あのバイロイトが急変した
ミュンヘンを出て北へ上る。新聞に載っけてもら
ったあのバイロイト。ワーグナーの音楽祭で有名な町。
地下道と駅前の橋の所と二手に別れて2時間だけ
出すことにした。オサムは地下道にマメタンは橋の所に、
比較的ゆとりがあって雰囲気がよかったからだが、
オサムは2時間後十分売れて戻ってびっくり、
マメタンの姿が見えない。あれ?どうした?
荷物も何もない。細かく痕跡を探すと、スチール製の
橋げたの裏に小さなメモがテープで止めてあった。
よくもまあこんなことができたものだ。赤鉛筆で、
『こないで、ポリス』
と書いてある。やばいな、安全な所だったのに。
どういうわけかマメタンはつかまってしまった。
警察署はすぐ近くにあった。こんな近くに?
これはうかつだった。どうしたものかと見上げて
いたらマメタンが出てきた。あっけらかんとしている。
「やられちゃった」
カバンを持っていないところを見ると没収か?
手に紙切れを持っている。
「たいへんだったな」
オサムが紙切れを受け取りながら言うと、マメタンは
「ううん、そうでもなかった。結構楽しかったよ。
身振り手振りで」
と強がりを言った。
紙切れをよく見ると、どうも3ヶ月以内に国外退去。
以後6ヶ月以内は入国拒否とのことらしい。同じ文章が
パスポートにもでんとスタンプしてあった。
商品は没収だ。ミュンヘンゲリラの後だから警察も
相当ぴりぴりとしていたんだろうな。オサムだけでも
つかまらなくてよかった。クリスマスは十分間に合う。
あと2ヶ月だ。そろそろ求人広告を出さなくちゃ。
決戦直前の2人には、こんなことくらいではちょっとも
へこたれない。クリスマス開けに大金を持ってドイツを
抜け出して、どこかの国でパスポートを再発行してもら
おう。ということでフランクフルトへ戻り、大募集の
原稿を考えながらさらにデュッセルドルフへと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーつづく