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序章 「彼女」
まず「彼女」の語り。
闇に包まれたこの世界。冷たい壁は何処までも続き、逃げる事を許さない。風でさえ、身体を悲しく撫でて行くだけ。
そんな世界で、人は生きている。何が幸せで、何が不幸せなのかすら解らずに。
私もその一人。
きっと、どれだけの時間が経っても、私の中の闇は消えないだろう。たとえ、どれだけの人がどれだけ優しい手を差し伸べてくれたとしても、私はこの闇を殺す事は出来ない。
「あの時、死んでいたら楽になれただろうか」と何度も思った。でも、知っている。解っている。私に死ぬ勇気など無い事くらい。悔しいほど、痛いほど自分がよく解っている。
私に、幸せを手に入れる資格など、初めから無い事も。解っている……。
次は少年の語り。