編入します。 其の三
「はぁ・・・。つっかれた~」
「お疲れ」
私は目の前にあるベッドに埋もれた。
紅蓮はいつもよりも小さいサイズの狼の姿になっている。
私達はあれから地図を頼りに一般寮へと行き、なんの問題もなく帰ることができた。
ただ、めんどくさいことに私の寮室は他の人と違い少し・・・いや、かなり良い待遇をされている。
私が昴さんの姪というのもあるが、なんでも、私が受けた編入テストは超難問で、高得点を採ったうえ、現在の学年トップに偏差値が僅差で勝ったらしいので私が主席用の寮室を使うことになったのだ。
満点を採ったらテンプレのごとく生徒会のやつらに目をつけられると思ってわざと外したのにな・・・。あんまり意味がないような・・・。
ま、まぁ、特典として次の定期テストまで授業の免除と一人部屋らしいから、OKという事で。
「葵」
紅蓮に呼ばれたのでそちらに目をくばませ、視線だけで返事をする。
「・・・久しぶりに、やらないか?修業」
そう言う紅蓮に、顔がにやけるのを自覚した。
私も紅蓮も、戦闘狂だ。
紅蓮は別として、私が戦闘狂なのは血筋らしい。親はもちろん、あの昴さんまで妖の前に出ると人が変わったかのように本性を表す。
私の返事は勿論。
「いいよ。山のほうに行こうか」
この学園、裏は山になっているため、いつでも修業をできるのだ。
まぁ、とはいってもいくら神獣の一種だからって霊体のため、陰陽術は使わず、体力重視の体術の稽古のようなものだか。
だか、稽古だからといって侮ることなかれ、『山のほう』とは山全体がフィールドだということをあらわしているのだ。
「そういうと思った」
紅蓮はそういい、人型になった。
紅蓮の人型は一言でいうと、イケメンだ。
180センチメートルは軽く越しているだろう長身に暗闇でも目立つ神のひとりだと表す金色の瞳。スッと伸びたほりの深い鼻筋に金色のメッシュがはいっている黒い髪は艶々としている。
・・・私の周りはなぜこんなにも美形が多いんだ。まぁ、私もゲームの登場人物の一人だから顔はいいほうだが。自慢じゃないよ、ほんとだよ。
紅蓮が人型になったのを見た私はゴロゴロしていたベッドから起き上がり、キャリーバックからフードつきのジャージを取り出した。
このジャージ、私が紅蓮と修業(稽古?)をしても大丈夫なように
特別に発注してもらったやつだ。
いくら伸ばしても壊れにくいし、たくさんの汗をかいてもしっかり吸収してくれるため、結構重宝している。臭くなりやすいのは玉に傷だが。
「行こうか」
「あぁ」
フードを深く被って、紅蓮と共に室内を出た。
* * *
「ここら辺でいっか」
「そうだな」
「どっちかが一発喰らうか、降参を認めたらおわりでいい?」
「あぁ、いいぞ」
山のなかでちょうどいいスペースを見つけた私達は向かい合わせになってお互いを見合う。
それぞれ構えると、周りに緊張か広がる。
ダッ
私は先に動いて紅蓮の後ろへとまわり、足元を蹴ろうとするーーー
が、紅蓮はそれを察知し、ジャンプしながら身を引く。
私はそれを追撃せず、一歩うしろにさがる。すると、紅蓮が距離を詰めて攻撃してきたがそれを持ち前の反射神経で捌く。
たまに隙を見てこちらからも攻撃するが、捌かれてしまう。
流石は紅蓮だ。なかなか攻撃が当たらないどころか攻撃をさせてくれない。
このままでは私の体力が持たない。
そう判断した私はいったん距離をおき、身を翻して山の方へと駆けだした。
息を整えながらできるだけ遠くへ行けるよう、足を動かした。
紅蓮の気配がなくっなたのは気づいていたが紅蓮がわざと消した罠かもしれないので、足音を消しながら走り続ける。
走る途中で登りやすそうであまり下からは見えにくいだろう木があったのでそこに登った。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
周囲に気をつけながら少し休憩する。
ガサガサッ
「!」
足音が聞こえたので下を見るとそこには紅蓮がいた。
は、速い・・・。もうここまで来たのかよ・・・。
私は息を殺しながら気配をけし、視線が強くならないように視界に『入れる』。
タイミングを計り、音を立てずに紅蓮に向かって足を突き出しながら飛び降りた。
「っ・・・!」
イケる、と思ったがギリギリで紅蓮に振り向かれて両腕をクロスしきていたが私はそれを利用して両腕を踏み台にして地面に降りた。
そして素早くパンチを繰り出すも、紅蓮に手を掴まれる。
「糞っ!」
私は悪態をつきながら身を引こうとするも掴まれたので離れる離れる事ができない。
なんとか攻撃を当てようとするも、逆に丸め込まれてしまう。
らちが明かないと判断した私はしぶしぶ口を開いた。
「チッ・・・降参、だ」
そういうと、体の力を抜いた。
「お疲れ」
紅蓮は清々しいくらいの笑顔でいってきた。なにこいつ、マジムカつく。余裕そうなところが特にムカつくっ!!
「久しぶりにやったけど、腕はおちてなかったな。それどころか気配の消しかたがうまくいっていたし、視線も全く感じなかった」
「そう?腕が落ちなくてよかったわ」
向こうでも筋トレと気配を消すことは欠かさず行ってたからかな。まぁ、それでも紅蓮には負けたけどね!
私がそう溢すと紅蓮は冷静に当たり前だ、と言っていた。
この後、寮に戻りジャージを洗濯してから夕飯(自炊)をし、風呂にはいってから寝た。
・・・帰国1日目からこんなのって、どうよ。
容姿と戦闘(?)のシーンの描写って難しいですね・・・。
がんばります