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真・恋姫†夢想~朱霊伝~「六人目の大将軍」  作者: 羅貫厨
3章・董卓+何進=動乱
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~洛陽動乱~朱霊と張譲

駄文ですがお付き合い下さい。

 論功賞で名前が呼ばれませんでした。


 猿宦官の張譲さんは俺に喧嘩を売りたいようです。


 …無理やり売られた喧嘩はクーリングオフ対象になりますかね?


 いや、返すつもりはさらさら無いんだけども。


 朱霊です。




「―さて、一通りの功に報いた所でこの張譲の耳にとある話が舞い込んで来たのだが…」



 唯一名を呼ばれなかった俺。


 張譲は左豊を斬った俺を探す為にわざわざ論考賞で報奨を下賜する役目を引き受けたんだろう。


 張譲の見下したような視線が俺に刺さる。


 義勇軍上がりの小物と思われてるに一票。


 売られた喧嘩は買う主義なので盛大にまとめ買いしてやろうじゃないか。


 挑発したのは俺だけどねー。



「義勇軍の中に陛下の目耳として、この張譲が派遣した督郵である左豊を斬って捨てた朱霊とかいう逆賊が混じっているらしいな?」



 軽い牽制の様な言葉。


 名指しされた俺に諸侯の視線が集まる。


 その中で顔が真っ青になったオヤジ殿が口をパクパクさせてる。


 酸欠状態の魚か?三傑だけに…、なんちって。


 事情を知っている包先生と皇甫嵩は我関せずといった感じで張譲に視線を注いでいる。



 自分が左豊を派遣したと公言したのはどんな意図が含まれているのだろうか?


 普通なら『皇帝の命で派遣された』と予防線を張るだろうに。


 もし、逃げ帰った護衛が左豊が張譲の名を出した事を伝えていたなら『皇帝の命』は使えないと判断したと推測できる。


 まだ張譲も様子見といった所か。



「陛下に弓を引く逆賊は黄巾だけでは無かったということかな」



 周辺が静寂に包まれる中、薄笑いを浮かべている張譲。



「ふむ、逆賊ならこの場にいる諸侯全員がそうでしょうなぁ」



 俺が投げた言葉に諸侯全員の顔が凍りついた。


 その視線が『何言ってやがる!?巻き込むんじゃねーよ!』って言ってるのがわかる。



「黄巾は腐敗した朝廷を正す為に立ち上がった。不正を正そうとした彼らを討った我々が逆賊と誹られても仕方ありませんね張譲様?」


「くっくっく。黄巾共が掲げていたという大義…、か。確かに上辺だけを見て取れば討伐側が逆賊とも取れるのぅ。だが、それとこれは話が別よ。お主はこの張譲が遣わした督郵を斬ったという事実は変わるまいて」


「如何にも。左豊は俺が斬りましたが、陛下の名を盾に賄賂を要求する様な汚吏を生かしておくつもりはありませんで」


「…ほぅ。督郵である左豊が陛下の名を騙り袖の下を催促したと申すか」


「はい。それは盧将軍にお聞き頂ければ」


「…ふむ」



 張譲は俺から視線を包先生に移し、何度か俺と包先生を交互に視線をぶつける。



「盧将軍。朱霊の申している事は真であるか?」


「真に御座います」


「…左様か。だが、法に照らし合わせ罰せねばならぬ所を独断で裁くというのは陛下を蔑ろにし過ぎではないかね?」



 顎を撫で付けながら目を細め俺に発言を促してくる。



「戦が終わった後、降伏した黄巾兵の不満を軽減するのに役立ちましたよ。黄巾は朝廷の腐敗を正す為に立ち上がった者達ですから賄賂を要求する様な督郵は都合の良い存在でしたね」


「ふむ。賄賂を要求した事が事実であるならば降伏した黄巾共の不満は和らげよう。…事実であるならば、だがな」


「私と盧将軍が虚言を用いていると?」


「その可能性もあるという事だ」



 思った以上に手強い。


 こちらにいくつか手札はあるが、その手札を切って良いタイミングが計れない。


 張譲が左豊を派遣したと公言したのも自身の隙をわざと見せる為に敢えて口にした様に思える。


 とりあえず揺さぶってみるか…。


 先ず一つ目の手札で切り込んでみる。



「虚言を用いて生じる益がありませんな。張譲様こそ戦時に左豊の様な督郵を派遣するなど盧将軍を罷免させようとしていたのではと勘ぐりたくなるのですが…。よもや黄巾に力添えでもしていたのでは?」



 正史では黄巾の信奉者だったとされる張譲。


 こちらの世界でも黄巾に肩入れしていても不思議ではないのだが。



「はっはっは。若い者は発想力が逞しいな。して、この張譲が黄巾に味方して得られる物とはなんだね?」


「そうですね。黄巾が勝ったとして、財と地位の保証と言った所でしょうかね。まぁ、黄巾がそれに是を出すとは思えないので、張譲様は黄巾側に着いたのでは無く、元々黄巾側だったと推測していますが」


「なるほどなるほど。して、この張譲が朝廷の腐敗を嘆く様な高潔な人物に見えるかね?」



 本当に喰えない猿だ。


 自らが悪臣の一人であると公言するとはね…。


 張譲は私服を肥やす傍ら霊帝に対しては忠誠を尽くした人物として記されている。


 張譲の悪臣発言の意図はどこにあるのだろうか?



「…お世辞でも高潔な人物には見えませんね」


「くっくっく。はっきり物を言う」



 愉快そうに口元を歪める張譲。


 何進といい、張譲といいこの手の揺さぶりは効果が無さそうだ。


 宮廷に属している者達はこの程度じゃ揺らがないと見て間違いないだろう。


 周りにいる諸侯達の喉が鳴っている。


 褒美やらなんやら貰って喜びたい所を俺と張譲のやり取りで台無しにしてしまった感じでちょっと申し訳ない。



「さて、督郵左豊の件は朱霊殿らにも理由があったようだ。この件は不問に致す。では最後の論功を―」


「おや、まだ結論を出すのには早いのでは?」



 話を切り上げようとしたらしい張譲。


 こちらには切れる手札が残っているのに終わらせてやるつもりは無い。



「―これ以上問答を続けるのであれば…、相応の覚悟が出来ているのであろうな?孺子」



 にまりと張譲の顔が笑みに変わった。



「―――っ!!」



 俺にはその顔が悪魔の笑みに見えた。


 そして全てを察した。


 張譲は…いや、張譲だけじゃない。


 以前やりあった何進もこの場の張譲も俺に対し手心を加えていたのだ。


 宮中に於いて謀略戦を繰り広げ生き延びてきた彼らにとって、俺は赤子に等しいのだとあの張譲の笑みが物語っている。


 これ以上先へ踏み込んだら俺ではどうにもならないと肌で感じる。


 今の俺はこの宮中に於いて張譲の気まぐれで生かされていた…。



「…ふぅ、良いでしょう。ここは退いておきます」


「そうするが良かろう。まだ若いのだ。命を粗末にすべきではないな。―では朱霊殿は前へ」


「…はっ」





 この日、俺は張譲に敗北した。


次回は9/17に投稿予定です。

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