第5話 2.11
[第5話]『2.11』
ー西新宿警察署ー
一夜明けて、ここは西新宿警察署の捜査1課。
北川警部補と喜多村刑事はこの捜査1課で、世の中の悪と日々奮闘?しているのだ。
喜多村刑事のデスク。
喜多村刑事、いわゆるオヴェはパソコンで、黒のワンボックスのオーナーを割り出している。
「オベ~、ワンボックスのオーナー、特定出来たか~。」
マグカップでコーヒーを飲みながら、オヴェの肩をたたく北川警部補、いわゆるホヘト。
「ホヘトさん、オベじゃなくて、オヴェです。」
「変わんねーよ。オベでいいオベで。それよりどうだ?」
ホヘトがモニターを覗き込む。
「はい、特定できましたよ。オーナーは、沖野英語朗。42才。前科は……あ、この人ヤバいですね。」
「どうした?」
「えっとですね。この人テロリストグループのリーダーですね。
沖野英語 通称『ローさん』。5年前に中東のイラクに渡り、革命軍『DON-Bay』に参加、
1年後中国に移って、テログループ『緑狸』で活動、半年後日本に戻り、
テロ組織『Red-Fox』を立ち上げて国会議事堂の爆破を計画。これは未遂に終わってますね。
武器と爆発物の不法所持で実刑を受けて、先月出所してますね。」
「ん~、かなり危ない奴だな。くさいぞ~コイツは。何かやらかす前に、逮捕しちまうか!」
「ムチャ言わないで下さいよ、ホヘトさん。」
心配そうにホヘトを見上げるオヴェ。
「冗談だよ、冗談。す~ぐ本気にしちゃうんだから~。ま、そこがオベの可愛いところなんだよな。」
と言って、両手でオヴェの肩を揉みほぐすホヘト。
「ホヘトさん。オベじゃなくてオヴェです。」
「オベ!ゴゥラ!」
と言って、両手でオヴェの首をしめるホヘト。
ホヘトの手を振りほどきながら、
「だけど、昨日の探偵さんも絡んで来そうですよね。」
ホヘトの顔が険しくなった。
「あ~、あのゴミ探偵か!あいつめ~!今度会ったらケチョンケチョンにしてやる!」
ー鉄也のアパートー
その頃ボッサンとユオは、
いけっちの兄、鉄也のアパートの前に来ていた。
「ヘッヘッ…ヘックション!あ~!ま~たどっかのカワイコちゃんが俺の噂をしてんな。人気者は辛いぜ。」
鼻をすすりながらニヤけているボッサンを見て、呆れながらユオが、
「ハイハイ。人気者は辛いねー。ど~せ昨日会った刑事が噂してんじゃないの?」
ボッサンの顔が険しくなった。
「あ~!あの鼻くそ刑事か!あいつめ~!今度会ったらケチョンケチョンにしてやる!」
「多分、向こうも同じ事言ってんじゃないの~?そんな事より、鉄也の部屋って2階だっけ?」
ユオがアパートの階段を上がりながら聞いた。
「2階の一番奥の部屋だ。」
2人は一番奥の『201号室』の前まで来た。ドアのポストには、新聞が刺さったままだ。
ボッサンがチャィムを鳴らす。…… 応答なし。
ボッサンはドアノブを回す。鍵が掛かっている。
ボッサンは辺りを見渡して、
「ユオ、開けろ。」
「あいよ!20秒待って!」
そう言うとユオは、ポケットから道具を出して鍵穴に突っ込み、カチャカチャやってあっという間に開けてしまった。
「お見事!相変わらず早いねぇ。」
2人は、ドアを開けて中に入ると鍵を掛けた。
「さて、手掛かりを探すか。」
靴を脱いで部屋を捜索する2人。
「ずっと留守じゃあなかったようだな。」
ダイニングテーブルに、3日分の新聞が置いてあるのを見て、ボッサンは言った。
ゴミ箱の中、引き出しの中、テーブルの上、
ユオがメモ帳を見つけて、
「ドラマだと、鉛筆で擦ると文字が浮き出てくんだよな。」
「ちょっと擦ってみ。」
言われるままに側にあった鉛筆で擦ってみる。
「あ、何か出てきた。」
「え、マジで?」
ユオがメモ帳に顔を近付けて見る。
「う~んと、2,11って書いてある。」
ユオはボッサンにメモ帳を渡す。
ボッサンは、メモ帳からその紙を切り取って、
「2月11日って事か?この日に何かやらかすつもりか?」
ボッサンは、メモをポケットに入れる。
その時、玄関で鍵をカチャカチャやる音がした!
「帰ってきた!ユオ、靴持ってこい!」
ユオはダッシュで玄関に走る!
ユオが靴を取った時、鍵が開いた!
ユオは風呂場に駆け込む!と同時にドアが開いた。
ユオは静かに扉を閉める。ボッサンは押し入れに隠れた。
ふすまを少し開けて部屋の様子を伺う。
足音が近づいて来る!
男が居間に入ってきた!
「アイツが鉄也か?こっちに来るなよ!」
ボッサンは心の中で叫んだ!
男は立ち止まり、何かを考えている。
何かを思い出した様にハッとして、こっちにやって来た!
押し入れの中は、後ろに何かがあって奥には行けない!開けられたら絶対見つかる!
「やべ~!」
そして、男はふすまに手を掛けた!