第十七話
晴也とエルノアが監視塔から消えた。それが監視塔全体に伝わり、中は騒然としていた。
「やってくれたわね、お姉さま」
ジルバの隣にいるエルメリアは、普段の無邪気な様子とは打って変わってどこか陰りを表情に見せていた。
それが彼女の素なのかまではジルバにはわからない。しかし、それを見れば単に無邪気な王族という評価は過少であると言わざるを得ない。
「ジルバ、これはあなたの失態です。近衛騎士であるのなら、主に従うだけではなく、間違いを咎めるくらいでなければなりません。それが忠義です」
ニコニコと笑みを浮かべ、どこか先生面をしながらシャーンがそう責める。その表情とは裏腹に、彼女の言葉からは鋭い冷たさが滲んでいた。
「普段はそうしています。しかし、今回はどうやら、あなた方第二騎士団が勝手をしたようでしたので」
「それは……」
ジルバの意趣返しにシャーンは口籠る。彼らがエルメリアだけではなく、エルノアにもしっかり報告していれば、こんなことにはならなかっただろう。ジルバから見て、エルノアはエルメリアに対してどこか劣等感のようなものを抱いているように見えた。だからこそ、一つ歳下のジルバを妹のように接するのだろう。実の妹に感じる劣等感を感じず、且つ従順であるために。
それが歪であることなどジルバとて理解している。しかし、それを指摘してしまえば、果たしてエルノアは、どこで貯めた鬱憤を晴らせばいいのか。故にジルバは、不本意ではあるがエルノアにとっての妹分という位置に甘んじていた。
しかし、その役目も終わりを迎えたと考えた。晴也の存在だ。ジルバとて彼に対して思うところはある。今でこそ聖剣を引き抜き、勇者という地位にいるが、それでも突然現れた凡骨であることには変わりない。そんな男と、一国の王女であるエルノアとを近づけさせるのは認めがたい。しかし、彼はエルノアの真っ当な鬱憤のはけ口になるともジルバは思っていた。
同年代で、王族に対しての畏敬を持たない相手。エルノアを少女として見ているあの男でなければ、エルノアは真っ当な少女ではいられない。非常に不本意ではあるが、ジルバは晴也にその役目を押し付けようとしていた。
それがまさか、このような大事になるとは思いもしなかったが。
「自分の部隊に周囲を散策させているが、この辺りのことならここの連中のほうが迅速だろう。その辺りも織り込み済みなのだろうな、エルノア殿下は」
苦い顔をしながらグライダムが零す。要所要人の警護を引き受ける第二騎士団。それを率いるグライダムがいながら、守るべき王女と勇者の持った聖剣を見失うというのは、例えどのような理由があろうと失態だ。その失態を返上するには、自分達の手で二人を見つけなくてはならない。しかし、第二とは別に動いている監視塔の騎士達のほうがこの辺りの地理に明るい。二人が無事に見つかるだけでも十分だが、監視塔の騎士達が発見すれば、第二騎士団としては苦しい。職務怠慢などと査問会議や定例会議などで指摘されれば、言い逃れはできない。
「全く。お姉さまは何を考えてるんだか。今はそんなことしてる暇ないのに」
どこか子供っぽくそう言ったエルメリアを見て、グライダムは呆れる。
彼女には才能がある。大臣から彼女を次の王に推す声が上がるのも理解できる。しかし、その慧眼はエルガンダに比べれば未だ幼く、また無邪気な稚拙さが、容易に人の心を崩す。
グライダムとて、今回の件はエルメリアの一言から起こっていることなど理解している。しかし、当の本人がそれを理解していないのだから性質が悪い。それを言ってもいいが、それなら彼女の近衛候補であるシャーンが口にするべきだろう。
「……しかし、何を目的で外に出たのか」
エルノアが優秀であることを知っているだけに、それだけがグライダムにはわからなかった。このような悪手を断行するなど、エルノアがすることは思えなかったのだ。
あるいは勇者が、精神的な弱みに付け込んだのか。などと考えながら、グライダムはこの問題と、監視塔騎士の問題について頭を悩ませた。
*
暗く深い洞窟の先に、外から差し込む眩い光を見た。
長く深い洞窟だった。絶えず緩やかな傾斜のある洞窟は、歩くたびに疲れが蓄積され、いつの間にか晴也の足腰は震えるようになっていた。それでも、その光を見た瞬間、そんな疲れは吹き飛んだように、エルノアと二人で外へと駆けだしていた。
洞窟の外へと足を踏み出した瞬間、二人を歓迎するように優しい風が包み込む。深い緑の臭いは、都会育ちの晴也には馴染みのないものだが、それでも岩や土と言ったざらついた臭いよりも瑞々しく、なめらかなそれを、思いっきり吸い込んだ。
「やっと出られた!」
思わずそう叫んだ。叫んでしまうのも無理はなかった。何せこの洞窟、避難用に掘られたであろうに、迷路のように無数に通路が枝分かれしていたのだ。時に行き止まり、時に地盤が崩れて先に進めず、時に地下水に沈没。何度も折り返しては進み、折り返しては進みを繰り返し、ようやく外に出ることができたのだ。
監視塔を出たときは昼時を少し過ぎた頃だ。それが今や、空が夕焼けに暮れる頃。東の空は既に夜が顔を見せている。
「もうじき夜ですね。早く休めるところを探さなくては」
表情に疲れを滲ませるエルノアだが、空を見てすぐそう口にした。いくらスーリロム領が他に比べて治安が良いと言っても、無防備であれば魔が差すこともある。何より、二人の装備は野宿ができるようなものではない。急いで、人里を探さなくてはならなかった。
エルノアの誤算は、脱出経路である隠し通路が、あそこまで入り組んでいたことだった。本来はしっかりと道順を理解したうえで進むような場所を、二人は何ら知識もなく進んでいたのだ。
「休めるところっていっても、そんなのこの辺にあるの?」
「監視塔の近くには、幾つか人里があります。……ただ、ここがどの辺りなのかわからないので、探すのは困難かと」
冷静に考えれば、それくらいのことは考えついていた。それでも、冷静でなかったエルノアは、とにかく行動しなくてはいけないという考えが先行して、無謀のまま動いてしまった。これはそのツケだった。
「んー、でもこの洞窟って監視塔に来てた偉い人を逃がすための物なんだろ? なら、一時的に身を隠すような場所があってもおかしくはないと思うけど」
「どうでしょう? 用意はしているかもしれませんけど、私達にはそれがどこにあるのかも……」
「ああ、時間もそんなにないし」
もう少し明るい時間帯であれば、周辺を散策しても良かった。しかし、本格的に夜になれば、明かりのない森の中での行動など自殺行為だ。
「でも、やっぱり少し移動しよう。ずっとここにいたら、騎士達に追いつかれるかも」
「……そうですね。でも、注意して進みましょう。森は獣の領域です。人の手が入ってないともなれば、それはより顕著でしょう」
エルノアの言葉に頷き、晴也は森の中を歩き始める。
夕焼けの空から差し込む明かりは微々あるもので、森の中は想像以上に暗い。腰のあたりにまで伸びた草が行く手を阻み、見えない木の根が足を引っかけ、ぬかるんだ土が足を滑らせる。洞窟の延々と続く傾斜のほうがまだ楽だと思えるくらいに、森の中は歩き難かった。それ以上に、ゆっくりと日が沈み、周りが暗くなっていくことが恐ろしかった。
そんな恐怖から逃れるように、歩く早さが上がっていく。それが悪手であるとどこかでわかっていたが、それでも早く先に進みたかった。
次第に周囲が夜の闇に包まれる。暗闇に慣れた晴也の目でも、森を見渡すことができなくなり、前へ進むことも困難になる。
「フィグマ」
晴也の背後で、エルノアが魔法の言葉を呟く。すると、彼女の掌の上に炎が起こり、その明かりが周囲の闇を散らす。その明かりに、思わず心が安堵を覚えた。
「ありがとう。でも、森の中で炎なんて使ってよかったの?」
「危険なのであまり使いたくはありませんけど、このまま進むのは流石に」
ようは何を重視するかだ。暗闇の中を進むのが不可能なのだから、少し危険でも、炎を明かりに先に進むしかない。
改めて二人は暗闇の中を歩き始める。そうして歩いて行くと、腰のあたりにまで伸びていた草が、何時しか膝下の当たりにまで縮んでいた。
伸びていた草が縮み、少し歩きやすくなり、二人の歩幅は少しだけ大きくなる。しかし、その歩みも止まらざるを得なくなった。
「エルノアさん……」
「はい。何かいますね」
晴也がそれに気づいたのは偶然だった。草が腰のあたりにまで伸びていた頃は、茂みの葉擦れの音が近くてわかり難かったが、足元にまで下がって今ならわかる。自分達から少し遠いところで、何かが動いていると。
獣か、あるいは夜盗か。それとも追ってきた騎士か。どちらにしろ、晴也は明確な敵の気配というものに、冷や汗が流れた。
腰に佩いた聖剣の柄を握る。戦いになるかもしれない。そうなれば、聖剣を初めて実際に使うことになる。
果たして、自分にこの剣を使いこなすことができるのだろうか。ただでさえ、ジルバに一度たりとも勝てたことがないのに。
次第に音が近づいてくる。しかも、音源は一つだけじゃない。二つ三つ――複数の何かが、晴也達の周囲を取り囲んでいた。近づいて来れば晴也とてそれが人の気配がないことに気づく。つまり、茂みに隠れているのは獣だ。
実戦の最初の相手が人間でないことに安堵し、晴也は聖剣を鞘から引き抜く。木剣とは違う重さに緊張感を覚えながら、エルノアを庇うように構える。
警戒しているのか、獣はジリジリと近づいて来るが、いきなり襲い掛かるようなことはしてこなかった。それが不気味だった。何より、獣の姿が見えないことが一番怖い。一体どこに警戒すればいいのか、晴也には皆目見当もつかなかった。
しばらくすると、再び獣が動く葉擦れの音が近づいてくる。それも、物凄い早さで。これは、駆け寄っている。そう感じた晴也は、音のするほうに体を向ける。
茂みからとびかかって来たのは、瞳を赤く輝かせる狼のような獣だった。ただ、晴也が想像していたよりも大柄で、暗闇の中で光る赤い瞳はどこか鉱物の無機的な質感をしている。
獣は鋭い牙を剥きながら飛び掛かってくる。それをどうにか聖剣で防ぎ、獣が着地する瞬間を狙って聖剣を振り下ろす。しかし、既にその場に獣はおらず、聖剣は空ぶっただけだった。
「ヴォンター! 神代からいたとされる獣! まさか、ここが彼らの棲家だったなんて」
赤目の獣の姿を見たエルノアが声を荒らげる。晴也にはそのヴォンターという獣がどれほど危険なのかわからなかったが、飛び掛かって来た力はそこまで強くなかった。
冷静に対処すれば勝てる。そんな余裕が晴也の心に生まれる。
飛び掛かったヴォンターへ剣を振るったためか、周囲から唸り声のような物が響く。どうやら完全に敵視されたようだった。
「エルノアさん、その炎の魔法以外に、どんなのが使える?」
一匹や二匹なら、まだ何とかなる。しかし、二人を取り囲んでいるヴォンターは明らかにそれ以上の数がいる。となると、身を守るためにエルノアにも魔法を使って攻撃して貰わなくてはならない。
「私は炎と風の魔法が使えます。あと、幻惑や眠りの魔法も少し使えます」
「それじゃあ、自分の身を守るように魔法を使って。多分、俺だけじゃ庇い切れない」
ここは格好つけて守ってみせると言いたいところだったが、それができるほどの心の余裕を、晴也は取り戻せていなかった。初めての実戦。自分に牙を剥く敵の存在。聖剣の重さが、晴也のか細い冷静さを鋭くさせ、また身を削いでいった。
右から葉擦れの音が近づいてくる。すぐにそちらへ体を向け、茂みの中から飛び掛かって来たヴォンターに剣を振るう。刃をまっすぐ立てられなかったのか、振るった聖剣はヴォンターを切り裂くことはなく、鈍く重い衝撃が伝わり、勢いのままのヴォンターの体を地面に叩きつけた。
生々しい感触だった。聖剣の硬い刀身から伝わってくる、ヴォンターの頭蓋。それが砕ける音まで聞こえるほどに。
思わぬ衝撃に晴也は後ずさる。しかし、そんな晴也を狙っていたかのように、背後から別のヴォンターが飛び掛かって来た。
「シオタ様!」
それを見たエルノアが、すぐさま左手をヴォンターに向ける。
「――エマータッ!」
風を起こす魔法の言葉。それを発すると、エルノアの左手に風が集う。それを球でも投げるように、エルノアは腕を振るう。すると、左手に集った風は弾丸のように飛び、晴也を背後から襲い掛かったヴォンターの横っ腹に突き刺さる。
ヴォンターの短い悲鳴が耳元で響き、晴也は吹き飛んだヴォンターを見る。魔法が強力だったのか、魔法が衝突した場所の肉が抉れているのが見えた。思わず顔を顰めながら、晴也は次のヴォンターに意識を集中する。
再び飛び掛かってくるヴォンター。同じように聖剣を振るうが、まるでそれを予期していたかのように、そのヴォンターは聖剣の刀身に噛みついて勢いを殺す。
「こいつッ」
振り払おうとするが、その隙に別のヴォンターがその鋭い爪を立て、晴也へと飛び掛かる。
「――っ」
頭巾越しから皮膚に届き、肉を割く爪。裂創はジワリと血を滲ませ、痺れるような痛みが腕を重く感じさせる。
聖剣に噛みつくヴォンターの胴体を足蹴りし、慌てて距離を取る。しかし、茂みに隠れた木の根に足を引っかけ、そのまま尻餅をついてしまう。
「クソっ、何だよ……ッ」
慌てて起き上がろうとするが、そんな晴也を見下ろすように、茂みから不気味に輝く赤い瞳を向けるヴォンターが見下ろしていた。
心臓から冷たい何かが、背筋へ駆けたように身が竦んだ。それはすぐに全身を巡り、寒気のように体が震え出した。
低く唸るヴォンターの鋭い牙の隙間から涎が垂れている。そこから感じられる敵意や殺意以上の飢餓感――食欲が、晴也に死以上に恐ろしい想像をさせる。このままでは生きたまま食われる。それはきっと、左腕にできた裂創以上の苦痛だ。それに溺れれば、自分はその手から容易に命を捨ててしまうかもしれない。
「来るなッ!」
慌てて聖剣を振るう。適当に振るわれた聖剣がヴォンターに届くことはなく、手からは聖剣がすっぽ抜けてしまう。立ち上がろうとするが、それよりも早くヴォンターが晴也へと飛び掛かる。
「おやめなさい! 獣風情が、シオタ様に牙を剥くとは!」
晴也に飛び掛かったヴォンターを風の魔法で吹き飛ばしながら、エルノアが晴也を庇うように立ち、風の魔法で周囲を一掃する。叩きつけるような暴風に枝葉が折れ、ヴォンターの何匹かの陰が吹き飛ばされていた。
強烈な魔法だ。それこそ、人の身には余る超常に、晴也は思わず力が抜けてしまった。
これほどの力を、この世界の人は振るうことができる。それは想像していたことだが、実際に見ると、それが如何に異常なことなのか際立つ。個人の力で、生き物を吹き飛ばすほどの風を起こすなど、それは人の業ではない。
こんな力を有している人達が、救国に頼る聖剣。兵器としての聖剣に求められる力の高さに、晴也は思わず愕然としてしまう。
「シオタ様、大丈夫ですか」
慌てた様子でエルノアがそう訊ねる。差し出される手を取りながら、晴也は立ち上がる。
守るはずが守られてしまった。その事実がまた、晴也を落ち込ませた。自分に大した力がないことなど重々承知していたはずだが、それでもこうなるはずではなかったのだ。少なくとも一方的に助けられるようなことになるはずがなかった。しかし、現実として晴也は何もすることができず、エルノアに助けられただけ。自分の力量という現実を見誤っていた。
「ごめん、エルノアさん。助けてもらっちゃって」
「いいえ、シオタ様がいてくださったから、私は冷静に魔法を使うことができたのです。私こそすみません、もっと魔法を上手く使えていれば、シオタ様が怪我をすることもなかったのに」
気を遣われているのだとすぐに理解することができた。どう考えても、剣を持った人間が、丸腰の人間に庇われてはいけない。そんなこと素人でもわかる。だというのに、晴也は尻餅をつき、でたらめに聖剣を振るって、あまつさえ聖剣を手放してしまっている。無様と言わざるを得ない体たらくだ。
放り投げてしまった聖剣が落ちた茂みを掻き分けて再びそれを拾う。次第に感覚を奪っていく左腕の痛みを耐えながら、聖剣をどうにか鞘に納める。
聖剣の力を引き出せないどころか、ただ戦うことすらできないとは。果たして自分は、本当に勇者なのだろうか。本当にこの世界に来るに足る人間なのだろうか。エルノアの意図しないものであったとしても、晴也が選ばれたのは偶然とは言い難い。神覧巡り。神が見ている星の位置。その力を使ったのなら、晴也がこの世界に来たのには、神の意思とやらが関わっているのだろう。
神が選んだ人間。そう自らを慰むこともできるが、それができるほど現実を知らない訳じゃない。
「――シオタ様っ、後ろ!」
聖剣を鞘に納めた晴也に、エルノアが悲鳴にも似た声を上げた。声に従って後ろを見ると、夜の影よりも暗い獣の陰が、晴也の覆いかぶさるように牙を剥いていた。
これは不味い。再び冷たい何かが全身に駆け巡る。慌てて聖剣の柄に手をあてがうが、引き抜くよりも早く、ヴォンターの牙が晴也の肉を抉る。
ここまでか。痛みに耐えるように晴也は目を瞑る。
瞬間、晴也の横を何かが通り過ぎる。目の前で何かが砕けるような重い音。何かが横切った勢いで乱れる空気と、顔に叩きつけられる欠片のような硬い何か。目の前を見ると、自分に飛び掛かっていたヴォンターは、すぐ横の木に縫い付けられるようにして絶命していた。
「これは――矢?」
ヴォンターを木に縫い付けていたのは矢だった。けれど、ただの矢ではないだろう。普通ならば、鏃が肉を貫通する程度しか勢いはない。しかし、この矢は飛び掛かったヴォンターの貫通し、そのまま木の幹を抉って突き刺さっている。ただならぬ威力。明らかに超常の力を感じ取った晴也は、矢が飛んできたほうを見る。
「あんたら、こんな時間に何をしている」
男の声が響いた。夜をまとったような人影が揺らめく炎の明かりに浮き上がっている。エルノアが炎の明かりを強めると、そこにいるのが弓に矢を番えた男であることがわかった。
「ここは俺達の縄張りだ。密漁者なら、お前らの首を射抜いてやる」
「わ、我々はこの辺りを旅しているのです! しかし、道に迷ってしまい、その上ヴォンターにも襲われ、仕方なく応戦しました。決して、獣を狩り商うつもりはなかったのです!」
慌ててエルノアが男にそう弁明をする。炎で映し出される男の瞳がエルノアのほうを向く。炎に映し出される瞳は揺れ動きながらジッとエルノアを見つめ、そして瞼を閉じると、番えていた矢を離した。
「迷子なら助けてやる。流石に、この森の中で放置するような外道ではない」
そう言うと男は「着いてこい」とだけ言い、暗い森の中を舗装された道のように早々と歩いて行く。
突如現れた男の言葉に、晴也とエルノアは顔を見合わせる。そして、男を見失わないように森を進み始めた。
第十七話を読んでいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いします。




