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アクロス・ノア 涙が海にとけるまで  作者: フジアキ
第一章 水平線を望む
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第三話

 塩の柱が神湖エルンティカに顕現してから三日が経つ。

 そこには未だ、多くの騎士や魔法使い、神殿関係者が在留していた。彼らは一様に慌ただしく、湖の周りはどこか雑然として、その場が神聖な場所である面影を感じさせなかった。

「これは、神殿の連中はカンカンだろうな」

 その様子を、在留している隊の本部としている天幕の下で眺めていた騎士、ガートルン・ファーリスは溜息交じりにそう吐き捨てた。

 彼の任務は、王女エルノアが執り行った儀式によって顕現した聖剣の回収であった。そのため、経験豊富な魔法使いや、防衛戦が得意な騎士を選別し、特務隊を結成、今回の任務に当たっていた。

 不測の事態が多かった。まず、国が準備をしていた儀式とは別の方法で、エルノアが儀式を初めてしまった。そして、聖剣と共に塩の柱という正体不明の建造物も顕現してしまった。その上、回収予定であった聖剣を塩の柱から引き抜くことができない。

 神殿が今回の儀式に派遣した人員に関してはともかく、ガートルンは自分が選んだ人員に対して、優秀であると信頼を寄せている。故に、どれほどの不測の事態が起ころうと、王より賜ったこの特命を果たせると考えていた。しかし、実際はそれができていない。

 その焦りを誤魔化す様に、ガートルンは口汚く舌打ちをした。

「せめて、神殿の連中がいなければなぁ……」

 そうすれば、もっと手荒な方法で聖剣の回収に当たることができた。聖剣が塩の柱から引き抜けないのなら、塩の柱を何らかの方法で壊してしまえばいい。ガートルンはそう考えていた。しかし、それに待ったをかけたのが神殿だった。

 神殿曰く、塩の柱は神代――つまり、神がこの世界を創った頃に作られた建造物であるとしていた。そんな貴重な史跡を破壊することなどあってはならない。そう言って、塩の柱の損壊を禁じた。

 これが単に軍事的計画であったのなら、神殿の立場は騎士団よりも低い。故に、その発言を突っぱねることができた。しかし、今回の計画の主導は神殿だ。その神殿がそう言えば、騎士団は何も言うことができない。

「連中は、本当に事態を把握できてるのかねぇ」

 そう言って、ガートルンは再び大きな溜息を吐いた。

 戦争が近い。そのことは、エルダフィート王国の民であれば誰もが勘付いていることだった。それに備えて、今回の計画が立案された。つまり、聖剣の回収は急務なのだ。ならば、もはや手段を選んでいる場合ではない。ガートルンはそう考えていた。

「神殿の方々よりも、あなたのほうが現状を把握できていないように思いますが?」

 ガートルンの後ろから、そのような声が聞こえた。自分の意に反する言葉に、思わず眉間に皺を寄せたガートルンは、ゆっくりと声のしたほうへ振り向き、そこにいる人物に驚く。

「なっ、クーラレーン・イゾル!? どうしてあなたがここに……」

 そこにいたのは、ガートルンよりも豪奢な装飾の施された甲冑をまとった美丈夫だった。彼はドクテル・イゾル。ガートルンよりも上位の階級である騎士団長(クーラレーン)の男だ。

「査察でね。第四騎士団の任務には魔法研究所の防衛と協力が含まれている。聖剣回収の計画には、魔法研究所から数名、人員が出ているだろ? 様子を見て来いと、所長に言われてしまってね」

 騎士団長を顎で使うというのは、騎士の身分であるガートルンには想像も及ばないものだった。ガートルンは魔法研究所に関してそこまで詳しい訳ではないが、何でも変人の集いであると噂に聞いたことがある。そこの防衛と、その上協力まで任務に含まれている第四騎士団が、少しだけ憐れに思えてしまった。

「どうやら、状況は芳しくないようだね」

 ドクテルの言葉に、ガートルンは俯く。彼の言葉は事実であるが、そのことを彼に指摘されるのは、ガートルンの誇りが許せなかった。

 ドクテルとガートルンは同年代だ。そうでありながら、ドクテルは騎士団の最上階級である騎士団長(クーラレーン)。ガートルンはその下である騎士長(クレイヴェス)だ。そのことが、ガートルンは気に食わなかった。

 自分が賜った特命を、この男に掻っ攫われてしまうのではないか。ガートルンにはそんな懸念があった。

「神殿の連中がもっと危機感を持っていれば、既に聖剣の回収は済んでいたのです。こちらには、腕利きの騎士も、有能な魔法使いもいます。塩でできた柱を壊し、聖剣を回収することなど容易なのです。それを、連中が邪魔している……っ」

 聖剣が実在した。それだけでも、十分な史跡なのだ。だというのに、一緒に塩の柱が現れた途端、神殿は目の色を輝かせ、欲を掻いた。今は急いで、聖剣の戦術的価値を計らなくてならないというのに。

 そんなガートルンの言葉に、ドクテルは気づかれないように溜息を吐きながら言った。

「クレイヴェス・ファーリス。どうやらあなたは、大きな勘違いをしているようですね」

「……どういうことでしょう」

 ドクテルの言葉に、ガートルンは自分でも声が震えているのがわかった。もしこれが、同階級の人間であったのなら、声を荒らげていたところだろう。それを抑えられただけでも、ガートルンは自分を褒めてやりたい気持ちだった。

 勘違いなどしていない。隣国と戦うには、圧倒的な兵器が必要だ。それが聖剣。それ故に、王は聖剣の回収を計画した。ガートルンはその意図をはっきりと理解していた。そこに勘違いなどが起こり得ない。

「聖剣の価値は、戦術的なものではなく、歴史的なものにあります。聖剣が実在した。その上、神代の史跡まである。これなら間違いなく、我々の正しさは証明できる。我々の信じる神と、刻んだ歴史こそが正しいのだと胸を張れるのです」

 それが、この戦争の火種の正体だ。周辺諸国との宗教的解釈の違い。それが、長いことエルダフィート王国と周辺諸国との間にある諍いだった。

「……しかし、正しいだけで収まる火はありません」

 既に火種は燻っている。それが自然に消えることはなく。誰かが消すしかない。そして消すには、聖剣の戦術的価値に頼らざるを得ない。そうしなくては、結局エルダフィート王国は間違いであったと後世に残されるのだ。

「燃える物がなくなれば、それ以上燃え広がることもないでしょう」

 これ以上の議論は不毛だとガートルンは判断した。自分とドクテルとでは、致命的に考えが合わない。何より、この男も危機感を抱いていない、神殿の連中と同類だった。

(そう言うものじゃないんだ、戦争というのは)

 人の心というのは、例え薪が無くても燃え上がってしまう。目の前に明確な敵が存在しているだけで、炎は強くなるのだ。

 それを、この男や神殿は理解していない。故に、そんな呑気なことが言えるのだ。

 争いの種がある時点で、既に戦いは始まっている。ならば、その備えを万端とするのは、国の兵力として、当然の務めなのだ。

 そのことを大勢に気付かせる。そのために、まずはこの聖剣を回収しなくてはならない。

 視線をドクテルから塩の柱へと戻したガートルンは、その頂点に突き刺さる聖剣の輝きを見つめた。


    *


 晴也であれば聖剣を引き抜けるかもしれない。そんな望みを見出したエルノアの行動は早かった。

 身に纏っていた礼服から白襟と黒履きに素早く着替え、事情を説明するために、実父である国王、エルガンダの元へと向かっていた。

 王の執務室の戸は、エルノアの居室や謁見の間に比べれば、非常に質素なつくりになっている。木製の簡素な扉。そこが王の執務室でないと知らなければ、他の部屋と見分けはつかないだろう。

 呼吸を整え、エルノアは扉を叩く。中から「入れ」と父の厳めしい声が聞こえ、エルノアは扉を開き、中へと入る。

「失礼します」

 そこにいたのは、白髪の混じり始めた金髪と、鋭い眼光をした壮年の男性だった。エルノアの父、エルダフィート王国の王、エルガンダ・エルダフィートだ。

「ご機嫌よう、お姉さま。目が覚めたのね」

 そして、その隣にいるのはエルノアの妹、エルダフィート王国第二王女であるエルメリアだった。

「エルメリア、あなたがどうして……」

「お父さまの側に娘のアタシがいるのはおかしいかしら?」

「お父さまは今、執務中ですよ」

「そんなこと、お父さまがお許しになれば些細な問題でしょう?」

 しなだれかかるようにエルメリアは執務中の父の肩に腕を回した。エルノアは妹のこういうとところが嫌いだった。公私混同を是としたような態度。(おうじょ)(しょうじょ)を使い分けているエルノアには、到底理解できぬ所業であった。

 そんなのでいいのか、とエルノアはエルガンダに視線を向ける。すると、エルガンダは深い溜息を吐き、自らの肩に腕を回すエルメリアの腕を解いた。

「エルメリアよ、私は確かに、お前がここにいる事を許可した。しかし、仕事の邪魔を許した覚えはないぞ」

 エルガンダの鋭い眼光が、エルメリアに突き刺さる。その鋭さに貫かれたエルメリアは、思わずあとずさりながら、引き攣った表情を取り繕うように笑みを浮かべた。

「じゃ、邪魔なんてしてないわ? ただアタシは、お姉さまの質問に答えただけよ」

 睨みつけるような眼光に、僅かに声を震わせながらそう答えたエルメリアを見て、エルガンダは一度瞼を閉じ、腰かけている椅子の背もたれに身を預けた。

 目を開くと、次はその鋭い眼光がエルノアに向けられ、思わず背筋が伸びる思いをする。

「エルノアは何の用だ。見ての通り私は執務中だ。用があるのなら、手短に頼む」

 娘を持つ父親としてはあまりにも冷たく、家族に対して距離のある物言いであった。その姿勢を、王女であるエルノアは尊敬していた。自分の人間的な感慨を切り離し、国のために身をくべた者にしか醸すことのできないその圧を、エルノアは見習わなくてはならない。

 きっとこの王を前に、自分は娘にはなれない。

 改めてそんな諦観を得たエルノアは、僅かに心に染み出た少女エルノアの感慨を切り離し、王女として国王エルガンダに口を開いた

「現在まで回収に至っていない聖剣を、回収する術があるかもしれません」

 その言葉に、エルガンダの表情が動く。片方の眉を持ち上げ、その話題に関心があるように相手に印象付ける。彼はエルノアの言葉に何か言うことはなく、鋭い視線が続けろと訴えた。

「私が行った儀式により、神湖エルンティカに聖剣と塩の柱が顕現したと報告を受けました。そして、それらと共に、一人の男が発見されています」

「報告は受けている。城の地下牢に幽閉している賊だな」

「はい。しかし、彼は賊ではないと私は考えています」

 エルノアの意見に、エルガンダは関心を態度に表した。背もたれに預けていた体を起こし、鼻を鳴らしてエルノアの言葉を待った。

 呼吸を整えたエルノアは、晴也のことを説明し始める。

「彼は神湖エルンティカに顕現した聖剣や塩の柱と共に現れたものと私は考えています」

「故に捕らえた。賊として」

「ええ。ですが、ここでは現れたという言葉の定義が異なるのです」

 そこまで言うと、エルガンダの慧眼はエルノアの意図を読み解いた。表情に変化はない。しかし、既に彼の視線はエルノアではなく、自らの思考へと向けられ、自然と意識はそちらへと集中していた。

「えっ? つまり、どういうことなの、お姉さま。その賊は一体何なの?」

 事態を把握できていないエルメリアは、何時までも結論が言われないまま生まれた沈黙をそう破った。そんな妹の様子を見たエルノアは、自分で少し考えろと言わんばかりに、溜息交じりに答えた。

「つまり彼は顕現したの。聖剣と、塩の柱と共に」

 そう告げると、エルメリアは目を見開き、口を開けて驚いてみせた。そのだらしない顔は、執務中の国王の前ではどうなのかと思いながら、そのことには触れず、再びエルノアはエルガンダに意識を向けた。

「それで、お前はどうしたいのだ」

 意識を自らの思考から引き揚げたエルガンダのその問いに、エルノアは答えた。

「私は聖剣の回収のために、賊とされている男――シオタ・ハルヤ様を釈放し、再びエルンティカに案内しようと考えています」

「……なるほどな」

 エルノアの言葉に、エルガンダは納得したようにそう口にして、再び背もたれに寄りかかった。

 国として、聖剣の回収は急務だった。神殿側の言い分もわかるし、戦争の由来を考えれば、その判断は正しいだろう。しかし、戦争というのは思想だけで行われるものではない。国を預かる者として、エルガンダはそれを実感していた。

 手をこまねいている聖剣の回収。それができる可能性があるのなら、今はそれに縋りたい思いだった。

「いいだろう。その者の身柄を一時解放し、エルンティカにて聖剣回収作業に当たらせろ。ただし、常に騎士に見張らせろ。その出自が奇妙であろうと、賊である可能性は捨てきれない。無罪の可能性が得られない以上、最低限の措置だ」

「かしこまりました。では、直ちに準備いたします」

 そう告げて頭を下げると、エルノアはエルガンダの執務室を後にしようと部屋の扉の前まで移動する。

「エルノア」

 そんな彼女を呼び止めたエルガンダは、言い辛そうに一度視線をエルノアから逸らした。少し間を開けて再びエルノアへと視線を向けると、彼はこう告げた。

「病み上がりだ、あまり無理はするな」

 それを父親の優しさととるか、部下への労りととるか、一瞬エルノアは戸惑った。しかし、どちらにしろ、エルガンダがエルノアの身を案じたという事実には変わらない。それを受け止め、エルノアは笑みを浮かべた。

「はい。それでは、失礼いたします」

 執務室を出たエルノアは、はしたないとわかっていながら駆け足で自分の私室へと戻った。

 正直な話、申し訳なさがエルノアにはあった。何せ全て、こちらの都合を異世界人である晴也に押し付けているのだ。晴也の身柄を保護するには、晴也自身に価値がなくてはいけないとエルノアは話した。しかし、そんなものはエルダフィートの都合でしかなく、異世界人であるという晴也が従う理由はないのだ。その上、その稀有な身の上を利用して、聖剣を回収しようとしている。

 無関係な人を、こちら側の都合で利用している。その事実は、エルノアには耐え難く飲み込み難いものであった。

 部屋に戻ったら、その事実をしかと説明しなくてはならない。これは彼に協力してもらう上では、必要最低限の義務と、そのような都合を押し付けてしまったことへの礼儀だ。

 部屋の前まで戻ると、中が騒がしいように思えた。考えてみれば、晴也を地下牢へ幽閉したのは、彼を最初に見つけたジルバなのだろう。その二人の間柄が険悪であることなど、考えなくともわかる。ジルバはともかく、晴也の心は浮つくだろう。

 エルノアは急いで自分の部屋の中へ入った。部屋の中では、晴也とジルバが口喧嘩を繰り広げていた。

「――だから、俺は何もしてないって言ってるだろッ!」

 最初に聞いたのは、晴也のそんな怒号だった。

 いきなりなんのことかとエルノアは慌てて口を挟もうとしたが、それよりも先にジルバが応えた。

「しかし、それを証明する術はない。今のところ、貴様が口にした全てを証明することができていないのだ。そんな人間を信じろなどと、よく言えたものだ」

 明確な挑発であった。ジルバがそこまで他人に対して強い物言いをしたのを初めて見たエルノアは、割って入ろうという考えが一瞬だけ頭の中から飛んでしまった。

「それは……そうだけど。だからって、俺が聖剣を抜けないようにしたなんて、言いがかりにも程があるだろ!?」

「現状はお前の都合のいいように動いている。抜けない聖剣に、異世界人。その二つを結び付け、エルノア様をかどわかし、聖剣を我が物にしようとしている。それを疑わぬ訳にはいかない」

 些かジルバのその物言いに、エルノアも腹が立った。彼女の強い物言いに呆然としていたエルノアは、二人の間に入り、ジルバを睨みつけた。

「ジルバ、何故そのようなことを言うのです」

 紺碧の双眸に睨まれたジルバは、一瞬だけたじろぐと、すぐさま口を開いた。

「おかしいとは思いませんか? 聖剣が抜けない現状や、あの塩の柱。それが神の思し召しであるのなら、我々は納得できる。神が異世界から人を招いたとしても、まだ納得できます。しかし、なら何故そのような男なのです。そのような、なんの変哲もない男を、どうして神はこの世に招いたのか。御使いとして神に見初められたのであれば、もっと相応の人間であるべきです」

 その疑念は確かにあった。晴也がこの世界に招かれた原因が、エルノアの行った儀式にあるとして、その儀式で呼ばれたにしては、普通の少年が過ぎると。

「そんな勝手な印象を俺に押し付けるなよ! そりゃ、俺のことを信用できないのはわかるけど……だからって、俺のせいで聖剣が抜けないなんて言う理由にはならないだろ!」

「その通りです。確かにシオタ様の身の上は未だ不明な点が多いです。しかし、だからと言って、聖剣が抜けない理由をシオタ様のせいにするのは、それ以上に根拠がありません」

 エルノアの言葉に、ジルバはバツが悪そうに視線を逸らした。

 彼女がここまで熱を上げるというのは珍しかった。普段は極めて冷静であろうとする彼女が、意図して相手を怒らせたり、陥れたりするようなことを言っている事実が、エルノアは信じられなかった。

 それだけ、晴也を警戒しているという証左か、あるいはもっと別の何かが彼女から冷静さを奪っているのか。どちらにしろ、今のジルバは、普段と様子が違うように思えた。

「……ともかく、今は喧嘩をしている場合ではありません。お父さまから許可を得ました。これからすぐにエルンティカに向かいます。ジルバは装備を整え、こちらに戻ってきてください」

 嘆息を混じらせながら言ったエルノアの言葉に、ジルバは俯きがちに答える。

「かしこまりました」

 声はいつも通り平静だったが、長く共に過ごしているエルノアにはわかった。彼女の内心に怒りか悔しさか、そう言った感情が酷く波立っているのが。

 エルノアの言葉通り、ジルバは装備を整えるために一度部屋の外へと出た。ジルバの姿がなくなって、エルノアは何度目かの溜息を吐いた。

「その、すみません……」

 そんなエルノアの様子を見て、晴也が申し訳なさそうに頭を下げた。それを見てエルノアは、慌てて口を開いた。

「いえ、シオタ様は悪くありません。むしろ、こちらこそ申し訳ありませんでした。普段はあんな憶測で物を言うような子じゃないんですけど……」

 一体何が、ジルバをあのようにしているのか。少しだけ心配になる。しかし、今は身内のことよりも国のこと、ひいては晴也のことだった。この問題を片づけないことには、ジルバの問題に手を伸ばすことはできない。

 前途は多難だ。その事実に、また溜息が出そうになったのを、エルノアは必死に堪えた。



三話を読んでいただき、ありがとうございます。


次話もよろしくお願いします。

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