中華レストラン金都(きんど)−2
金都はとても楽しい所だ。
中年スペインアミーゴは小柄小太りで
両親と子どもたちをふるさとに残し、
一人出稼ぎに来ているそうだ。いつも歌を
歌っている。時折誰も聴いていないのに、
仕事の手を休めてまじめに大声で自分の歌
に酔いしれている。最初は注意されたの
だろうが、今は誰も何も言わない。わりと
歌はうまいので、テノールのいい声だ、
皆諦めて聞き流している。ウェイターの
チャーリーは典型的なイタリア青年で、
当時はやりのウルフカット。スマートで
おしゃれでとてもかっこよく、いつも他人
の目を気にしてポーズをとり、しなを作る。
家はとても不潔なぼろアパートに住みながらも、
おしゃれだけは世界一だ。パラピーラパラピーラ
とイタリアなまりのドイツ語で、女性には必ず
何か一言声をかけては笑わせている。ディスコでも
気をつけなければならないのがこのタイプだ。
踊っていようが食事をしていようが、すっと
彼氏と彼女の間に割り込んできて、彼のほうには
背を向けたまま彼女を誘っている。「無礼者め!」
肩を叩き。「ノー、イタリアーノ!」とにらみつけると、
すぐに退散するのが面白い。それが女性に対する礼儀だ
と思っているらしい。皆が楽しくなるから憎めない、
ゲーム感覚だ。ヒッチハイクで女性が手を上げると
すぐに車が3台止まるというお国柄がうなづける。
中年ドイツ人のウルフガングは、一見ヤクザの
用心棒風だ。