第10話 ローとレミの企み
[第10話]ローとレミの企み
ーRed-Foxのアジトー
午後1時55分。
オッパイの運転するディーノ246GTは、倉庫裏の離れた場所に止まった。
「アオイ、くれぐれも気いつけろや。ヤバいと思ったら即逃げて来いや。」
真剣な面持ちでアオイの肩を叩きながら、オッパイは言った。
「了解ッス。」
アオイはふざけて両手で丸を作った。
「頼むぜ、ほんまに。」
アオイは車を降りて倉庫に向かった。
倉庫の正面に回ると、大きな鉄の扉の横にドアがあった。
インタホンがある。
ボタンを押す。
しばらくして声がした。
「誰だ!」
「昨日、ここに来いって言われた蒼井ッス。」
「入れ。」
ドアのロックが外れる音がした。
アオイは中に入る。
広いスペースの隅に、木箱が何個か積んである。誰も居ない。
「合言葉は?」
声だけが聞こえるが、反響して何処に居るのか分からない。
合言葉なんて聞いていないが、アオイはテキトーに、
「赤いたぬき。」
と言ってみた。しばらくして、
「それを言うなら、赤いきつねでしょ?ンフッ。」
「あ、そっか!」
アオイは頭をポリポリかきながら苦笑いした。
すると、木箱の影から男が3人出てきた。
「君、面白いねぇ。なかなかセンスあるよ。うん。このまま腕を磨けば、第2のさんまも夢じゃない。なぁ~んて夢で終わったりして、ンフッ♪」
「・・・。」
アオイは3人の所に行った。
真ん中の男が、昨日公民館で演説してたローさんで、両脇は部下らしい。
ローさんは、後ろで手を組みアオイの回りを歩きながら喋り始めた。
「今日ここに来たと言うことは、君は『今の日本はだめだ!俺が日本を変えてやるぅ!』と、少なからずとも思っていると言うことでいいのかな?」
ローさんはアオイの前で止まり聞いてきた。
「まあ、そうッスね。」
アオイはテキトーに答えた。
すると今度は、逆回転で歩きながら喋り始めた。
「じゃあ、この日本を変える為に、我々と一緒に戦ってくれるかな?」
またアオイの前で止まると聞いてきた。
アオイは間髪入れず、
「いいとも~!」
アオイは調子に乗って、右手を上げながら言った。
「やるぅ。じゃあ、これから話す事を聞いちゃったら、もう後戻り出来ないからね。聞いちゃってから、やっぱりやだ。なぁ~んて言ったら…… 」
「言ったら?」
ローさんはニヤリとしながら言った。
「殺すよ。ンフッ♪」
アオイはゾッとした。
「どうする?このまま帰ってもいいよ。それとも聞く?」
ローさんのニヤニヤした顔を見ながらアオイは言った。
「話を聞くッス。」
「了解で~す。実はね~、東京都庁爆破計画を手伝って欲しいのよね。あ~ちょっと待って!タバコ吸いたくなってきた。ちょっとタバコ吸ってきてもいいかな。ダッシュで吸ってくるんで。3くち位で吸ってくる。」
と言いながら、隅にある部屋に小走りで入っていった。
アオイは不思議そうに、
「ここで吸えばいいのに。」
と言うと、部下の一人が、
「この木箱の中身はダイナマイトだからね。」
と言いながら木箱を叩いた。
それを聞いて、東京都庁爆破計画が冗談ではない事が分かった。
しばらくしてローさんが帰って来た。
「ただいまで~す。」
「お帰り~。」
部下が答えた。
ローさんがアオイの前に来て、
「話の途中でごめんなさいね。どこまで話したっけ?あ、そうそう、東京都庁を吹っ飛ばすんだけど、要は、タイマー付きのダイナマイトを、皆で手分けして都庁に仕掛けるだけなのよ。もちろんタダでやってくれとは言わない。成功すれば、報酬として一人100万円出すよ。
ダイナマイト入りのバッグを置いて来るだけで100万円だよ。悪くない話でしょ?」
ローさんは、アオイの肩を叩きながら言った。
アオイは引き受けるしかなかった。断れば殺される……。
「やります。で、いつやるんスか?」
ローさんは、木箱の向こう側へ歩いていき、こっちを向いて両手を着いた。
「明日2月11日正午にドカン!ンフッ♪」
ー京王百貨店新宿店地下駐車場ー
ボッサンとユオは、ミッドナイトサンダーの助けを借り、警察
の目から逃れて、デパートの地下駐車場で息を潜めていた。
GTRの中で、一人タバコを吸うボッサン。
そこへユオが戻って来た。
ボッサンが助手席のドアを開けてやる。
「遅かったな。電車で買いに行ったんか?」
「だってコーヒーの自販機ないんだもん。駅の方まで行っちゃったよ~。」
ふてくされながらボッサンに缶コーヒーを渡すユオ。
ボッサンは、缶コーヒーを開けてひとくち飲んでから、
「そう言えば、アオイは上手くやってるかな。」
「どうだかな~。もう殺されちゃったかもね~。」
と言って、親指で首を切る真似をするユオ。
「縁起でもね~事言うな!あ、そうだ。事務所に連絡入れてみっか。」
ボッサンは、携帯を出して事務所に電話してみる。
「レミか?俺だ。わ~!うるせ~!」
レミの怒鳴り散らす声に、思わず携帯を耳から離すボッサン。
ー荻野目探偵事務所ー
ボッサンとユオが事務所を脱出して、オッパイとアオイがRed-Foxのミーティングに出掛け、レミは1人寂しく電話番をしていた。
誰も連絡して来ないのでイライラしているところへ、やっとボッサンからの連絡が入った。
「ぼっさん?おっそいよ~!連絡が!心配するじゃないの~!警察は?逃げ切ったの?…… うん。……
アオイとオッパイ?まだ連絡ないのよ。あ、そーだ。ボッサン、家にも帰れないでしょ?いい隠れ家あるわよ。住所教えるから行ってみて。電話しといてあげる。フフ♪」
ー神倉邸ー
ボッサンとユオは、レミが教えてくれた住所にやって来た。
門の前に車を止めて、ボッサンとユオは車から降りた。
「いや~、凄い門だな!車5台は並んで出られるな!」
「なんか殿様が出てきそう!え~っと?神倉義麿?ボッサンの知り合い?」
首をひねっているユオにボッサンは言った。
「あの『神倉組』の親分の家さ。」
「あの関東一のヤクザグループの?」
「そうだ。同時に、レミの家でもある。」
「レミの家、ふ~ん。え?・・・えぇ~! 」




