初代靴下編み機はイギリス軍に粉砕された。
よろしくお願いします
わかっております。
「好き」が「上手」とは限りません。
……
私は刺繍が好き。
異世界恋愛もので、貴族の娘が刺繍したハンカチを想いの人にプレゼントする場面があるが、丁寧な刺繍にどれだけ時間がかかるか…とか、紋章の刺繍をそんな短時間で…と刺繍に要する時間と技術向上に気を取られてしまう。
私が初期に刺繍したハリネズミは瀕死のモグラに見えた。
そんな流れで編み物も好きだ。
異世界の物語りでは、刺繍ほど編み物は出てこない。
「想いの人へ靴下を編んでプレゼント」だと、貴族のお話しではないのだろう。
確かに靴下を編むのは貧しい女性の内職だったから、貴族が靴下を編んだらおかしいのかもしれない。
私も靴下を編んでみたが、片手のリストバンドにもならずに終わっている。
……
《 ウィリアム・リーが何故編み機を作ったか。 》
編み物を生業とする好きな女性に見向きもされなかった為、その人の仕事を奪ってやろうと思ったのが動機(←クズ)
…など、諸説あるようです。
明治期には文部省発行の錦絵では上記のクズの話しが取り上げられていますが、せっかくなのでここでは「きっかけは美談」の方を紹介します。
……
16世紀中頃、その頃の手編みは貧しい女性の仕事だった。
イギリスのウィリアム・リーの生活は貧しい。それを編み物の内職で支える妻。
リーは内職する妻の姿を見て考えた。
仕事をもっと楽にしてあげたい…。そうだ!編み機を発明して妻にプレゼントしよう!
編みの機械化を決意する。
(ここで私は思う。リーさんや、逆に妻の仕事を増やしてないかい?と。)
9年に及ぶ研究、改良の末、1598年に世界最初の編み立て機械を完成させる。
意気揚々とエリザベス女王に特許を申請するリー。
女王はこれに対して
「リーよ、あなたのこの発明が、手編みを生業とする人々の仕事をどれだけ奪うことになるか…考えた事がありますか?特許を与える事は出来ません」
と手編みで生計を立てている国民を思いやるような理由を告げた。
だが、しかーし!
「でも…まあ…私が愛用する絹のストッキングが編める機械なら影響は少ないから、そっちを発明したら特許を考えてあげてもいいわよ?」と付け加えた。
エリザベーーース!!
「え?そ…そう?じゃあ…そうする。」
絹のストッキング編み機にチャレンジするリー。
しかしそれを知った手編み業者が「俺達の仕事がなくなるだろう!」と猛反発。
ついには軍隊が出動し、初代編み機を粉砕。
「軍隊ってマジかよ…」ショック過ぎるリー。
リーの心も粉砕される。
そんなリーの元に、フランスのシュリー宰相からお手紙が。
「ボンジュール。君の発明トレビアン。その発明持ってフランスにおいでよ」
リーの発明に興味を持ったシュリー宰相が、リーをフランスへ呼び寄せた。
フランスで編み機の開発を進めるリー。
ようやく国王のアンリ4世にも認められ、特許取得も目前となった1610年。
アンリ4世、暗殺される。
国王の死亡で、またしても特許取得はできなかった。
そして、国王の死の同年、リーも生涯の幕を閉じた。
リー、かわいそうっ!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
……
まあ、その後はリーの弟と弟子らが引き継いでイギリスに戻り、特許をとり産業の発展に貢献するんだけど。
せっかくなら存命中に特許あげたかったよね。
……
日本では、織田、豊臣の時代に渡来した西欧人が手編みの靴下を着用していた事が風俗画に描かれています。
水戸光圀公の遺品にある絹製、綿製の靴下は、現在の編立て技術では作られない精巧な物です。
そして、16世紀半ば…リーが頑張っていた頃と同じ頃から、メリヤス「女利安」「女利夜須」「女利弥寿」と呼ばれるようになり、1804年頃からは、手編みは江戸の浪人や小禄の武士の間で、内職として広く行われるようになりました。
……
リー…動機が動機だけに…(好きな人の仕事を奪ってやろうとか…
あっ!美談の方を紹介したんだった。
私もまた靴下編もうかなぁ…でも、リストバンドを増やして終わりだろうなぁ…
拙い文章、お読み下さりありがとうございました