では短く刈り込まれている。その少し余った部分をドレスの切れ端で後ろで小さくポニーテールの様にまとめていた。


「それでアル」

「はい?」

「資金は?」


そう、ロムとしては其処が肝心だった。幾ら計画ができていても根本的に金銭面がアウトなら実現不可なのだ。


「はい、資金」

「あるのか…………………何であるの⁉︎」

「小遣い+さっき手荷物で不要なもの売ってきた」


アルは断罪シーンの前に予め自分のアクセサリーなどを別の鞄に詰め、馬車に隠しておいたのだ。それらを皇都の雑貨屋で売りさばいたのだ。


最早そのサバイバル能力の高さに色々と諦めたロムは不意に煙草を取り出すと吸い出した。


「見た事の無い銘柄ね」

「自作だからな」

「へぇ…フルーティーな香りね…良い香り」


その後、ロムは一つ恐ろしい事に気付いた。即ち、風呂だ。流石にこの辺りの混浴施設に連れて行くわけにも行かない…どうしたものかと頭を捻っているとアルは何処からか買った安物の服を持ち、すでに準備万端だった。


「この近くには混浴施設しか無いぞ」

「知ってる」

「襲われるかもしれないぞ?」

「ロムが守って」


相変わらず自信満々に無表情に答えるアルに苦笑いしながらロムは腰を上げた。


「じゃあ行くか」

「うん」


そして混浴施設の湯船でロムは後悔をした。ドレスの上からじゃよく分からなかったが、アルはスタイル抜群だったのだ。スラリとした腰回りと脚。適度に膨らんだ安産型の臀部と大きめな胸。


何処を見れば良いか分からず顔を真っ赤にして目を逸らす。


「ねぇロム」

「な、何?」

「今夜出よっか…国」

「…そうだな」


はと元々の目的を思い出し冷静に答える。そして風呂上がりのアルの服装で更にロムは精神的に追い込まれた。


「どうしたロム?」

「な、何でも無い…」


下着は着けているものの男物の薄手のシャツと黒のパンツに安物の革靴。しかし頭の後ろで小さくポニーテールにしていたその部分を上にあげ、露わになったうなじ。あちこち無駄にハッキリさせている本来は色っぽく無いであろうが何故か色っぽい服装。


頭の中は理性と本能の大合戦である。


「じゃあこの服も処分していこう」

「お、おお」


何とか理性で押さえ込みながらロムは頷く。そしてその夜、二人はこっそりと国境を抜けた。アッサリと抜け出した後二人は隣の国…ロズヴェルク連邦皇国を目指した。


その時、既に城はパニックになっているとは露知らずに。

眠し…ぐふぅ(_ _).。o○

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