編入します。 其の四
翌日。
私と紅蓮は今、理事長室の扉の前にいる。
ちなみに今は朝の7時すぎだ。
私達が理事長室に来た理由は昨日言ったとうり、巫女姫について話をするためだ。
コンコン、と扉を叩くと中から昴さんの入室許可が返ってきた。
「おはよう、昴さん」
「おはよう、葵。ずいぶん早いね。」
昴さんの言葉に苦笑した。
「話が長くなるだろうと思ったんだよ」
そうか、と返事しながら昴さんは盗聴防止のため、結界の印を結んだ。
そのことに礼をいう。
「いいよ、巫女姫についての話だったんだろう?」
さすが昴さんだ。
私の考えはお見通しだったらしい。
昨日、私達が来る前にゲームでいう『巫女姫発覚イベント』が行われていた。
私は前世の記憶で知っている情報があるが昴さんと私の親はヒロイン兼巫女姫である姫川 さくらについて知っている情報は少ない。
しかし、それ以前に私という転生者がいるということは、私以外にも前世の記憶がある人がいるかもしれない。そしてこの世界が乙女ゲームの世界と気づいた者がゲーム開始前にストーリーをめっちゃくちゃにする輩がいるかもしれないので、私達神崎一家プラス藍山家(母の実家)の信頼出来る人と共に情報収集という名の監視をしてきた。
今ではゲーム終盤で証される巫女姫の秘密はほぼ知っている状態だ。
そして、私達は昴さんに真実をどこまで伝えるのかは本人次第にした。
つまり、私は姫川 さくらがどこまで知っているのか知らないのだ。
「そうだよ、姫川 さくらにどこまで話したの?」
「あぁ、そのことか。姫川さんには巫女姫の貴重さと巫女姫がするべき仕事や役割を教えといたよ。あ、ちなみに生徒会の皆にはそれに加えて巫女姫の危険度について言っておいたよ。あと、姫川さんの護衛を頼んでおいたよ。」
ふーん・・・。ゲームの内容とあまり変わらないな。
ちなみに巫女姫は百年に一度といわれる程の霊力があり、巫女とは神の声を聞いたり、人間にとりつかれた悪霊や怨霊を祓ったりする仕事がある。また、舞を舞って雨乞い(あまご)をしたりすることも仕事のうちに入る。
「護衛、ねぇ・・・。女子がうるさくなると思うけど?いいの?」
「やっぱり、葵もそう思うかい?何か対処したほうがいいよね・・・。」
「生徒会にいれる・・・とかは?それか生徒会補助っていう役職つくるとか・・・。」
「なるほど・・・。生徒会補助か・・・。今日の放課後に、生徒会に伝えておくね。」
あらら。
なんかゲームの内容少し飛ばしちゃった。
この生徒会補助っていう役職、ずいぶんとあとになってから女子にリンチされているのを生徒会がしり、対策といてつくる役職なんだが・・・。ま、いっか。
それでもなんだかリンチイベントがおきそうな気がするし。
「あ、今日姉さんが放課後に学園に来るって。久しぶりに顔を見たいって。」
ばくだんをおとされた。
昴さんが言う姉さんとはもちろん、我が母上である。
そして、わたしにヨーロッパへと修業ついでに名門大学にぶちこむという荒業をいた張本人である。
・・・・・・。
「帰っていいですか?」
「かえったら僕が殺られるからやめて。」
真顔で言われちゃったよ。
「紅蓮」
「・・・あぁ、用意しておく。」
少し空気になりかけていた紅蓮は私の一声で何を言いたいのかわかってくれたようで。優秀だな、紅蓮。
「・・・じゃあ、取り敢えず葵の担任を呼ぶね。と、いっても資料で見たと思うけど。」
資料・・・。ということは生徒会顧問のあいつか・・・。
たしか、名前は識色 翠(しきいろ みどり)。
カラスの妖怪だったはずだ。
ホストのような見た目とフリをしているが、誰よりも生徒のことを見ているしっかりものの頼れる先生、という王道設定だ。
もちろんこいつも攻略対象のひとりであり、私が一番まともな先生だった妖だ。
「失礼します。」
「どうぞ。」
思い出しているうちにカラス先生が来たようだ。ちなみにカラス先生は私が命名した。
「理事長、こいつが編入生ですか・・・?」
「そうだよ。神崎 葵さんだ。フードとパーカーは見逃してあげて。一応、僕が許可したから。」
「はぁ・・・。わかりました。えーっと、神崎か。案内する。ついてこい。」
私は頷き、昴さんに礼をしてから理事長室を出た。
新しいクラスメイトかぁ・・・。面倒なことにならなければいいけど。
そう思いながら、教室へ向かった。
なんというか・・・。文才がほしいです。
再来週から中間考査なので二週間ほど投稿しないかもです。
まぁ、勉強がいやになって現実逃避として投稿するかもしれませんが(笑)