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一番恥ずかしくないかも知れません。

過去の恥は書き捨てと言いながら、この墓地送りシリーズ結構恥ずかしいんですが、その中では一番今のテイストに近くてマシな作品です。


「目のない鶴」


6歳まで一人っ子だった初音に弟陽二が生まれた。手のかかる小さな命に周囲は夢中で、自分のことなんかちっとも気にかけてくれなくなった。

『陽二なんかいなくなればいい!』

そう思った矢先、その弟の目が見えていない事がわかる。


自分が陽二を呪ったせいだ……そう思った初音は、弟の目のなることを決意する。


やがて5歳になった陽二は初音の折った折り鶴に興味を示す。初音は折り方を教えてやると、器用な陽二はちゃんと折り鶴を完成させた。一枚の紙が触れる立体になるのが面白く、陽二は初音に折り紙の本を読んで解説してもらい、どんどんと作品を作っていく。


やがて陽二は創作折り紙の世界に。手触りを重視した類い希なる感性で作られた立体的な造形に、誰もが陽二の目が不自由であるとは信じられないとため息を漏らすほどの作品を仕上げるようになった。


そして、彼の初めての個展の初日、陽二は初音に一羽の折り鶴を手渡して言った。

「ねえちゃん、僕の鶴には目がないんだよ」

と……

驚く初音に陽二は続けて、

「この鶴は何色?」

と聞く。紙は全て色別に箱に分けて、箱に点字で印を色名を記してあるはずだから、本当は分かっているはずだ。初音は本当は青色なのに、わざと灰色だと言ってみる。

「僕は青色だと思ってたよ」

「なんだ、やっぱりちゃんと分かってるんじゃないの」

そう言った初音に、陽二は

「でも、それはねえちゃんがいつも色別に仕分けしてくれているから分かることなんだよ」

と返した。そして、

「でも、もうこれからは自分のこと考えて。今なら色分けしてくれるボランティアも頼めばきてくれるよ。ねえちゃんが自由になって、僕は僕の目で見ないと。僕の鶴はいつまでも飛べないんだ」


初音には何年もつきあっている恋人がいたが、陽二のことが気にかかって恋人のプロポーズを受けられずにいた。それを知っての陽二の発言だった。


結婚式当日、初音は陽二お手製の折り紙で作られたブーケを手に夫と永遠の愛

を誓い合った。



ほのぼの姉弟愛。両親はどうしたの? 墓地送りメモには記されてなかったけど、おそらく死んでたような……







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