佐藤紗理奈の邂逅
中学校で問題を起こした私は、何とか私を厄介払いしたいという校長先生らの努力により、大学までエスカレーター式に行ける偏差値五十前後の中高一貫の女子校に編入した。
私は「もう次はないんだから、学校だけではトラブルを起こすないで」というママの言いつけを守り、表向きには平穏なJKライフを送っていた。
でもそれは表向きのことで、私は男を切らしたことはなかった。大学生や社会人の男と二股、三股の交際をする一方で、親友二人と組んでの男漁りにも余念がなく、この夏も伊豆のペンションでナンパした大学生を三人で美味しくいただいたところだ。
「ねえねえ、聞いてよ、紗理奈ー」
親友の本陣爽子と金子花梨と三人でお弁当を食べていると、花梨が相談を持ち掛けて来た。
「なあに? ねこちゃん」
私は花梨のことを、かねこという名字から、ねこちゃんと呼んでいる。
「カテキョが突然辞めるって言うんだよー。T大生で、すごくかっこいい人なんだよ。私、狙っていたのになー」
お、交際中のお相手に有名私大の男はいるが、天下のT大生は今までの私のセフレ・コレクションにもいなかった。
「大学生なんて、JKがやらせてあげるっていえば一発なんじゃないの」
「それがさー、いろいろやってみたんだけど、全然反応なしというか、相手にされてないというか。悔しいよー」
ねこちゃんがそういうのであれば、本当に難攻不落のハイスペック男なんだろう。
「一度呼び出すから、三人がかりで誘惑してみない?」と花梨。
「私はパス」と爽子。
どうやら伊豆で出会ったイケメンバレーボール男子に一目ぼれしてしまったらしい。
「紗理奈は? 紗理奈の手練手管だったら、きっと落とせるよ」
「いいねー、私は乗った。それじゃうちに誘って、ねこちゃんはクローゼットに隠れていて、途中で入れ替わるってのはどう?」
「なにそれー、どっきりカメラみたい。やろうやろう」
なんでも、カテキョは辞めても、わからないところがあったら教えてあげるから連絡してきていいよということになっているらしい。
早速ねこちゃんが「数学でどうしてもわからないところがあるので」と連絡を取り、彼の自宅の最寄り駅の駅前のファミレスで会うことになった。
もちろん、私も同席させてもらうことにした。
私は、長身でかっこいい本郷裕也さんをひと目で気に入った。これはぜひ私のセフレに加えたいと思った。
私は、品行は悪いが学校の成績はそこそこ優秀だ。その日は徹底して良い生徒を装った。彼の説明にタイミングよく相槌を打ち、的を射た質問もした。
「今日は本当にありがとうございました。教え方がとても分かりやすかったです」
別れ際に丁寧にお礼を言った私は、次回のお願いをした。
「あの、英語で少しわからないところがあるんですけど、お時間がある時に教えていただけませんか」
二回目も同じファミレスで、今度は私一人で彼とお勉強をした。
「私にも、裕也さんみたいにわかりやすくお勉強を教えてくれるお兄さんがいたらよかったのにー」と、得意の上目使いで言ってみたら、彼も、満更でもなさそうだった。
自分で焼いたクッキーを渡しながら、「観たい映画があるので一緒に行ってくれませんか」と誘ってみたが、これはあっさりスルーされた。
三回目に私は勝負をかけた。
「裕也さんが好きです。私の初めてを貰ってください」と直球を投げてみたが、「子供が何言ってんの」と完全スルーされた。