~洛陽動乱~嵐を呼ぶ筋肉
駄文ですがお付き合い下さい。
何進の執務室を後にしようとしたら、前触れもなく朱家の筋肉が乱入して来ました。
筋ちゃんの筋肉は囁く上にレーダー機能を搭載しているみたいです。
なにそれコワい…てかキモい。
噂をすれば影が差すなんてレベルじゃない。
朱霊です。
「はうあ!?」
「き、筋ちゃん!?なんでここに!?」
突如乱入して来た肉の塊に驚きを隠せない。
ねねも鳩が豆鉄砲喰らった様な顔をしてる。
なんか後ろから『はうあ!?』とか変な何進の声が聞こえて来たんだが…。
「おお!!若ぁぁぁぁぁぁぁ!!やはりこちらにおられましたか!!!筋肉は嘘を吐かない!!」
「あ、ああ。俺はここに居たけど…」
「いや、まさか…。本当に居たんですね志牙…」
「え!?白兎まで居たのか!?」
筋ちゃんに続いて困惑した様な苦笑いを浮かべて白兎君まで登場。
「実は修羅さんがこっちに志牙がいると筋肉が囁いているとか叫んで走り出したんで慌てて追い掛けて来たんですよ…ははは…」
「うわぁ…それは大変だったろ?お疲れさん」
「いえいえ、まさか本当にいるとは思わなかったですけどね。ここまで来ると修羅さんが同じ人間とは思えませんよ」
「ハハハ…。はぁ…」
おいおい、心優しい白兎君が毒吐いてらっしゃる。
でも、その気持ちが痛い程にわかってしまうのはなんでだろうね。
お互いに顔を見合わせて肩を竦める。
そこに何進が鼻息荒く、
「おい朱霊!そこの素晴らしく美しい筋肉をしている男はお前の関係者か!?」
と偉い勢いで食い付いて来た。
蹇碩の筋肉辺りで薄々分かってはいたが、この何進、筋肉フェチだった様だ。
元が肉屋だけあって筋肉にも煩いらしい。
「ああ、朱家…というか、オヤジの配下だよ」
「ほぅ…。朱儁の配下にこれ程の人物がいたとはな…」
しげしげと筋ちゃんの全身を隈なく観察している何進。
余程筋ちゃんがお気に召した御様子。
「筋ちゃん。何進大将軍に御挨拶を」
「はっ!」
ずずいっと前に出た筋ちゃんが膝を着いて包拳礼。
「俺の名は蔣寄!字を義梟と申します!俺の筋肉を気に入って頂けた様で何よりです!!…上腕二頭筋にぶら下がってみますか?」
筋ちゃんが変な事を言い出した。
止めようか迷ったんだけど、
「むむっ!良いのか?」
当の何進が乗り気だったので静観する事に。
「ではどうぞ!!」
「う、うむ。良きに計らえ」
筋ちゃんが差し出した腕を何進が両手で抱えると、
「ぬんっ!!!」
と、軽々と何進を宙吊りに。
「おお!?」
「まだまだこれからぁぁぁぁぁぁ!!」
「お?おお!?ぉぉぉぉぉ!?」
何進を宙吊りにしたまま筋ちゃんが右回転、左回転と遠心力で振り回す。
「ふんぬらばぁぁぁぁ!!!」
「おぉぉぉぉぉ!?」
筋ちゃんに振り回されて童心に還ったのか、キャッキャとはしゃぐ何進の姿は見ていて痛ましい…。
白兎君や月と詠も呆気に取られてるじゃん。
なんて思ってたら、
「そいやぁぁぁぁぁ!!」
と筋ちゃんが何進を宙に放った。
「なぬっ!?」
突然放られた何進が慌てたのか、筋ちゃんの首に抱き着き、そのまま落下。
腕に座る様な形で筋ちゃんの胸にスッポリと収まった。
傍から見ると筋骨隆々とした大男に褐色肌の美女が抱えられてる様にしか見えない。
意外と絵になる組み合わせだった。
絵にするとしたら画名は美女と筋肉だろうか…?
何が起きたのか良くわかってない何進の頭上にクエスチョンマークが乱舞してるのが良くわかる。
多分アレはやられた本人は何が起きたのか理解出来ないだろうなぁ。
「何進殿!ご満足頂けましたでしょうか?」
ニカッと白い歯を覗かせてマッスルスマイルを浮かべる筋ちゃん。
「!?!?!?……!!~~~~~っ!!」
自身が筋ちゃんに抱えられている状況を理解したのか、見て取れるくらいに何進の褐色の肌が赤味を帯びる。
まぁ、実際恥ずかしいだろうなぁアレは…。
「う、うむ。余は満足したからそろそろ降ろして貰えないだろうか…」
「ははっ!!」
筋ちゃんの腕から降ろされた何進は両腕で身体を抱え、赤くなった顔を隠すように俯いたまま筋ちゃんから距離を取る。
が、その視線はチラチラと朱家の筋肉を盗み見している。
「(な、なんというか、不思議な感覚であるな…。余はああいう風に扱われるのも悪くないと思ってしまったぞ…。それにしても逞しい肉体を持つ男に抱き抱えられるというのは安定感があって癖になりそうだ…)」
独り言だったのだろうがバッチリ聞こえてしまった。
何進は筋肉フェチで若干Mが入ってるらしい。
ついでに朱家の筋肉にフラグが立った様な気がする。
これは面白い事になりそうだと思いニヤニヤしてたら袖口をクイッっと引っ張られる。
「…あ、兄上。ねねも傾みたいに…その…、えっと…」
ねねが羨ましそうな目で何進と俺を交互に視線を彷徨わせている所を見ると、さっきのアレに興味を持ったらしい。
「ん?筋ちゃんに抱っこして貰いたいのか?」
「ねねは兄上にお願いしたいのでありますぞ」
「よしきた!」
その場で屈むとねねが俺の首に両腕を絡ませて来たのでその体を支える様に腕を回し立ち上がる。
「おお!?視点が高くなる見慣れた場所が少し違って見えるのですぞ。これが兄上の視点なのですか」
いつもと違う視点が新鮮だったのか、無邪気に顔を綻ばせキョロキョロとあちこちに視線を飛ばしている。
「ねねもこれから成長するし、まだまだ背も伸びる。少しずつ見える景色が変わっていくのをゆっくりと楽しむと良いさ」
「はいなのです!」
元気よく返事をするねねを見て思う。
(結局場の雰囲気に飲まれたぁぁぁぁ!!!)
まぁ仕方無い。だって俺なんだもの!
「若ぁ!!その子は若の妹君であらせられたのですかぁ!?」
「ん?ああ。天水で色々あってな」
ねねが俺を兄と読んでいる事に気付いたのか、筋ちゃんのテンションがなんか変だ。
「ぬぅぁぁぁぁぁ!?まさか殿に隠し子がいたとはああああああ!!??これは殿に確認を取らねば!!!!殿ぉぉぉぉぉ『ドゴォッ!!』ぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「修羅さん!落ち着い…あらー、相変わらず話を聞かない人ですね」
ねねをオヤジの隠し子だと誤解した筋肉は白兎君が止める間も無く執務室の扉を吹っ飛ばして走り去っていく。
早とちりにも程があるだろ!?
脳筋の思考回路ってどうなってんだ!?
ショート寸前どころか常にショートしてるんじゃないのか!?
「ねね…。ごめん!この続きはまた今度で良いか?」
「…はいなのです!」
ねねを降ろすと名残惜しそうにしながらも素直に頷いてくれる。
「あー、ほんとにもう行かなきゃ。このままだとオヤジが冤罪でおふくろにぶっ殺されかねん…はぁ…」
思わず溜息が出る。
「う、うむ。急ぐが良かろう。蔣寄殿によろしく言っておいてくれ」
「兄上!またなのですぞー!」
「道中転ばないように気を付けてください」
「ほら、急ぎなさいよ!追いつけなくなるわよ!」
「みんなまたな!白兎急ぐぞ!オヤジが危ねえ!!」
「はい!今から追いつけるとは思えないですけどね…はは…」
皆の声を背に何進の執務室を後にし、暴走した筋肉を追う。
急げ!オヤジがピンチだ!
次回は10/20に投稿予定です。




