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New world  作者: 巻Salmon
同じ景色
16/16

日常:始まり5

「挨拶でもする?」

そう言うと、フェリスはわざとらしく両手でスカートの裾をつまみ、恭しく頭を垂れた。

まるでどこかの姫君のように、麗しく。

その時だけは、彼女が高貴な出の人間だと思い出させる。

「俺は貴族じゃないんで」

そんなフェリスにライザーはそっけなく応じる。

貴族同士の決闘にはいくつかの礼儀があるのは知っている。

闘いにも礼節を、実に結構な人種じゃないか。

「そう?貴方の家有名じゃないの?」

ライザーの心情を知る由もない、無邪気なフェリスの言葉に感情が揺れる。

「俺、お前の事嫌いかもしれない」

無邪気なフェリスに対しライザーは言葉を漏らした。

「何でよ!」

叫ぶフェリス。

真っ直ぐに感情を出す事が少ないライザーにとって、思った事をすぐに言葉にしてしまうのは滅多にないことだった。すぐに思い当たる記憶もない。


そう、あのときでさえも


ライザーとは真逆に感情で生きるフェリスの横で、ソウは静かに頷く。

それを無言で睨む。

「フェリス=クィンスターよ、貴方の名前は?」

一応、名乗りを上げるフェリスに育ちの良さを感じつつ、名も知らずに殴り込んできたのかと、呆れる。

「ライザー=レイステッドだ」

一応の礼儀として名乗る。

「何よ、名家じゃない」

以外にも驚くフェリス。

「うちは少し特殊でね」

そう言って、黙るライザーからこの話はこれ以上する気はないという意思が見て取れた。

ソウは始まりの気配を感じ、ゆっくりと距離をとる。傍観者の位置まで離れ、二人の様子を呑気に眺めていた。

「止めなくていいのか?」

周りのガラの悪い男たちからの問にソウは笑って首を振る。

「俺が、止められると思う?」

その言葉に声かけた男は諦めたように笑う。

相対する2人の様子を遠目に見る。

「止める必要も無いだろ」

ソウの言葉に男は振り向くが、ソウは無言のままだった。


「んじゃ、はじめますか」

そう言うとフェリスは右手を天に高く上げた。

太陽光がそれと重なり、さながら掌に太陽を乗せているようだった。

緊張が辺りを支配する。

皆が想像するより早く、それは現れた。

太陽光から掌に向かい、それを着火させるように、そこに炎の球が現れる。

「…おいおい」

ライザーは思わず声を漏らす。

その火球の直径は一瞬でフェリスの身体半分以上の大きさとなる。

それはもう一つの太陽の現出だった。

見た目だけでその殺傷力が測れる。

当たれば全身黒焦げ間違いない。

「おもしれぇ」

ライザーは流れる冷や汗を気にもとめず、相手から目を離さない。いや、離せなかった。

ライザーは速やかに手に持ったものを起動させる。そして、そこから半歩、右足を下げる。

「行くよ」

フェリスは言葉に合わせ、ゆっくりと手を振りかぶる。それに合わせ火球も動く、緩慢に、だが高圧的に。

その動きはまるでボールでも投げ返すように、動きはゆうがである。しかし燃え盛る巨大な火の球はすべてを飲み込むような、存在感を放つ。

全てが相まり、この光景はなんとも言えぬ禍々しい光景であった。

相手の動きが終わるのを待たず、ライザーは駆け出す。

僅かな躊躇いを飲み込み、相手に向け一直線に走り出した。

「いい判断」

自らが格上であるのが当然のような、目線でフェリスは言った。

「言ってろ」

僅かな間の最低限の会話。

ライザーの判断に、フェリスは喜んでいた。

迫る相手に合わせ、フェリスは高く上げたままの片手を握る。

ライザーの想像していた行動とは違う動作に、その進みは僅かににぶる。

フェリスの手を握る動きに合わせ、火球が圧縮する。まるでその手に握りつぶされるように。

「挨拶代わり」

フェリスはそう言って、手を閉じきる。


刹那、火球が弾ける。


散り散りになる炎の欠片が、無数の弾丸となり四方へ飛び散る。

想定外の攻撃、その中であってもライザーの判断は早かった。

一瞬のうちに、身体をねじり無理やり体勢を変える。

後方に銀色のプレートを飛ばし、磁力で繋げた後に、後方に飛ぶ、その勢いのままその場を大きく離れ、体勢を崩しながらも迫りくる火を辛うじて避けた。

「意外に器用な事するじゃねぇか」

片膝をつき、上がった息を整えながら、フェリスを見上げる。

「そう?」

負け惜しみともとれるライザーの言葉にフェリスは首をかしげる。

「良い道具使ってるね。仕掛けは分かんないけど、長引くと辛いんじゃない?」

その言葉にライザーは舌打ちする。

こいつは、今までの馬鹿とは違う。

そう、直感する。

この手に持つ物のデメリット、身体に返る負担の軽減を度返しした結果無理やり得られた高出力。かろうじて我慢できるが、長時間耐えることは想定していない。

目の前の相手は圧倒的に力がある。

その力の差に、高揚する。

たが、しかし力が上でも相手が格上かは分からない。

初手の僅かな攻防は、フェリスに軍配が上がったが、ライザーに焦燥は皆無だった。


距離は取れない。

ライザーは判断する。

離れれば長期戦になり分が悪い。

だが近づくにも決定打がない。


目の前にいるのは少女の皮をかぶった怪物、この世界では良くある事だ。

年端もいかない子供が、大男を意図も容易く吹き飛ばす。

持つものと持たざるものの明確な差、これがこの世界だ。

ライザーは小さく息を整える。

覚悟を決める。相手の動向を鋭く観察し、一定の距離を保つ。

「動かないの?」

あからさまなフェリスの挑発、ライザーは動じない。

「ビビっちゃった?」

続けるフェリス。

無言で受けるライザー。

「そう、じゃあこっちから行こうかな」

そう言い放つフェリスの手からの炎が燃え上がる。

その大きさは先ほどまでと違い手の上に乗るようなサイズである。

まるで手に持ったグラスで戯れるように、その炎を揺らす。その明かりがフェリスの顔妖しくを照らしていた。

「いつまで避けれるかしら」

振り被ったフェリスはそのままの勢い良く、投げつける。

「ふざけやがって!」

ライザー目掛け飛んでくる炎を間一髪かわす。

通り過ぎると炎は消え去った。

「まだまだ」

続け様にその行為は繰り返される。

肝を冷やしている暇さえもない。


そこから、戦いは激しさを増す。


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