なんてこった危険が一杯
新年明けましておめでとうございます。本年も黙々と書き続けて参りますのでよろしくお願いいたします。
夜10時オサムは店が終わってアルトに駆けつけた。
やはりものすごい人の波だ。やっと十字路付近の人
ごみの中で彼らの姿を発見した。
近づいていくと真っ先に黒髪の彼女がオサムを見つ
けた。とてもうれしそうな顔をして走ってくる。
石畳の上だ。人をかき分け走ってくる。
オサムは髪も少し長くなりだして、あのトレスコ
にジーンズのパンタロン、けつまずきそうだ。
彼女は止まらない。そのまま思いっきり、飛び上がって
オサムに抱きつき、さらにへビィなキスをした。周りに
人垣ができて大喝采。アルトは不思議な夢の世界だ。
何をやっても映画の中のようだ。切り絵師が出ている。
神技だ。どんな絵柄もはさみ一本で切っていく。
とんぼ返りの少年がいる。洗濯板とブリキのたらい、
板に一本のワイヤーを張っただけのガラクタバンド。
そしてあのモーレツな路上販売と一瞬のポリツァイ
パフォーマンス。あのワーゲンがすごく様になっている。
ところがこの日は少し様子が違った。すぐにポリスカー
が戻ってきたのだ。ひと騒乱の末何人かが連行された。
縁日はすばやかったが石松はかばんにしまいきれずに
ケッテごと押収された。本人は無事だったが・・・・。
「また作ればええやんか」
石松はいたって元気だった。さすが中東歴戦の勇者だ。
しかし危険は危険だ。もし捕まったらと思うとぞっとする。
オサム達はディスコで踊りビールを飲んでぺちゃくちゃ
おしゃべりしてたらもう朝が来た、徹夜だ。黒髪の彼女を
なだめて皆と一緒にユースへ帰す。さあ春巻きとご飯たきだ。
寝不足のまま金都に着くと実に久しぶりにマメタンからの
手紙が来ていた。なぜか1週間前のコペンからの差出しで、
東京から追いかけてきた元彼とはストックでとにかく会った、
一週間を二人で過ごしじっくりと語り続けるうちに二人とも
成長して大人になっていたんだなと気が付いて、元彼は納得
して元気一杯他はどこも見ずに帰国したとのこと。
すごい奴だ。彼女に会いたい一心だけで来たというのは本当
だったのだ。まあ結婚でもすればかなり疲れるだろうなとは
思ったが。そういうわけで、心の準備が整いました一週間後
の夕方にデュッセルドルフの中央駅に着きます迎えに来てく
ださいとのこと。一週間後てひょっとしたら明日じゃないか。
夕方迎えに行くのは何とかなるけど心の準備が、きょうあの
黒髪娘が私を部屋まで連れてってとたずねてくるし、明日
出発してアルジェに帰るそうなので、何かとても危険が一杯で
全く心の準備ができずに、寝不足で二日酔いでボーッとしてて
そのうちに午後の休憩時間が来てしまった。黒髪娘の声だ!
「へーイ!オサム!ウェアアーユー?」