本郷裕也の関心
俺、本郷裕也は、どうやら女難の相があるようで、電車で痴女にあったり、バイト先の社員の女性にストーカーまがいの行為をされたり、とにかく女性とのトラブルに巻き込まれることが多い。
現在も、金子花梨という高三の女子高生の家庭教師をしているのだが、この生徒が勉強そっちのけで俺にちょっかいをかけてくる。
小柄だけどグラマラスな彼女は、俺との勉強の時間はいつもノーブラだ。襟ぐりの大きなTシャツを着てわざと乳首を覗けるようなポーズを取ったり、俺の腕に胸を押し付けながら、デートをおねだりされたりもした。
せっかく見つけた割の良いバイトが、このままではまずいことになるかもと思った俺は、彼女の母親に相談することにした。
娘さんのことで相談があると告げると、食事でもしながら話をしましょうと言うことになった。
指定されたホテルのレストランに行くと、娘同様に大きな胸をした母親は、厚化粧をして、胸の谷間が見える派手な服を着ていた。この分だときっとホテルの部屋くらいは用意しているだろう。
ここは「君子危うきに近寄らず」、「三十六計逃げるにしかず」だ。
俺は、相談もそこそこに、「部活の都合があるので、家庭教師をやめさせてください」と頭を下げ、食事が終わるやいなやレストランを退散した。
中途半端なかたちで家庭教師を辞めることになり、さすがに生徒の金子花梨ちゃんには申し訳なく思った俺は、彼女には「家の外でなら、わからないところがあれば教えるので、連絡してきていいよ」と告げていた。
早速彼女から連絡があった。どうせ下心満載のお誘いだろうと、指定したファミレスに行ったところ、花梨ちゃんともう一人、なかなかの美人が同席していた。
ろくに質問も用意していない花梨ちゃんの魂胆は見え見えだったが、佐藤紗理奈と名乗った彼女のクラスメートは、勉強の方もなかなか優秀だった。
ただ、下心という面では花梨ちゃんと同じ穴の狢のようで、かわいらしさをアピールしたあざとい演技には、陰謀遠慮というか、花梨と格が違う百戦錬磨の雰囲気があった。
別れ際に、紗理奈さんは、丁寧なお礼と共に「英語も教えてほしい」と言い出した。俺はこの元教え子のクラスメートに、少なからず興味を感じ、個人授業を快諾した。
二回目の個人授業でデートのお誘いがあったが、彼女の真意が読めなかったのでお断りをした。
すると、三回目ではなんと「私の初めてを貰ってください」と言い出した。
これには多少心が揺らいだが、女難体質の俺は、彼女が本気で俺のことを好きで言っているのではないことぐらいお見通しだ。
とりあえず子ども扱いして、相手にせずに、お引き取り願った。