夢の中の平壌総攻撃
明治二十七年九月 野津師団長率いる陸軍第五師団は平壌を攻略に掛かっていた、春樹の所属していた朔寧支隊はまだ日の上がらぬ暗いなか野営地から平壌北面の突撃地点まで向かっていた
「まだ九月だってのに肌寒いな、早く冬服支給して欲しいぜ」
平壌総攻撃は季節的にちょうど衣替えのシーズンに行われたため普通江に陣取っていた師団本隊は紺色の冬服、元山支隊は白い夏服、春樹のいる朔寧支隊は上が紺、ズボンと軍帽が白という感じで部隊によってバラバラだった
「確かに九月でこがいな寒さじゃったら十二月なんか恐ろしのぉ」
「ちゃんと外套とか用意してあればいいんだけどな」
春樹が幸助と愚痴を漏らしてる間に部隊は突撃地点に到着した
「各自着剣せよ!」
当時春樹のいた部隊の小隊長だった金井少尉が叫ぶ
全員持っている村田銃に着剣していく
辺りは砲兵隊の山砲の砲音が鳴り響いていた
「こんだけ砲弾をぶち込んでんだから敵の堡塁や城壁は跡形もねぇだろ」
「清国兵なんぞワシらが一網打尽にしちゃるけぇのぉーハッハッハッハッハッ」
と、周りの兵士は余裕を見せていた
「随分余裕だな」
春樹は呆れた
小隊長が軍刀を抜き
「これより突撃を開始する!」
そう言うと聯隊旗が挙げられる
「突撃にーーまえーーーー!」
この合図ともに突撃ラッパの音が響き渡り日本兵が次々と第二堡塁へと突撃していく、だが春樹たちの前に立ち塞がったのは砲撃で破壊されたと思っていた堡塁や城壁だった
「どうなってんだ堡塁も城壁も無傷じゃねぇか」
総攻撃時に第五師団の砲兵隊が装備していた山砲は野砲より射程距離が短く堡塁や城壁に致命的な打撃は与えられていなかった
それに各堡塁にはガトリング砲が配備されており突撃してくる日本兵に向けて火を吹き弾丸の雨を降らすさらに牡丹台からの敵の砲撃が降り注ぐ
その砲弾が春樹の近くに落ち爆風に吹き飛ばされた
春樹は起き上がり持っていた村田銃を見ると銃身に砲弾の破片が、めり込み使えなくなっていた
「クッソ、銃が」
目の前に将校の軍刀が落ちていた
「ちょっと借りるぜ」
軍刀を持つと春樹はガトリング砲がある堡塁に走ってく、春樹の前を走る仲間の兵士たちは次々と薙ぎ倒れていく春樹は堡塁の目の前に来ると右手に持っていた村田銃を堡塁内に投げ入れた
投げ入れた村田銃の銃剣が砲手を貫く春樹は堡塁内に飛び込みもう一人の砲手を左手に持っていた軍刀で斬り倒した
春樹の後に続き日本兵が次々と堡塁中に入ってくる、堡塁中は乱戦状態になった
「キィエーイ!」
春樹は示現流で敵兵を斬り伏せていく、そして堡塁中の敵兵を一掃し堡塁を占領した さらに別方面から進軍していた第三師団の第十八聯隊を主軸とする元山支隊と合流した
「急ぎ砲兵隊を前進させろ」
牡丹台砲台を砲撃するため歩兵部隊の進撃が一旦とまった




