~洛陽動乱~洛陽へ続く空
暇潰しで書き始めた朱霊伝なんですが、段々と暇じゃなくなって来て更新頻度が遅くなっております!
年が明けたら暇になると良いなぁなんて思いつつちまちま更新していこうかと思っているのでお付き合い下さい。
そして、思い付いたままを書き殴るのは今後止めようかなと後悔しております(笑)
思い付いたまんまの物を付け加えてしまったので若干のシナリオの変更あったりとか色々大変でした!
猛反省しております(汗)
朱霊が船上で船酔いに苦しんでいる頃、医療の現場を数日に渡って見学を終えた審配は世話になった五斗米道の者達との別れの挨拶を済ませ、周倉と廖化の二名と合流、江州への旅路に着いていた。
「…ありえねえよ!!なんで漢中には肉を主軸に置いた飯屋がないんだ!?肉はあっても鳥の肉ばっかじゃねーかよ!!しかも入ってる肉の量がやけに少ねぇしよぉ!!」
漢中滞在時の食事に不満が溜まっているのか、態度の悪い周倉のそれがいつにも増して悪い。
「…はぁ。漢中の主要な肉類が鳥肉なのは至って当たり前の事だ。漢中の主な名産は米,薬材,生糸,漆器等。
米が名産なのだから水田が多く鴨などが多く生息しているし、米その物を使って養鶏も盛んだからな。
それに豚は不衛生な場で育成されている事で有名だ。
医療を推進しているこの地で不衛生な飼育場が設置される訳がない。
牛に至っては農耕牛ばかりだしな」
散々周倉に付き合わされたのか、廖化の表情は若干疲労の色が濃い。
「くっそ!廖化!てめぇはいっつも説明ばっかでうるせえよ!誰も教えてくれなんて頼んでねーだろうが!!」
今日の周倉は随分と機嫌が悪い様である。
今にも廖化に噛み付きそうな勢いで食って掛かるものの、
「二人共じゃれ合うのはそこまでだ。先へ進むぞ」
呆れた様な審配の言葉によって咎められた。
漢中を発った三人は南下し剣閣から葭萌関と進み、梓潼で僅かな休憩を挟んだ後、 涪水関と綿竹関を越え、成都へ寄った。
~成都~
古代周王朝時代には『華陽』と言う地名であり、東は巴、南は越、北は秦、西は峨眉山に接し、天府と称された地。
益州最大の都市であり、成都という名は『周太王は岐山まで移して、1年で村落が成り、3年で都が成った』と言う過去の事象に由来している。
成都の別称は『錦城』
この由来は成都の紡織は発達しており『錦官城』(錦織の職人を集めて錦織業を管理する)が設置されていた為。
天然の要害に囲まれたこの地は中原から遠く離れており、黄巾の乱に巻き込まれる事も無く、緩やかな時が流れていた。
目指す目的地である江州はこの成都の隣に位置している。
三人は最後の休憩を摂る為に成都の都にある宿に向かって歩を進めていた。
「よぉ、じじい。成都を発てば江州まで2~3日ってとこだ。腹は決まってんだろうな?」
頭の後ろで手を組み審配と廖化よりも前を歩いていた周倉が審配の心内を探るかの様に声を掛けた。
「――愚問だ。其れがしは君命を受けて韓忠殿の奥方を迎えに行くのだからな。そこで奥方がどんな判断を下そうとも其れがしが君命を違える事はない」
「死ぬ事になってもか?じじいだって命は惜しいだろう?」
「君命を全うする為に命を落とすのであれば本望だ」
「そうかよ。ま、奥方様がお前の首を落とせと命ぜられた時は俺がその首を叩き落としてやるよ!はっはっはっ!」
「そこまでだ周倉。
お前だけ早っても奥方様がどう判断されるのかは我々には分からないのだからな。何度も言わせるな。
その挑発行為もいい加減見飽きたぞ」
成都に着くまでの間に何度となく繰り返されたやりとりに嫌気が差していたのか廖化が周倉を睨めつけた。
「…ちっ!俺らが奥方様の意思に従うのは当たり前だろうが。
廖化、お前は冗談っつーのがわかんねぇ野郎だな!
こんだけ同じやりとりしてりゃ分かりそうなもんなんだけどよ。なぁじじい?」
「お主の冗談には品性が欠片も感じられ無いからだろう。
其れがしはともかく、仲間ですら嫌悪するその品の無さをどうにかするべきではないか?
私が後見としてお側にいた朱霊様は幼少期からそれはもう―――」
「げ!?また始まりやがった!!」
「…周倉。お前のせいだからな?何度同じ事を繰り返して来たと思ってるんだ」
「このじじいの朱霊様語りはいっつも唐突に始まるじゃねーか!俺のせいにすんじゃねーよ!?」
この三人の不毛なやりとりは宿に着くまで続いた――。
その後、成都で宿を取った三人はそれぞれが食事をする為に一度解散。
二人と離れた審配は宿の一室で筆を採っていた。
(戦場での生き死には戦の常とは言え、韓忠殿の奥方がこちらの提案を素直に受け入れるとは到底思えぬ。…やはり一筆認めておくのが賢明だろうな)
審配が書き遺そうとしているのは朱家の面々に当てた遺書。
彼はこの時、自身が生きて帰れぬかも知れぬ事をよく理解していた。
審配は韓忠を討った朱儁の配下である。
伴侶を失った者が復讐心を持たぬ訳が無い。
そして君命を受けたとは言え、伴侶を討った将の配下がわざわざ出向くのだ。
生かしておく意味は薄い。
周倉という男はそれを良く理解している。
良くも悪くも感情を剥き出しにして生きている男だ。
理に生きる廖化よりも感情の機微に敏いのだろう。
韓忠の伴侶が審配を前にした時どう思うか等、周倉にはわかりきった事だったのかもしれない。
成都に着くまでの道中、周倉が審配に対し挑発を繰り返していたのは彼なりの優しさの裏返し。
韓忠の伴侶の前に出れば審配の命は危うい。
だからこそ覚悟を決めさせる為に何度も挑発行為を繰り返して来たのだ。
粗暴に見えて繊細であり、誰よりも感情の機微に敏感なのが周倉という男だ。
廖化は感情に流されず状況に冷静に応じて最善を尽くせる性質。
融通が利かぬ部分ははあるが、それは生真面目さから来る物。
廖化が審配を気遣っていたのは親切心から来ている物では無い。
審配の身に何かあれば彼の主君である朱儁が何かしらの行動を起こし、韓忠の伴侶に対し危害を加えるやも知れぬと恐れている為だ。
それ故に周倉が短慮で審配に危害を加えないか憂慮していた。
主君筋の者を守らんとする忠義から来るものだろう。
――周倉と廖化――
差異はあれどその義心は確かなものである。
何だかんだ言い合いながらも周倉と廖化は互いの長短を補い合っている良い二人組だと審配は考えていた。
(あの二人は良い将になる。出来れば志牙様に引き合わせてみたいとは思うが。…こればかりは我が天命に委ねるしかあるまいな。
――それにしても我が事ながら随分と落ち着いている。江州へ着けば我が命は無いかも知れぬというのに…)
自身の命が危ういというのに筆を奔らせながらも落ち着いている事に自ら驚く審配。
既に齢は五十に近い。
今まで戦場にて命を落としかけた事は数え切れない程にある。
それはそれで戦場を駆けた武人として誇らしく、恥じる物ではない。
だが、益州の地に於いて戦場では無いにも関わらず命を失う事に恐れは無かった。
この事は審配自身にも予期せぬ事。
未練が無いのかと言えばそうではない。
遣り残してきた事はいくらでもある。
(不思議な物よ。戦場に出る訳でも無いというに…。
もう少し狼狽えても良いものなのだが、まさかとは思うがこの歳になって死地を求める様になったか?
――くくっ…その様な心づもりはしておらん筈なのだがな…)
審配は苦笑しながら洛陽のある北東へ目を向けた。
彼の目に映る洛陽へ続く益州の空は蒼く澄み渡っていた。
次回は多忙中なので未定です。
出来上がり次第投稿して行きます!




