2月14日(木) 1
なんとか、14日のうちに投稿出来ました。
俺、弐枚光輝には、幼馴染がいた。智田春佳、という、かわいい女の子だった。俺は、幼いながらも恋心を抱いていたのだろう、いつも春佳のあとをついて回っていた。俺と春佳は、とても仲が良かった。
ある、冬の日、当時、小学校の一年生だった春佳と俺が、一緒に下校していた時のことだった。
青信号になったよ、と言って、春佳は信号を渡り始めた。俺は、いつもそのあとをついて行っていた。その日も、春佳の後をついて、交差点を渡り始めた。
その時だった。車が、すごいスピードで突っ込んできた。こっちが青信号なのに、車が来るなんて、考えもしていなかった。
車が近づいてくるのが、見えた。そして、意識を失った。
次に目が覚めたのは、病院の冷たいベッドの上だった。春佳は、と問うて、帰って来たのは、死んだ、の一言だった。春佳が、死んだ。いつも一緒にいた、春佳が。
何で死んだんだろう?不思議だった。なんにも悪いことをしていない、せいぜいチョコのつまみ食いと、いたずらぐらいだった春佳に、なんで神様は怒ったんだろう?
疑問でたまらなかった。
その謎が解けたのは、時がたち、心の傷も小さくなり始めた、小学校高学年になってからだった。女子たちが、「ばれんたいん」などといって、チョコを渡し始めた。みんな、少し浮かれていた。なんのことだろうと思った。
「ばれんたいん」について、お母さんに聞いた。その時、お母さんは、つらいかもしれないけれど、大事なことだから、と言って、告げた。
あの事故は、バレンタインのチョコのせいなのよ。
どういうことかわからなかったが、もうこの行事を楽しめそうにないことは、よくわかった。
もう少し大きくなってから調べてみると、事のあらましがわかって来た。
事故を起こした人は、会社員だった。その日、2月14日、若い女性社員がウイスキーボンボンを作ってきて、配っていた。さすがに就業中は配っていなかったが、退社するときに、事故を起こした男もチョコを受け取った。
男は、どうやら、その女性社員にそういう類の感情を抱いていたらしく、大人が思うべきことなのか、とは思うが、その女性社員のチョコを多く食べたいと思い、実際食べてしまったようだ。そして、そのチョコには、だいぶ、アルコールが含まれていた。男は、大変酒に弱く、運転し始めてすぐに、チョコに含まれるアルコール分で、酔っ払い、朦朧とし始めた。
そして、ブレーキを踏まないまま、赤信号のともる交差点に進入したのだ。
結局、バレンタインと、チョコのせいで春佳は死んだのだ。
それ以来、好きだった、そして、かつては春佳と一緒に食べていたチョコを、食べないようになった。チョコを、バレンタインデーを、その日に浮かれる人々を、嫌いになった。
そして今日、また憂鬱な、春佳の命日がやって来た。
毎年、俺は、放課後、春佳の墓参りに行くことにしている。そのために、早く帰ろうと、靴箱を開けた。
そこには、黒い靴だけではなく、ピンクにラッピングされた、奇麗な箱があった。