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アクロス・ノア 涙が海にとけるまで  作者: フジアキ
第二章 そして錨が上がる
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第十三話

 その日、聖剣の鞘が完成した。そう報告を受けた晴也は、仕上がった鞘を見に向かっていた。

 登城したダルディンが案内された応接室の前で止まる。晴也は呼吸を整え、静かに扉を叩いた。

「どうぞ」と中からエルノアの声が聞こえた。どうやら、既にエルノアが来ているようだ。

 扉を開けて、部屋の中に入る。そんな晴也の顔を見て、ダルディンが表情をほころばせた。

「勇者様、おはようございます」

「おはようございます、ダルディンさん」

 そう挨拶をするとダルディンは、布にくるみ椅子に立てかけていた物を手に取った。

 聖水に浸した布だろう。それにくるんでいる物と言えば、聖剣以外に他ならない。

「聖剣の鞘が完成しました。早速、ご覧になりますか?」

 ダルディンのその言葉に、晴也は首を縦に振った。すると彼は、聖剣をくるんでいる布を丁寧に剥がしていく。

 中から出てきたのは、銀細工が施された青い鞘に収まった聖剣だった。

 それを見て、思わず言葉をなくす。上等な物ができるとは思っていた。しかし、晴也が想像していた以上にそれは、精緻で綺麗な物だった。

「以前お渡しした青い鞘が勇者様にとても似合ってらっしゃったので、鞘は青くいたしました。聖剣に相応しい宝飾を施そうとも思ったのですが、如何なる宝石の輝きも、聖剣が発する太陽の如き輝きの美しさには劣ると考え、より聖剣を引き立て、かつそれそのものも聖剣とは別種の美しさを引き出すため、銀の細工をさせていただきました。……お気に召したでしょうか?」

 ダルディンから聖剣を受け取った晴也は、自分の手元で見て、改めてその銀細工の精緻さに驚く。鞘の中心には何かの文様のようなものを施し、そこから鞘の両端へと銀を伸ばし、剣を入れる口の部分は縁取りするように銀をあしらい、切っ先部分である鐺は、細かい網目状になっている。そんな銀もただ施されているだけではなく、所々がねじれているように見せたり、何かの鱗のように見せたりしていて、ただ見ているだけでも飽きないものだった。

「す、すごいですね。鞘にここまで……」

 晴也の印象では、鞘なんて剣をしまうためのケースでしかない。それにここまで細やかな装飾を施すというのは、なんとも勿体なく思えてしまう。そんな晴也の考えに、ダルディンが首を振った。

「鞘とは剣にとって衣服の一つです。単に剣をしまうだけであればもっと簡素なもので良いでしょう。しかし、その剣が上等であると示すには、鞘も上等であるべきなのです」

 性格が良くとも、衣服がだらしなくては印象に悪いということだろうか。確かにその通りかもしれないが、むしろ剣が良いものであると誇張するのは危険なのではないかとも晴也は思った。しかし、ダルディンなりの考え方を否定する必要もないと、晴也はその疑問を呑んだ。

「ありがとうございます、ダルディンさん」

 晴也が頭を下げると、ダルディンが首を横に振った。

「いえ、自分も聖剣の鞘を仕立てることができて光栄でした」

 そう口にして、ダルディンが礼を言った。その様子を見て、この人は本当に職人なのだと感じた。素晴らしいものに相応しいものを作る仕事ができた。その機会があっただけでも、彼にとっては幸福だったのだろう。あるいは、職人にとって今回の仕事は、お金を積んででもやりたいことなのかもしれない。

「こちらからもお礼を言います。ありがとうございました」

 そう言って頭を下げたのはエルノアだった。彼女のその姿を見て、ダルディンが慌てたように口を開く。

「あ、頭をお上げください、殿下。エルダフィートの民であれば、王族の命には絶対遵守。自分は当然のことをしたまでですから」

「それでも、です。これほどの物を仕立ててくれたことに、王族としても、私個人としても礼を言いたいのです」

「……」

 そう言われれば、ダルディンとて頭を下げるなとは言えなかった。そんな戸惑いが表情に現れていた、晴也は思わず笑みを浮かべてしまった。


 ダルディンが城を後にして、晴也達はすぐに次の行動へと移った。聖剣を魔法研究所へ移送することだった。

「そう言えば、なんで鞘の完成を待ったの?」

 廊下を歩きながら、晴也がエルノアにそう訊ねた。

 戦争が起こるかもしれない。そう囁かれている現状だ。そんな中、呑気に聖剣の鞘を仕立て、その完成まで待ったというのが、晴也には意外でならなかった。

 晴也の質問に対して、エルノアは一度立ち止まり答えた。

「そうですね。これは、一度試したほうが早いでしょう。シオタ様、一度聖剣を鞘ごと私に預けてくださいませんか?」

「えっ、でも……」

「いいから」

 聖剣は晴也以外には触れることもできない。それを知っているはずのエルノアがそう言ってきて、晴也は渋々と留め紐に結んだ留め具で固定した聖剣を鞘ごと引き抜き、恐る恐るエルノアへと手渡す。

 晴也の手から、エルノアの手へと聖剣が移る。その熱さにすぐ手を離すと考えていた晴也だが、予想外にもエルノアは聖剣に触れたままだった。

「な、なんで」

「この鞘におかげです」

 そう言いながら、エルノアは片方の手を鞘から離し、柄に指先を触れさせる。すると、まるで熱いものに触ったようにすぐに指を離す。

 鞘だけならば、聖剣の熱を感じないということだろうか。

「聖剣の鞘を仕立てる際、ダルディンさんに要求したのは二つ。一つは、聖剣の相応しい鞘に仕立てること。そしてもう一つは、万人が持てるようにすることです」

 聖剣を晴也に返しながら、エルノアは説明を続けた。

「聖剣の光や熱は、聖水によって抑えることができたのはわかっていました。ですので、鞘に用いた全ての素材に、聖水に浸し、清めることで、聖剣の熱を抑えているのです。最も、鞘に納まっていない部分は変わらず触れ続けられないほど熱いのですが」

 説明を終えると、エルノアは晴也に聖剣を返した。

 晴也は再び聖剣を佩く。帯から垂らした留め紐には留め具が結ばれている。その留め具で鞘を挟むことで、安定して剣を佩くことができる。

 留め紐に直接括りつけていたときは、剣がやたらと動いてしまって鬱陶しく感じていたが、留め具で固定することで剣が動かなくなり、歩くのに邪魔にならなくなった。

「エルノア様」

 正面からジルバが駆け足気味に寄ってくる。白地のシャツのような服と厚手の黒いズボンの上に、銀色のプロテクターにも似た鎧のようなものを至るところに付けた彼女は、騎士のように見えた。

「準備が整いました」

「では、行きましょう」

 ジルバの言葉にエルノアはそのまま通路を進む。

 エルノアの後を、晴也はジルバと隣り合って歩く。全身甲冑姿でないからなのか、ジルバからは他の騎士とは違い、金属がぶつかり合うような音が聞こえなかった。それでも、歩く速さやその姿勢に、鎧の重さを感じさせなかった。

 ここ最近の稽古で身に染みている。彼女は戦う者なのだと。その為の訓練をし、技術を磨き、経験を積んだ。そんな中に、鎧を着用しているときの歩き方も含まれているのだろう。

 戦争が始まり、晴也も戦うときが来れば、きっと鎧を着るだろう。それがどれほどの重さなのか晴也はわからないが、金属板を何枚も背負いながら走ったり剣が振るったりすることなどできないだろう。

 果たして、聖剣の力を引き出すことができたとして、自分は本当に戦うことができるのだろうか。晴也は改めて、自分が何もできていないことを実感し、来るかもしれない戦争への恐怖を募らせた。

 城から外に出ると、既に移動用の馬車が用意されていた。エルンティカに行く時とは違い、一回り大きいものだった。それ以外にも、晴也達以外の騎士がいる点など、聖剣の移送が多毎であるということを晴也に実感させた。

「おねーさまーっ!」

 馬車に乗り込もうとしたとき、後ろからそんな声が聞こえた。振り向いてみると、そこには美麗なドレスを身に纏った、どこかエルノアに似た雰囲気の少女が、城の中から走ってきていた。

「エルメリア? どうしたの?」

 エルノアが口にしたその名前には聞き覚えがある。確か、エルノアの実の妹。やることなすことが全て悪事に見えてしまう、不憫な人だ。

 しかし、そんな予備知識とは裏腹に、晴也から見たエルメリアの印象は、可愛らしい女の子というものだった。翡翠の色をした瞳を大きく開き、快活そうな笑みが人懐っこさを思わせるその姿は、エルノアとは正反対な魅力があった。

「アタシも研究所に行っていい?」

 エルメリアのその言葉に、エルノアはすぐに返答しなかった。

 不思議に思えた。別にエルメリアはおかしなことは言っていない。確かに、これが重要な仕事であるという点で言えば、エルメリアの申し出はどこかお遊び気分にも思える。しかし、絶句するようなことでもない。

「……どうして?」

 少しして、エルノアがそう訊ねた。するとエルメリアは、満面な笑みを浮かべながら答える。

「そうするべきかなって思ったから」

 さも当然と言わんばかりに行ったエルメリアの言葉に、エルノアは「そう」と短く相槌を打った。

 そして、またしばらく間が開く。どうしていいのかわからなかった俺は、思わずジルバのほうへ助けを求める視線を向けるが、ジルバは目を閉じ、我関せずと言った態度であった。

 二人のやり取りはいつも、こんなに気まずい空気なのだろうか。いや、エルノアが一方的にエルメリアを拒絶している、と見るべきだろうか。少なくとも晴也にはそう見えた。

「……わかりました。一緒に行きましょう」

「やった! ふふっ、実は勇者様とも、ちょっと話してみたかったの」

 許可を得たエルメリアは、無邪気にはにかみながら晴也のほうを向いてそう言った。そのようなことを面と向かって言われて、思わず心臓が跳ね上がり、視線を逸らしてしまう。

 ――ああ、確かに。今のエルメリアを見て、晴也は何となく納得した。どうして彼女が、不憫な人なのか。彼女の言動に悪意や特別な意図はないのだろう。それは、面と向かっていれば何となくわかる。しかし、その見え方が思わせぶりなのだ。故に、勘違いされてしまう。

 今の言葉に、何か特別な意図はない。単に、勇者という存在に興味を抱いているだけなのだ。そんな風に自分に言い聞かせ、高鳴る脈拍を必死に抑えた。

「……」

 そんな様子を、ジルバが軽蔑するように眺めていたことを、晴也には知る由もない。


    *


 しばらく馬車に揺られながら、外の景色を見ていると、気づいたことがあった。道に見覚えがあったのだ。

 エルンティカに向かったときと同じ道なのだ。周りが平原で気づき難かったが、道の先のほうに見える森が、晴也をそう確信させた。

「今から向かう魔法研究所って、どこにあるの?」

 視線をエルノアに向けながらそう訊ねると、エルノアの隣にいるエルメリアが即座に反応した。

「魔法研究所はスーリロム侯爵が治める領地にあるんです」

 エルダフィート王国は、大きく四つの領地に分けられる。一つは、王が直接統治する直轄領。そして、西側、北側、南側を侯爵位の貴族に下賜し、統治させている侯爵領の三つだ。

 侯爵領は領地を治めているそれぞれの領主の考えや土地柄が色濃く出ている。例えば、北方のシューエバッフ領は、他の領に比べて租税が低い。西方のメンティア領は、山に囲われたエルダフィート王国が唯一平地続きで国境に面している関係上、要塞や騎士の数が多い。

「じゃあ、今向かってるスーリロム領はどんな特徴があるの?」

 一連の説明をエルノアからされた晴也はそんな疑問を口にした。

 スーリロム領は、他の領地に比べると、特色は薄い。基本的に直轄領と変わりはない。しかし、王国中を慄かせている噂がある。罪人はその罪の大きさ問わず、必ず極刑を言い渡しているというものだ。

 エルノアはそれを晴也に説明するべきか躊躇った。自分の国の恐ろしい面を知って欲しくはないという私欲と、晴也にあまり警戒心を抱かせたくないという考えがあった。

「んー、他に比べて治安が良いんです。その分、厳しいところもあったりするんですけど、たぶん王国の中じゃ、一番治安が良いと思いますよ」

 考えあぐねるエルノアに対して、エルメリアがそう口にした。嘘とは言えない。スーリロム領は恐ろしい噂の反面、報告される犯罪の数が他の領に比べると少ない。そう考えれば、エルメリアの言う通りスーリロム領は治安の領地と言えるだろう。

「なるほど、良い場所なんだ」

「はいっ!」

 エルメリアの説明を聞いて晴也はそう口にした。

 その場所の良い話を聞くと、途端にそこに行くのが楽しみになる。晴也は逸る心を抑えるように、もう一度外の景色を眺める。どうやら、いつの間にかエルンティカに向かったときに使った道とは別の道を通っているようだ。

 馬車の中に平原に吹く風が入ってくる。草の匂いが染みた風は晴也には新鮮で、深呼吸をしてしまう。

 エルンティカに向かうときは、こういうのを楽しむ余裕すらなかった。果たして今、余裕があるのかと言われると晴也にもわからない。それでも、以前よりも落ち着いた心持でいられるようになった。

「ところで勇者様」

 外の様子を眺める晴也に、エルメリアが声をかける。視線を彼女のほうに向けると、彼女はこう訊ねてきた。

「お姉さまから、勇者様は聖剣と共にこの世界に顕現したと聞きました。けど、その前はどのように過ごしてきたのか、聞いてもいいですか?」

「ここに来る前か……」

 正直な話、日本での生活を説明するのは、どことなく憚られた。

 理由はよくわからない。誇れるものがないからかもしれないし、勇者としての価値にそぐわないからかもしれない。しかし、離さないのもおかしな話だ。エルノアには海のことを話しておいて、エルメリアに何も話さないのは、何となく不平等に思えた。

 しかし、改めて何を話せばいいか。少し考えて、当たり障りのない話をすることにした。

「ここに来る前は学生だったよ」

「勇者様は学舎に通われていたんですか?」

「うん。高校生だったんだ」

 聞くに堪えないつまらない話だ。しかし、改めてそれ口にしてみると、こちらに来て十日と少ししか経っていないが、懐かしさが滲んだ。

 普通なら、今頃は教室の席について、つまらない授業を子守歌に眠りながら、時間を無為に流していた。そんな生活をしてきた人間が、突然異世界に飛ばされて、聖剣を引き抜いて勇者と称えられている現状は、三文小説もいいところだ。

「しかし、学舎に通われていたということは、やはり勇者様はこの国の方ではなかったのですね」

「どういうこと?」

「エルダフィート王国には学舎がないのです。貴族やアタシ達王族は、専属の家庭教師から学びます。遠くの大国に学舎があると聞きますから、勇者様はそちらの方なのでしょう」

 それを聞いて納得すると同時に、一つ認識を改めなければと晴也は自らを自戒した。

 この世界の人間にとって晴也は、聖剣と共に現れた勇者だ。しかし、それは異世界から現れたのではなく、この世界のどこかから現れたと認識されている。そう考えるのは妥当で、むしろそう考えるべきことだ。

 エルノアやジルバは晴也が異世界から来たことを知っている。その感覚が、少なくとも聖剣に関わりのある人は全員、晴也が異世界から来たことを承知しているという認識と結びついてしまっていた。

「それにしても、お姉さまが執り行った儀式は大変なことになったね」

 続けてエルメリアは、隣のエルノアにそう話しかけた。

「そうね。まさか、聖剣のみならず塩の柱や、シオタ様まで顕現してしまうとは……神の奇跡とは、本当に数奇なものです」

「元々準備してたのは、えっと……エルディンを引き寄せるものだっけ?」

「ええ。儀式を以て、強大なエルディンを寄せ付けるもの。高密度なエルディンをまとうと思われるエルレイクスを、エルンティカから引っ張りだすには、広範囲に渡ってエルディンを引き寄せられる儀式をしなくちゃいけないと、研究所が言い出したから」

「けど、お姉さまは勝手に別の儀式をしちゃった」

 そういうエルメリアに対して、エルノアは恥じることはしなかった。

 聖剣をエルンティカの底から引きずり出す儀式。晴也はその辺りのことを知らなかった。エルノアが何か儀式を用いて顕現した、という話はどこかで聞いたが、具体的どのようなことをしていたのかまでは知らなかった。

「より効果的と思われる方法を選択しただけ。あのときはより強力な魔法が使える星の配置だったの」

「星の配置? 覚星巡りの配置はもう終わってたでしょ?」

「もっと強いものよ。数百年に一度の周期で巡る星の配置。神覧巡りよ」

 それを聞いたエルメリアは驚いたように目を見開き、口を開けっ放しで固まってしまった。

 晴也にはエルノアが何を言っているのかよくわからなかった。しかし、城で生活していると時折、エルノアのことを星詠みの巫女と呼ぶ人がいることを晴也は覚えていた。

 星を詠む巫女と星の配置。エルノアには何か、星に関連した力があるということだろうか。

 疑問が表情に出ていたのか、晴也を見たエルノアは微笑んだ。

「『経典』では、神は空に住んでいるとあります。ですが、常に我々のことを見守ってくださっている訳ではないとされます」

「そうなの? 何か意外」

 宗教といえば、神が見守ってくださる、という文言が一番口当たりの良いものだろう。しかし、常に神が人を見守っていないというのは妙な違和感があった。

「それじゃあ、その神は普段どうしてるの?」

「天地創造を終えた神のその後は、教派によってその解釈が異なるのですが、我々エルシェ教においては、未来を作っているとされています」

「なるほど。それは、人間のことを見てる余裕なんてないな」

 時間は連綿と続くものだ。もしそれを創り続けるのだとすれば、休んでいる暇などないだろう。ともすれば万能の神であれ、人の世を見下ろす余裕などないのかもしれない。

「しかし、数百年の一度の周期で、神は我々のことを見守ってくださる時があるのです。それが――」

「神覧巡りっていう、星の配置?」

 そう結んだ晴也の言葉に、エルノアは首肯した。

「経典の最後のほうには人間が登場するのですが、その人間に与えられた試練も、神が見守ってくださる間は達成できたとあるのです。それを参考に、物寄せの儀式を用いた結果、聖剣と塩の柱……そして、シオタ様が現れたのです」

 エルノアのその説明を聞いて、ようやく理解した。どうしてエルノアが、ここまで晴也の味方をしてくれるのか。きっと負い目があるからだ。

 あらゆる所業を神が達成させてくれる儀式。エルノアが儀式をしようとしたとき、それができたのだ。なら、それを使わない手はない。エルノアの判断は正しかった。しかし、それが原因で晴也が異世界に来てしまった。聖剣を手繰り寄せる魔法が、聖剣の担い手まで手繰り寄せてしまった。きっとそれが、彼女の心のなかに突き刺さっているのだろう。

 それは別に、エルノアのせいではない。そう口にしようとした。しかし、そう言ったところでエルノアの心から棘は抜けないだろう。しかし、晴也にはその棘の抜き方はわからなかった。



第十三話を読んでいただきありがとうございます。


次話もよろしくお願いいたします。

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