金子花梨の感慨
私と爽子は、いつものように屋上でお弁当を食べながら、紗理奈の話を聞いていた。
彼女は普通に話しているつもりのようだが、これはもうはっきり言って惚気である。正直聞くに堪えないので適当に返事をしておくことにした。
「うー、『私の初めてを貰ってください』って迫ってたのに、実はヤリマンだったのが裕也さんにばれちゃったよー」
「それでも付き合ってもらえてるんでしょ」
「嘘をつき続ける手間が省けてよかったんじゃない?」
「今までちょっかいかけても反応がなかったから童貞かと思っていたら、エッチもかなり上手いんだよ。あれは相当に女慣れしているな。許せん!」
「紗理奈がそれを言う?」
「ほんと、どの口で言ってんだって感じだよね」
「かと思ったらさ、昨日なんか、高尾山へ行こうっていうから、帰りにラブホに寄るのかな、それとも外でするのかなと思って、すごく楽しみにしてたのに、何にもしないんだよ。ただ一緒に山に登って降りただけ。それも六時間もかけて」
「それで、楽しくなかったの?」
「え、楽しくなくはなかったけど、、、」
途切れなく続く紗理奈の話をさえぎって、爽子が口を開いた。
「そんなことよりさ、ねこちゃんに、一発やったら回してあげるって約束してたでしょ」
「そうだよ。紗理奈がそんなに上手いっていうなら、楽しみだなー」
紗理奈の表情がこわばって、口をパクパクさせている。これはマジ面白い。
「「冗談だよ」」
たちまち彼女の表情が緩み、涙を浮かべている。
「ねこちゃんの馬鹿!」だってさ。
あのヤリマン紗理奈をここまで変えてしまうなんて、恋ってすごいもんなんだなー。
「紗理奈、今すごく幸せだよね。よかった。よかった」
「…ん」
私たちは、泣きだしそうになるのをこらえて唇をかんで頷く紗理奈の肩を抱いて、頭をよしよしと撫でてあげた。
「「めでたし、めでたし」」
(完)




