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New world  作者: 巻Salmon
同じ景色
14/15

日常:始まり5(前半)

林道を抜けた先に開けた広い空間がある。

森の中から切り取られた場所、自分達の校舎から離れた先にそれはあった。

通称、技術棟。

まるで隔離でもされたかのようなそれは、他の校舎と明らかに違い異彩を放つ。

そこは工場特有の油の染み付いた匂いが広がっていた。

「なんか、薄汚れた場所ね!」

胸を張り、声高らかにそんなことを言い放つフェリスに、ソウは思わず顔をしかめる。

「いきなり、やめろや!」

後頭部を思い切り引っ叩きたい衝動に駆られるが、辛うじて我慢する。

「え、なんで?」

自分の言っている意味が分かっていないように首を傾げる。

「いきなり来て、一言目が悪口かよ」

本当に意味がわかっていないのだろう、ソウはあらためて付け加える。

「悪口なんて言ってないんですけど」

「あれ、悪口じゃないんだ」

「ただの感想だけど?」

このお嬢様の頭には配慮というのものがないらしい。そんなフェリスの様子には、苦笑いするしかなかった。

よりによってバカでかい声いいやがって、誰かに聞かれていなければいいが、そんなことを考えたがもう遅かったらしい。

どこにいたのかワラワラとガラの悪そうな連中が集まって来る。

「薄汚れた場所で悪かったな」

いきなり誰かもわからない人間に自分たちの居場所を悪く言われれば、良い気分はしないだろう。

「別に悪くないけど、味があって私は好きよ」

あっけらかんと言い放つフェリスに一同はただ呆けるしかない。

「褒めてたんだアレ」

思わず、つぶやくソウに一同は我に返る。

数は6人、それぞれ人相悪く睨みつけてくるが、フェリスは全く臆さずに堂々としている。

何事もなく品定めでもするようにキョロキョロと辺りを見回している。

「いないわね」

フェリスは残念そうに口を尖らす。

「まあ、いっか」

そう言うと、自分と一番近い、丸刈りの男と目を合わすとニヤリといやらしく笑った。

嫌な予感しかしない。ソウは思った。

「そこの丸刈り」

どう見ても上級生の初対面の相手に、見た目で呼びつける傍若さは、なるほどお嬢様然としている。それでも嫌味に感じないのは、天性の気質から来るものだろうか。

呼びつけられた本人も間抜けに自分を指さしている。

「そう、あんた」

相手の態度に丸刈りの男は、あぁ、と気の抜けた返事をするしかない。

「…なんて無礼な奴」

ソウは小さく呟く。

「あんた、聞こえてるからね」

「…まじかよ」

聞こえないように言ったつもりが、しっかり耳に届いていたらしい。

「えー、となんだっけ?名前」

そんなことをお構い無しにフェリスは未だ呆けている丸刈りの男に言葉を続ける。

「俺の?」

「いや、あんたでなく」

なんだかチグハグな会話である。

「噛み合ってねぇ」

ソウの言葉は今度は聞こえなかったようで、そのまま流される。

「あのー、あれよ、電気使うやつ、あいつ知らない?」

やっぱりか、ソウは予想していたことが当たったことを理解した。

「あいつ、強いんでしょ?」

フェリスは嬉しそうに笑っていた。

その言葉で周りも用件を理解したのか、緩和してい空気から一転、顔を引き締める。

「呼んできてくんない?」

大胆不敵にそんなことをのたまう。

その言葉には我慢できなかったのか丸刈りの男が詰め寄る。

「お前、めっちゃ失礼だからね」

「なんでよ?」

流石にフォローに回るソウだが、フェリスは全くもって理解していないようだった。

「いきなり現れて何なんだてめぇら!」

「…おっしゃる通りで」

自分も一員に含まれている事は激しく不服だが、この状況では仕方が無い、とソウは諦める。

「私はね、新聞に乗ってたあの、電気使うやつに会いに来たの、あんたたちに用は無いから、さっさと呼んできてほしいんだけど」

きっと挑発するつもりなんて無いのだろう、人を怒らせることに関して天才的だ、ともはや感心する。

「んで、こっちがそんなことしなきゃなんねぇんだよ!!」

きっと同性であれば胸ぐらを掴むぐらいのことはしていただろう。それを踏みとどまらせるだけの理性はまだ残っているようだった。

「なんでよ、どうせ暇でしょ?」

悪びれる様子も無くそんなことを言うフェリスにいよいよ、丸刈りの男だけでなく、周りも我慢できなくなる。

自分の言う事を聞こうとしない相手に、フェリスも苛立ちを覚えていた。

「はぁ、もういいわ、自分で探すから」

「っておい!!」

横にいるソウの手をつかみ、来たときと同じようにズケズケと進み勝手に校舎に入っていこうとする。

「……なに?」

我が道を行くフェリスの前に男たちが立ち塞がる。

「いきなりに来て、んな勝手させると思うか?」

最もな言い分である。

招かれざる客である相手をもてなすほど、この男たちはお人好しではないらしい。

「特科の新入生のお嬢様には、この場所は似合わないですよ、さっさと引き返したほうが良いんじゃないですか?」

男の中の一人が敵意を剥き出した言葉をフェリスに浴びせる。

「は?意味分かんない。良いからどきなさい。私あんまり気が長いほうじゃないから」

「知ってる」

ソウの心からの言葉にフェリスはキッと睨見つける。

「うちの縄張りで好き勝手はさせねぇよ」

「無理やりにでも通させて貰うけど」

「やってみろよ」

それぞれが、武器のようなものを取り出し、臨戦態勢を整える。

「そう、痛い目見たいわけね」

フェリスは嬉しそうにそう言うと、手を肩の高さまで上げ手の平を相手に向ける。

その行動に男達は警戒し距離を取る。

「いい、判断じゃん」

この時点でどちらの格が上かは、一目瞭然だった。

凶器を構える複数の男相手に引くどころか押している一人の少女。それは異様な光景のように見えるが、この世界では無いことでは無かった。

力の有無が全てを決める。

持つものと、持たざるものの違いだった。

不利を分かっていても引かない男達は勇者か愚者か、ソウには判断がつかなかった。

「せめて準備運動ぐらいさせてね」

フェリスは邪悪に笑っている。

「お前、完全に悪役だからね」

「うっさい!」

一応ソウの言葉に反応するが、目は相手から離さない。

手をそのままの位置でゆっくり反転させ手のひらを上に向ける。

「火傷で済めばいいね」

それが着火の合図だった。

燃え盛る炎に、男達はたじろぐ。

自分たちの結末を薄々理解しながらもそれでも男達は引かなかった。

彼らをそこに留めているのは意地だけだった。

僅かな間、ヤケクソになるしかない男達は、誰の合図もなく飛びかかろうとする。

しかし、


「やめとけ」


男達の後方から静かだが強い声が聞こえる。

その言葉に場は支配された。

フェリスは、その声の主を見定める。

「お出ましね」

そんなフェリスは間違いなく悪役だった。

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