悪役令嬢になりたーい!!
「私を誰だと思ってるのかしら!!」
「お父様に言いつけてやるわ!!」
「頭が高いわよ! 平伏しなさい!!」
外へ出ればこの三つだけしか言わなかった私は、ついに『悪役令嬢』として輝かしいデビューを飾るときが来たのよ!!
「よく来たアリスよ。このダマァ神殿では誰しもが好きな職業を選ぶことが出来るぞ」
「分かってるわよ。私を誰だと思ってるのかしら!?」
「宜しい。では其方のなりたい職業を聞かせてくれないか」
「頭が高いわよ! 私を『悪役令嬢』にしなさいな!!」
ビシッと指差した先に、不細工な神官の汚い口髭が無様に咲き乱れている。頭はハゲ散らかってるけど、顎は手入れのされていない庭より悲惨だわ……。
「……悪役令嬢は上級職じゃ。悪役令嬢になるためには『インド人』と『ウニ』を極めなくてはならない」
「はぁ!? お父様に言いつけてやるわよ!?」
「何を申しても無理な物は無理であるぞ……」
「分かったわよ!! インド人から始めるから早くしなさい!!」
「うむ。それではインド人の気持ちになって祈りなさい」
汚い神官が謎の棒を振りかざすと、何やら不気味な呪文を唱え始めた。
「うむ。今から其方はインド人じゃ。まずはネパール人から始まり修行が進めばインド人としてマスター出来るであろう」
……このオヤジ〇〇してやろうかしら?
何よネパール人って……!!
* アリスはインド人のタイ人になった! *
「ムキーーーー!!」
必死でスライムを蹴り飛ばし続けたのにインドから離れたじゃないのよ!! あのヤブ神官め!!
「このっ! 喰らいなさい!」
ゴブリンを蹴り飛ばすこと12匹。ようやくその瞬間が来た―――!!
* アリスはインド人のフィリピン人になった! *
「だーかーらー! 何で離れるのよ!!!!」
山積みに倒れるゴブリンはもう蹴る所が残っておらず、体中がボコボコに変形している。次の得物を探さなくては……。
「うりゃー!!」
―――ボギャアァァァ!!
回し蹴りでキメラを豪快に取り落とす。飛ぶ鳥も落とす勢いとは正にこの事だろう。
* アリスはインド人のアニメ大好きになった! *
「こいつ日本人に観光しに行ったわよ!!」
そして目的を忘れひたすらにゴーレム蹴り飛ばし憂さ晴らしをするアリス。蹴られたゴーレムは砕け散り跡形も残らない。
* アリスはインド人のカレー屋のバイトになった! *
「おっ! ようやくカレー臭が漂い始めたわね」
剛腕のサイクロプスの一撃を蹴りで跳ね返すアリス。その筋力はもはや人類を超越し始めていた……。
* アリスはインド人のカレー屋の店長になった! *
「いいわね! マスターまであと一息よ!!」
世界を闇に陥れる魔王の首を蹴り一つでへし折り、アリスは次なるランクへと昇格した。
* アリスはインド人の奇跡のスパイスになった! *
「カレー要素が強まってきたわ! さぁマスターは目の前よ!!」
裏ボスの頭を踵落としで胴体にめり込ませると、ついにアリスはインド人をマスターした!!
* アリスはインド人の国際手配になった! *
「はあぁぁぁ!? さては奇跡のスパイスが麻薬法に引っ掛かったわね!! 全てが台無しよ!!」
怒り心頭でダマァ神殿へと乗り込むと、髭神官がドヤ顔で私を出迎えた。私は早速神官を蹴り殺し、止めに入った衛兵も回し蹴りで真っ二つへとしてやった。もう私を止める者は居ない。
「オホホホホ! これで『悪役令嬢』を名乗っても許されるわね!!」
こうして、私を倒すために現れる勇者を蹴り殺す日々が始まった―――
読んで頂きましてありがとうございました!!
m(_ _)m