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ロード・オブ・ザ・退職

作者: 檸檬koY
掲載日:2026/06/27

退職を心に決めてから一年が経過した。

忙しい日々が続いてきたが、5月末には仕事が落ち着いてきた。


(よし、このタイミングだ。)


仕事終わりに人事課へ向かう。


「7月末で退職します。」


「まずは、所属課の課長に伝えてください。」


「はい?」


「まずは所属課の課長です。課長から人事に連絡がきて、それから退職の手続きができます。」


「・・・はあ。」


それが、会社のルールということなのだろうか。

もやもやは消えないが、しかし、そう言われては仕方がない。

まずは、課長に言うしかない。


―――――


翌日。

所属課の課長に声をかける。


「あの、今お時間大丈夫でしょうか。」


「ん?どうした?」


「・・・7月末に退職したいです。」


「そういわれても・・・チームリーダーとか、係長には話したの?」


「はい?」


「俺に最初に言われても困るんだよね。まずは、チームリーダーと係長を納得させてから俺に話して。」


「・・・はあ。」


これも、会社のルールなのだろうか。

もやもやは増すばかりだが、そういわれては仕方がない。

まずは、チームリーダーと係長に言わなくては。


―――――


さらに翌日。

チームリーダーに伝える。


「あの、今お時間よろしいでしょうか?」


「お、どうしたの?」


「7月末で退職したいです。」


「えっと・・・もう一回。いつ?」


「7月末で。」


「分かった。」


係長にも伝え・・・ようとしたが、何やら忙しそうだ。

手伝う最中で話せればと思い、声をかける。


「係長、何か手伝います?」


「お・・・。助かるけど、自分の仕事は終わったの?」


「はい。」


「そしたら、コレと、コレ。持っていってほしい。」


「分かりました。」


「ありがとう!はあ・・・。課長が仕事しないから、自分の仕事が終わらないよ・・・。」


とても退職の話なんてできない・・・。

次の機会を狙うことにした。


―――――


出勤日が重ならず、次に係長に会ったのは6月の頭であった。


「あの、係長。今お時間よろしいでしょうか。」


「おお。いいよ!どうしたの?」


「7月末で、退職したいです。」


「・・・そうか。うん・・・そうか。」


「・・・すいません。」


「今の仕事が嫌なら、部署を変えるとか、そういう手段もあるけど・・・。」


「・・・退職させていただきたいです。」


「・・・そうか・・・分かった。」


「すいません。」


チームリーダー、係長には伝えた。

次は、いよいよ・・・課長だ。


―――――


翌日。


「課長、今お時間よろしいでしょうか?」


「ん?」


「チームリーダーと係長には伝えました。7月末で退職したいです。」


「うん。・・・とりあえず、聞いておく。」


会話はそれっきりだった。

本当にこれで退職が確定したのか分からないが、とりあえず所属課の課長に伝えられたのであった。


―――――


6月の中旬。

突然、チームリーダーに呼び出される。


「退職日、7月末って言ってたっけ?」


「はい。」


「有給が消化しきれない。」


「はい?」


「有給が30日くらいある。公休も入れなきゃいけないから、使い切るには8月中旬で辞めるのが良いと思うけど、いかが?」


「そうですね・・・有給は使い切りたいですね・・・。それで、お願いします。」


「すると、最後の出勤日は・・・6月末のここになる。」


「分かりました。それで、お願いします。」


退職日が、延期された。

しかし、有給がそんなに残っていたとは・・・。

有給は使い切りたいため、悪い思いはしない。

最後の勤務――6月末に向けて、カウントダウンが始まった。


―――――


最終勤務日まで、あと10日。

突然、係長に呼び出される。


「課長には退職のこと伝えた?」


「はい。伝えました。」


「なんか言ってた?」


「まあ・・・とりあえず聞いておく、と。」


「あれ、おかしいなあ。もう一度、正確に伝えてほしい。何月何日が最終出勤日で、何月何日付で退職すると。」


「それをまた言わなきゃいけないんですか?」


「課長から直接聞けよって気持ちは分かるんだけど、俺も課長からそう伝えてって言われているから。」


「はあ・・・分かりました。」


「うん。あと、チームリーダーではなく、所属課の事務員の人にも有給残日数を正確に計算してもらって・・・。」


次は事務員。そして、また課長らしい。



―――――


最終勤務『予定』日まで、あと9日。


所属課の事務員の人に聞く。


「お忙しいところすいません。退職にあたって、有給残日数を数えてもらって、正確な最終勤務日と、退職日を調べてほしいんですけど・・・。」


「あ、そんなんですね。お疲れさまでした。チームリーダーは知っている?」


「はい。それで、チームリーダーからは6月末が最終出勤日で、そこから有給消化に入って8月中旬に退職が良いのではと言われていて・・・。ただ、係長から事務員さんにも、正確に調べてもらえと言われていて・・・。」


「分かりました。調べておきます。」


「すいません、お願いします。」


その日の終わりには、ロッカーの中に調べてもらったメモ書きが入っていた。

チームリーダーの話と同じであった。


―――――


最終勤務『予定』日まで、あと8日。


課長がいた。


「すいません、お時間よろしいでしょうか。」


「ああ・・・話したいのは分かるんだけど、当直明けだから。今度にして。」


「分かりました。」


当直明けは、無理らしい。


―――――


最終勤務『予定』日まで、あと6日。


課長がいた。


「すいません、お時間よろしいでしょうか。」


「ん。いいよ。」


「事務員の人に調べてもらって、有給が〇日残っていて、最終勤務日が6月〇日になって、そこから有給消化に入り、8月〇日に退職させていただきたいです。」


「あれ、係長から聞いていた話と違うんだけど?」


「はい?係長からは何て・・・。」


「7月末まで働くみたいな。」


訳の分からない話になってきた。


「いえ、多分・・・ていうか絶対それは間違っていて。有給が思った以上に残っており、事務員の人にも確認してもらったので、こっちが絶対に合っています。」


「そうか。辞める覚悟は決まっているのか。」


「はい。辞めます。」


「次は決まっているの?」


「それは決まっていないですが。」


「そうか・・・心配だ。」


「はい?」


「お前の将来が心配だ。」


「心配してくれるんですか?」


「当然だよ。課長はみんなの親みたいなものだから。」


課長はみんなの親ときた。

もう、一周回って笑えて来る。


「そうですか、ご心配ありがとうございます。大丈夫です。何とか生きていくので。・・・それより、早く人事課に伝えて欲しいです。」


そう、今更心配されたところでどうでもいい。

早く、正式に退職したい


「揺るがないんだな。」


「はい、もう絶対に揺るがないので、早く人事課に伝えて欲しいです。」


「おう・・・分かった。」


不安しかないが、信じるしかない。

まだ6日あるのだから、言ってくれると願うばかり・・・。


―――――


最終勤務『予定』日まで、あと3日。


突然、課長から呼び出される。


「今さっき、人事に話したから。有給消化中におそらく連絡が来ると思う。そこで面談とか手続きとかすると思うから。」


3日前になって、ようやっと話してくれたらしい。


「有給消化中・・・。分かりました。え、いつ電話がかかってくるとかも分からないんですよね。それは人事に聞けば・・・」


「人事から連絡がくるから。8月15日までは社宅に在籍しなけれはいけないだろ?」


いやいやいや。

いくら有給消化中とはいえ、その日まで社宅で過ごさなければならないのか。それに、8月中旬まで続く有給消化中のいつ来るか分からない連絡を待たなければならないのか。てか、有給消化中に会社に来なければならないのか。

もう不安しかないため、仕事終わり、人事課に寄ることにした。


「すいません、退職についてお聞きしたくて・・・。」


「まずは、所属課の課長に言ってください。」


出たよ、出た。


「はい。既に課長には伝えていて、課長から人事に話したということなので退職についてお聞きしたいんですけど。」


「今担当者がいないので。」


「分かりました。明日休みで、電話して確認したいので電話番号教えていただいたいてもいいですか?」


「分かりました。担当者は11時から出勤していますので、その時間からでしたら・・・。」


「分かりました。ありがとうございます。」


明日は休みのため、電話して聞くしかない。

しかし、この不安が払えるのであれば!



―――――



最終勤務『予定』日まで、あと2日。


13時頃、人事課に電話をかける。


「はい、○○株式会社人事課です。」


「お疲れ様です。○○会社○○課の○○です。退職についてお伺いしたく、お電話させていただきました。」


「分かりました。担当者に代わります。」


・

・

・


「はい、代わりました。」


「あ、すいません。退職に関してお聞きしたくて。」


「まずは所属課の課長に話してから出ないと、こちらは何もできなくて。」


はい。はい。はい。


「はい。もう課長にも話していて、課長から人事に伝えたという話を聞いたため、今電話しているのですが・・・。」


「そういった話は聞いてないですよ。」




「はい!?!?!?」




「あなたの所属課の課長から、そういった話はありません。」


「いや、課長が人事に言ったと聞いたので電話しているのですけど。」


「人事課長に代わります。」


・

・

・


「はい、所属課長からは何の連絡もないよ。」


「いや、その、ええええ!!!!!!」


「誰に話したって言ってた?」


「昨日人事に言ったってことを聞いて、それで、退職について聞けると思いお電話したのですが。」


「少なくとも、私には伝わっていなくて・・・。」


「分かりました。でも、ちょっと不安なのでお聞きしたくて。所属課長からは、有給消化中に人事から連絡があって、それから面談とかするって聞いたんですけど・・・それが大体いつ頃になるかということと、あと、退職日まで社宅に住んでなきゃいけないみたいなこと言われたんですけど、別にそんなわけないですよね?」


まくしたてる様に聞いた。


「まず、退職の面談をしなければならない。それは有給消化中になる。面談は仕事じゃないから。多分2回くらい来てもらうことになると思う。あと、社宅を出る日は退職日と一緒にしなくてもいいけど、その辺は今話さなくても、面談の時に話すから。」


「その面談っておおよそいつ頃になるか・・・今までの例で教えて欲しいんですけど。というのは、8月の〇日付けで退職で、8月に入ってから呼ばれても、来れないかもしれないので。」


「7月中はいるんだよね。」


「はい、その予定です。」


「だったら大丈夫だと思うよ。」


「本当円満に辞めたいので、どうかよろしくお願いします。」


「筋を通したいって訳ね。明日もう一度所属課長に確認してみてよ。」


「分かりました。すいません、よろしくお願いします。」


「はい、よろしくお願いします。」


「失礼します。」





「はああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」  

ロード・オブ・ザ・退職

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