第14話 マジでどうする5分前!
[第14話]マジでどうする5分前!
ー本庁舎エレベーター内ー
高速で展望台に上がって行くエレベーターの中で、ボッサンはグロックのスライドを少し引いて、弾が装填されているのを確認すると背中に差した。
それを見ていたホヘトが、
「貴様!民間人なのに銃を持つとは何事だ!」
ボッサンは背中から拳銃をだして、
「これか?これはプラスチックのオモチャだよ。ハッタリ位にはなるだろうよ。え?まさか、本物とオモチャの区別位つくよね?刑事なんだから。」
「あ、あたりめ~だろ?オモチャってすぐ分かったさ!」
【※グロック17:フレーム・トリガー・その他強度に問題ない所にプラスチックを使用したオーストリア製の軍用拳銃】
ボッサンとホヘトを乗せたエレベーターは、展望台に登り詰めてゆっくり止まる。
ボッサンは扉を見つめながらホヘトに言った。
「俺は左から行く。お前は右から行け。ローは、黒のコートに黒のスポーツバッグだ。見つけても何食わぬ顔でやり過ごせ。いいな!」
「何でお前が命令するんだ!民間人を守るのが、警察官の…… 」
「行くぞ!」
扉が開いてボッサンは歩き出した。
「待て!こら!」
ホヘトも慌ててエレベーターを出た。
ー1階男子トイレー
オヴェはユオの後を追って、トイレの見えるところまで来た。
トイレの前ではMが銃を構えていて、オッパイ、アオイ、ユオが手を出せない状態でいた!
オヴェは物陰に隠れてホヘトに無線を入れる。
「ホヘトさん、発砲を許可願います!…… え?それどころじゃない?じゃあいいんですね?……
え?自分で判断しろ?じゃあ怪我人が出たら、ホヘトさんよろしくです!」
オヴェは一方的に無線を切り、ホルスターからH&K P2000を抜いた。
壁に張り付いて、Mの様子を伺う。
Mはオッパイたちに銃を向けながら、時計を気にしている。
オヴェは、壁の角から銃を構えた。
Mはしゃがんでバッグを開ける!
オヴェは照準を合わせる!
そしてトリガーを引いた!
乾いた発射音を放ってオヴェの撃った弾丸は、Mではなく、頭上の看板の片方のワイヤーを切った!
看板は、振り子の様に落ちてきて、Mの銃を叩き落とした!
それを見てユオとアオイが突っ込む!
Mはバッグを置いて、逃げ出した!
「俺が捕まえる!」
「俺が先だ!」
ユオとアオイは、100メートル競争の如く並んで走る!
ユオはどんどん加速してアオイを離していき、Mに追いついた!
ユオはスライディングアタック!
Mは派手にすっ転げる!
そこにアオイが駆けつけて、Mを押さえ付けた。
「くそ!足じゃ勝てねぇ!」
アオイが悔しがる。
「元国体選手が相手じゃ無理もないさ。」
ユオが腰に手を当てて、自慢気に言った。
そこにオッパイが銃を拾って歩いて来た。
アオイに押さえ付けられて、ジタバタしているMに銃を向けて言った。
「観念しろや!」
そこへ、ホルスターに銃を仕舞いながらオヴェがやって来て、オッパイに言った。
「取り合えずその銃をお預かりします。後は警察にお任せください。」
オッパイは残念そうに銃をオヴェに渡す。オヴェは、アオイが押さえ付けているMの両手に手錠を掛けた。
ー展望台ー
ボッサンは、外の景色を見ながらゆっくりと歩いて、ローさんを探していた。
しばらく行くと、カフェがあった。
仕切りがなく、テーブルと椅子が並べられている。
その中に、黒のコートの男がいた!足元に黒のスポーツバッグ!
「アイツだ!」
ボッサンは少し歩いてから、窓際に行って外を眺める。
右からホヘトが歩いて来た!
ホヘトは、ボッサンの後ろを通り過ぎる。
その時ボッサンは小声で呟いた。
「後ろのカフェにいる!」
ホヘトはしばらく歩いて行き、窓際に置いてあるパンフレットを取って、広げながら窓に寄りかかる。
パンフレットをゆっくり下げて、黒いコートの男を確認する。
男は、コーヒーを飲みながら時計を見る。
コーヒーカップを置くと、黒いスポーツバッグのチャックに手を掛けた。
「動くな!その手をゆっくり戻せ!」
ボッサンが両手で銃を構えながら叫んだ!
ローさんは手を止めて顔を上げた。
「両手を頭の後ろで組んで、こっちへ来い!」
ホヘトも銃を構えて怒鳴った!
「キャ~!」
カフェの客が逃げ出した!
ローさんは、その中の一人の女性を捕まえて盾にした!
「いや~!」
「銃を下ろさないと殺しちゃうよ~。」
ローさんは女性に銃を突き付けた。
「しまった!」
ボッサンとホヘトは、構えている銃を下ろした。
「ねぇ彼女。名前何ていうの?」
「カ、カオル… です。」
「カオルさん。足元のバッグ、開けてくれるかな~。」
ローさんは、女性の頭を銃で小突いた。
女性はガタガタ震えながらしゃがんで、バッグのチャックを開ける。
「そしたらねー。中の機械の赤いボタンを押してくれる?」
女性は、バッグを開けたまま震えて固まってしまった。
「早くしろ!ぶっ殺すぞ!」
ローさんが頭を銃で押しながら怒鳴ると、女性はしくしく泣きながら、震える指で赤いボタンを押した。
液晶パネルに『20.00』の数字が浮かび上がって点滅した。
「次はねー。数字の下に▲▼があるでしょ。下がる、を押して、数字を『5.00』にしてくれる?」
女性は言われるままに操作する。
ボッサンとホヘトがジリジリと近づいて行くと、ローさんが、
「あんまり近づくと、彼女の頭が吹っ飛ぶよ~。」
ボッサンとホヘトは動きを止める。
ローさんは、液晶パネルの『5.00』の点滅を見ると、女性に言った。
「じゃあ、また赤いボタンを押してね。」
女性はしゃくり上げながら、赤いボタンを押した!
すると、数字はカウントダウンを始めた!
「さあ、カオルさん立って~。お散歩行くよ~。」
ローさんは、女性の頭に銃を突き付けながらカフェを出る!
「助けて!」
「おい!彼女を放せ!」
ボッサンは、ローさんに銃口を向ける!
「おい!バッグを頼む!」
ボッサンはホヘトに言ってローさんを追う!
「え~!俺、解除出来ね~ぞ!」
ローさんは、女性を連れてエレベーターの前まで歩いていく。
ボッサンは、ローさんに照準を合わせたままチャンスを待つ!
ローさんは、エレベーターの下りのボタンを押す。
扉が開いて、ローさんは女性を盾にしてエレベーターに乗り込んだ!
「後、4分でドカンだよ。じゃあまたね~。な~んてもう逢わないか。ンフッ♪」
エレベーターの扉は、ローさんの不適な笑みを隠すように閉まった!




