~黄巾の乱~運命の岐路
夏は色んなお誘いがあって全然投降出来ませんでした。
誘惑に勝てなかった自分が恨めしい今日この頃…。
来月から投降ペースを戻せたらいいなーと思っております。
今回も駄文ですがお付き合い下さい。
汝南での攻防に敗れた何儀達は波才率いる本隊と合流すべく北上していた。
その間に散り散りとなって逃げた黄巾兵が合流。
五百名前後と小規模ではあるが行動を共にしている。
合流していない生き延びた者達は個々に本隊を目指すか、そのままどこかの村や町で帰農するものと思われる。
「よう、何曼。お前さんも生き延びたか」
高昇は張闓と共に在った何曼へ声を掛けた。
「恥ずかしながら生き延びてしまいました…」
「はは!ばっか!生き残ったんだ、それで良いだろうが!運が良かったんだよ。俺達はな」
何曼の背中を叩きながら笑う。
本来であれば何曼は死んでいたはずだった。
死に臨み武人として果てるつもりでいた。
だが、何曼は呂布が撒き散らす死に怯え、近寄る事が出来ず生き延びていた。
そこに何儀を死なせんとした張闓が近くを通りそのまま保護されたのである。
元々、『敗北後の何曼の護衛』という依頼を受けていた張闓。
見捨てる理由はどこにもなかった。
「張闓にはちゃんと礼を言っとけよ?俺も凱もこうして生きてるのはある意味あいつのお陰なんだよなぁ…」
「…そうですね」
張闓のいる方向へ目を向ける。
何儀を助け出し逃げ出した時に呂布の追撃を止めたのは張闓だった。
傭兵として長く付き従って来た直属の兵、百名に呂布の足止めの為に死ねと命じていた。
そんな彼は何儀のそばに居り、今後についての話をしている。
「あの呂布を相手によく生き延びられましたな」
「張闓殿と高昇のお陰だ。二人がいなかったら俺は呂布に討たれていただろう」
「間が良かっただけの事。その分直属の兵を少しばかり失う結果となりましたが…。それにしても随分と無茶な手当をなされるものですな」
布を巻いた失った右腕が痛々しい。
何儀は失った右腕を火で高温に熱した剣を使い、切り口を焼き潰して止血していた。
「こうでもしなければ血は止まらなかっただろうからな。このやり方は張闓殿が教えてくれたヤツだぞ?」
「アレは小さな傷であればの話ですぞ。斬り飛ばされた腕の切り口を焼き潰す等とは教えておりませぬ」
「はっはっは。教えられた事の応用だ。死ぬかと思う程の痛みだったがな」
「やれやれ…。焼き潰す痛みで命を落とさず良かったと言うべきか」
死ぬ程痛かったと笑う何儀に呆れたように頭を振る張闓。
「それで?これから本隊に合流するにあたり言いたい事があると言ってたが」
「……それについてですが、何儀殿。本隊と合流するのはお止めなされ」
「…!どういう意味だ?」
張闓の言葉を訝しむ何儀。
「どうもこうも、その腕で何が出来ると思っておられますか?」
「指揮を採ることくらいは出来る」
「腕を失い体調も優れない今、何儀殿が戦場で倒れられれば混乱するのは指揮下の兵です。はっきり言って足手纏いになるだけでしょう」
何儀の肩に手を置き制する。
チクリと微かな違和感を感じた何儀だったが、腕の痛みのせいだろうと思った。
「む…」
「それに其れがしの見立てでは黄巾は官軍に負ける。負けると分かっていて貴殿を死地に行かせる訳にはいきませぬ」
「だがそれでは…!?」
反論しようとした何儀だったが、急にめまいに襲われ体の自由が利かなくなる。
「どこかでゆるりと休息を摂られると良いでしょう」
「ち、張闓どの…?いった…い…なに…、を…」
「申し訳ない。其れがしは何儀殿から受けた依頼の他にもう一つ別に依頼を受けておりまして…。折角生き延びられたのですからその命、大事になされよ」
崩れ落ちる様に眠りに就いた何儀を近くの兵に任せ、高昇の元へ向かった。
「お?張闓。凱と話は終わったのかって、凱はどうした?」
こちらに気付いた高昇が声を掛けてくる。
方針が決まったのだと思ったのだろう。
「何儀殿の容態が変わった。今は眠っている。本隊へ合流するのはやめた方がいいだろう」
「なに!?やっぱあいつ無理してたんだな…。仕方ねえ、近くの休めそうな村か町で様子を見よう」
右腕を失った何儀を気に掛けていたのだろう。
容態が変わったと聞いて高昇の顔が険しくなる。
「それなら変装する必要がある。我々の出で立ちは目立つからな」
「ああ、そうだな。だが兵達はどうする?流石にこの人数で押し掛ける訳にもいかねぇ」
「兵達は其れがしが任されよう。我が隊に組み込んで失った分を補充しておきたい所でもある」
「すまん…。恩に着るぜ!張闓はこのまま本隊へ向かうのか?」
「いや、其れがしは何儀殿に雇われただけの傭兵。依頼は果たした故、これ以上この戦に関わるつもりはない」
「ん?何儀に雇われた傭兵…?依頼?」
前もって何儀から話を聞いていなかったのだろう。
高昇の目が点になる。
「…知らなかったなぁ。ったく、俺には教えておいてくれても良いだろうに…」
「はっは。高昇殿は口が軽そうだからな」
「うへ…」
拗ねたように唇を尖らせごちる高昇に笑いながらダメだしをする張闓。
「さて、其れがしはそろそろ行かせて貰おう。高昇殿、息災でな」
「ああ、張闓もな」
別れの握手を交わす。
「然らば是れにて!」
身を翻し兵を纏め去っていく張闓を見送る。
「なかなか面白い奴だったな。出来れば一緒に飲んでみたかったなぁ…」
小さくなっていく姿を目にごちる。
短い付き合いであったが、高昇にとって張闓という男は好ましく思えた。
「さて、俺達も近くの村か街に行くとするか!」
「「はっ!」」
「……………」
何曼と寝ている何儀の世話の為に残った者達に声を掛けるものの
「……………」
「…何曼?」
反応しない何曼を不思議に思い訝しげに目を向ける。
俯いたまま何かを思案しているであろう表情は陰となり、その心内を窺い知ることは出来ない。
「すみません高昇さん…。俺は張闓殿に着いて行こうかと思います」
「…は?」
意を決した様に投げ放った何曼の予想外の言葉に高昇の口から間抜けな声が漏れる。
「え?ちょ、どういう事だ!?」
「…俺は武人として呂布に挑み、その結果死んでも構わないと思っていました。でも俺はいざ呂布を前にした時、挑むどころか恐れて動く事も出来なかった…」
「………」
「…俺は愚かで何もわかってなかった…です。自分自身を見直す為にも俺はあの人から学んでみたいと思ったから、着いて行きたい…。すいません、上手く言葉に出来なくて…」
自身の気持ちを吐露する何曼の手に力が篭っているのが見て取れた。
「…そっかぁ。ん~、良いんじゃないか?今まで何儀が過保護過ぎたんだよ。丁度良い機会なのかもしれない。何曼が思った様にすれば良いさ。何儀も弟離れしないとダメだと思うし…」
「ははは…。弟としては耳が痛いです…」
ポリポリと頬を掻きながら苦笑する。
「…行けよ。追い付けなくなっちまうぞ」
張闓が消えていった先へ顎をしゃくる。
「…はい。高昇さんお世話になりました!兄の事を宜しくお願いします」
「ああ、任された。達者でな!」
「はい…!はぁっ!!」
何曼は馬首を返し張闓を追う為に馬を駆った。
「…何儀になんて言えば良いかなぁ?」
過保護な兄はなんと言えば納得するだろうか。
首を捻りながら考えている所でふと思い出す。
「…あ!何曼の真名聞くの忘れた!!!!!!」
結論『高昇は間抜け』
高昇一行は何儀を休ませる為に本隊との合流を中止。
沛国の譙県にある小さな村にその身を寄せる事にした。
この小さな村で何儀と高昇の運命を変える出会いが待っているとも知らずに…。
次の話を書いたら黄巾の乱編が終盤に入る予定です。
次回は9/1~2に投降予定です。




