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死神に逆軟派されました  作者: 弓木
3/9

 3 美術館にて

    3  美術館にて


 結局、アイツは何者だ?

俺は、自称ヴァルキュリアのブロスナーのことを考えていた。

過去2回会った結果、本物のヴァルキュリアとしか思えないスペックを見せてくれた。

ほんと、魅せてくれたよな……

「起きるか……」

今日から有給消化だ、仕事はしない!

だというのに、8時に起きる。

もっとゴロゴロしたいんだが、腹が減った。

昨夜、ラーメン屋で2人前は食ったのに。

「そういやアイツ、えらく美味そうに食ってたよな。

 ワルキュリアの味覚って、人間の味覚や好みに似てんのかな。」

ま、好みに合わないよりは、よっぽどかマシである。


 朝食を摂りながら、ブロスナーのことを考える。

一度、ちゃんとデートした方がいいのか?

つーか、ヴァルキュリアにデートって概念あんのか?

そもそも俺は、アイツにホレて……ないよなぁ。

嫌いじゃないし、むしろ好感は抱いているものの、知的好奇心的興味が上回っているし。

「アイツ、何で俺と結婚したいんだ?

 それとも、結婚なんてどうでもよくて、タネが欲しいだけか?」

まだ2回しか会ってない女性に訊くには、直球すぎる内容だよなぁ。

朝食を終えた俺は、新聞を広げる。

内閣支持率が……とか、日本の安全保障が……などと書かれている。

そんな中、地域のページに気になる情報を見つけた。

地元の県立美術館で、北欧美術展が開催されているという記事だ。

「ほ~~、来月4日までか。

 アイツと行ってみるのも、おもれぇかもな。」

喜んでくれれば、それでよし。

特に喜ばなくても、何らかの情報が引き出せればそれでよし。

ミッション・スタート、だな。

まずは洗濯しなきゃ、だが。


 「あー、いたいた。」

案の定、いつもの場所にブロスナーが立っていた。

ほんと、コイツいつもここに立ってるな。

とりあえず声を掛け、美術館に誘ってみる。

「ぜひ!」

いい笑顔で返事が返ってきた。

ただこれ、北欧美術が嬉しいのか、惚れた男と一緒が嬉しいのか、はたまた人間の男と一緒なら誰と一緒でも嬉しいのか、その他なのか、さっぱり分からん。

まぁ分からんながらも、俺たちは40分ほど歩いて、美術館にやって来た。

「ほぉ~~。」

美術館に着くなり、ブロスナーが声を上げる。

中の展示や収蔵品にたいしてではなく、建物の外観に対してである。

外っ側には、丸い柱が見てとれる。

パルテノン神殿みたいだ。

いや、多分、全然違う。

ゴシック建築……とかは、言葉は聞いたことがあっても、実際はどんな物かは全然知らん。

どうせコンクリート建築物だし、どうでもいいや。

それよりも……と、俺はチケット売り場に行く。

企画展+常設展、当日券は大人1人1300円である。

(まぁそんなもんか。)

そんな事を思いながらも、俺は2人分のチケットを購入する。

チケットと一緒に受け取ったパンフレットをみると、俺でも知っている2人の芸術家の名前があった。


1人は、エドヴァルド・ムンク。

中学校の美術の教科書だったか資料集だったかに「叫び」って作品が載っていたので、名前だけは知っている。

たしか、しょっちゅう盗難に遭っている作品である。

もう1人は、ヤン・ファン・エイク。

学生時代にやったテレビゲームの攻略本の表紙に作品が使われていたので、名前を覚えていた。

一度、実際に作品を見たいと思った、数少ない絵画だ。

2人とも北欧に所縁のある画家だったとは、知らなかった。

俺は、ブロスナーの所に戻り、声を掛ける。

「お待たせ、行きましょうか。」

「はい、そうですね。」


 中に入ると、入口ホールに、人の背丈ほどもある、巨大な埴輪が置かれていた。

なんでも、この辺りの遺跡で埴輪が出土したため作られた、実物大複製品だとか。

知らんかった……

ブロスナーも、

「変わった彫刻ですね。」

なんて言ってる。

いや、彫刻ではなく焼物だけどね。

そして、受付でチケットを渡し、いよいよ企画展「北欧美術の世界展」の会場へ。

まず目に付くのは、巨大な都市の写真パネルである。

館長挨拶に続き、北欧の説明がある。

デンマーク、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの5カ国と書かれている。

デカい写真は、5カ国の首都の写真だった。

ブロスナーは、ある程度は見知った場所なのだろうが、俺は、テレビで見たことがある程度だ。

その次は、いよいよ企画展の本番へ!


 「…………」

いや、すごいね。

キッテルセンとか、ハンマースホイとか、名前も知らなかった芸術家の作品が展示されてて、しかも作品が素晴らしいの。

「叫び」ではないものの、ムンクも見ることができたし。

タイトルは、「メランコリー」。

幻聴に悩んで叫んだり、メランコリーになったり、ムンクって、そういう人だったのだろうか……

あ、アル中で精神病院に入ってたって書いてある……

アンデシュ・ソーンは、人物画ばっかりだな。

静物画や風景画を描いてないのか、今回の展示に含まれていないだけかまでは、判断しかねるけど。

そして、なんか周りの人たちがこっちを見ている気がする。

ブロスナーが美人なせいだろうけど、それは気のせい、ということにしておこう。


 さて、いよいよ今回の美術館デートのメインディッシュ、第5展示室「北欧神話の世界」へ。

ここで、ブロスナーの反応を見るのが、本当の目的である。

って、おい。

「ブリュンヒルド様……」

部屋に入ってすぐの画を観て、動かなくなったよ。

さすがにこれは、ちょ~~っと予想ガイだぞ?

絵画の説明書きを読んでみる。


「    ブリュンヒルデ 1910年


   アーサー・ラッカム イギリス 1867-1939


  ブリュンヒルデとは、ワルキューレの1人である。

 ワルキューレとは北欧神話における……………………」


(ブリュンヒルデ?

 あぁ、そういえばWikiにも名前が載ってたな。

 てか、コイツ動かなくなったけど、大丈夫か?

 肉体的な心配はしなくてもよさそうだけど、この反応をどう判断したらいいんだろ。

 つーか、この絵の感じ、何となく天野喜孝に似てね?

 やっぱ、影響受けてんのかな?)

体感で5分ぐらい経った気がするけど、ブロスナーは動かないままだ。

ちょっと不安を感じ始めたので、声をかける。

「あの、ブロスナーさん?」

たっぷり、秒単位で間が空いた後、反応が返ってきた。

「え、はい。

 ……あっ、申し訳ございません!」

どうやら完全に、自分の世界に入っていたらしい。

その後俺たちは、一旦展示室を出て、休憩所に向かった。


 「先程の反応、何かあったんですか?」

とりあえず話を聞いてみないことには、どうにもならない。

「すみません、完全に物思いに没頭していました。」

あー、やっぱりね。

「あまりにも、ブリュンヒルド様に似ていたもので、つい。

 ブリュンヒルド様は、原初の9人のヴァルキュリヤのお1人で…………」

もう、喋る喋る。

一度始まったブロスナーのマシンガントークは、止まる気配を全く感じさせない。

(誰か、止めてくれ……)

もう、百合かと思うほどのブリュンヒルド愛。

残りの展示品を観た記憶がない。

いや、勿論観てはいるのだが……

ついでに、昼飯を食った記憶も。

次に思い出せるのは、駅に向かうバスの光景だった。


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