~黄巾の乱~飛将呂布・後編
中盤話が脱線してる感が半端ないですがお付き合い下さい。
相変わらずの駄文になっております。
「うわあああ!?逃げろ!!逃げろおぉ!!!」
呂布が放った一撃により崩壊した前線の黄巾兵。
彼らは逃げ散るのではなく、味方が控える陣へ逃げ戻るという選択をしてしまった。
これは恐怖に駆られ、一人でも多くの味方がいる所へ行きたいという生存本能がそうさせてしまったからだろう。
つまりこれは追撃を仕掛けている呂布が陣に向かっているという事である。
「逃げて来た連中はほっとけ!!お前らは隊列を乱すな!!…駄目だ!逃げてきた連中が隊列を滅茶苦茶にしちまってる…!!くそったれが!!勝手に動いたんだからこっちに逃げてこなきゃ良いのによぉ!!」
指示を出しながら文句が零れる。
黄巾軍先陣は呂布の脅威に怯え逃げて来た汝南投降兵とそれに引き摺られてしまった黄巾兵が命辛々逃げてきた事により指揮による統制が効かなくなっていた。
特に何曼率いる中央先鋒は、逃げてきた者達が大量に雪崩込んだ事で著しい混乱状態に陥ってしまった。
「何曼!お前は張闓の所へ退け!ここは俺が何とかする!!」
中央先鋒の混乱を見て右軍先鋒の将である黄邵が救援に駆けつけた。
「何とかするってこの状況じゃ立て直すのは厳しいんじゃ!?」
「良いから早く退け!向こうから呂布が斬り込んで来るぞ!!」
黄邵が指刺した先で黄巾兵が文字通り飛び散っているのが見える。
「クソッ!!黄邵さん死ぬなよ!!」
「お前もな!!」
右軍の陣へ逃げる何曼を見送り、呂布が来るであろう方向を見やる。
血風を撒き散らしながら一直線に向かってくる呂布に対し自身の身体が強張っているのが黄邵には分かっていた。
呂布が撒き散らしている死は屈強な武人である彼でも恐怖を覚えるものであった。
「黄邵隊!何曼隊!出来るだけ呂布には近付かず矢を射掛けろ!!味方には悪いが関係なく撃ちまくれ!!どのみち呂布の近くにいる味方はもう駄目だ!!」
「「応!!」」
黄邵の判断により呂布目掛けて味方も巻き込む事を厭わず矢を射掛ける。
だが、その進撃速度は全く落ちる事は無く、黄邵へ向かって突き進んで来ている。
「ちっ!化物が!俺が奴の足を止める!!お前らは俺ごと呂布に矢を射掛けろ!!」
「は!?しかしそれでは黄邵様が!!」
「バカ野郎!!アレをここで仕留めなきゃ、たった一人相手に総崩れになるってわかってんのか!?」
「は、はっ!!」
「わかったら奴の足が止まった瞬間にありったけの矢を打ち込め!!俺ごと奴を仕留めろ!」
「御意!!」
配下の兵に指示を出すと黄邵は槍を片手に呂布に向かって馬を走らせた。
向かう先では呂布が黄巾兵を相手に猛威を振るいながらも勢いを殺さずに突き進んで来る。
「これ以上やらせるか!!喰らいやがれ!!」
後少しで接敵する直前、黄邵は手にした槍を呂布に向かい全力で投擲。
そして腰の剣を抜いて馬を加速させた。
だが、投擲した槍は斬り落とされ呂布は黄邵に狙いを定めた。
「うおおおおおお!!!」
「…邪魔」
「!!!!!」
「「黄邵様!!!」」
馬の加速を乗せた黄邵の剣が呂布に届くことは無かった。
決死の覚悟で呂布の足止めをしようとした彼はすれ違いざまに馬ごと吹き飛ばされ、その身体がバラバラに砕け散る結果に終わってしまった。
そして呂布はそのまま足を止めることなく黄邵隊と何曼隊を襲った。
「黄邵様の仇だ!殺せええ!!!」
「何曼様を何としてでも逃がすのだ!奴をここから先へ行かせるな!!」
黄邵を討たれた黄邵隊と何曼を逃がすべく残った何曼隊はなんとか呂布を討たんと立ち向かったものの、呂布を止める事敵わず全滅するという悲惨な結末を迎えた。
その最中、不気味な程に落ち着き事の成り行きを見ているだけで動かない部隊があった。
張闓隊である。
「張闓様。我々は動かなくてよろしいのですか?」
「…その必要は無い。我々は我々のすべき事を成せば良い」
「しかし、このままでは本隊へ呂布が攻撃を仕掛ける事になりますが…」
「…構わん。本隊には何儀殿と高昇殿がいる。それに我々が動けば董卓軍が動いた時に対処する事が不可能となる」
「なるほど…」
「どうやら何曼殿が逃げて来たようだ。恐らく呂布は止められまい。そう刻を置かず撤退の合図があるだろう。我々は依頼通りに動く。勝敗が決したら何曼殿を連れてこの場を離れるぞ」
「はっ!」
配下の兵の疑問に答えると彼は董卓軍へ目を向けた。
張闓という人物。
正史や演義では陶謙配下の将とされ、徐州の戦乱を避け、曹操の元へ逃れようとした曹嵩の道中護衛役として陶謙に派遣されたが、欲に目が眩み曹嵩を殺害し逃亡した者として知られる。
曹嵩殺害後は袁術の配下として現れ、陳王の劉寵と国相の駱俊を殺害している。
この事から、一説によると本来は暗殺を生業とした殺し屋である可能性が高い人物。
以後名が見えない所から劉寵と駱俊を殺害後、袁術に処分されたと思われる。
(本作では流れの傭兵として扱う)
そんな彼が何故黄巾に参加しているのか…。
何儀に雇われたからである。
依頼内容は『敗北時の何曼の護衛』
彼にとってこの戦いは勝とうが負けようが関係なかった。
何曼さえ無事であれば任務は達成されるのだから。
「張闓殿!なぜ動かれぬか!?本陣に呂布が向かっておるのだぞ!」
そんな事を知らない何曼が肩を怒らせて張闓へ詰め寄る。
「何故と申されるか…。我らが動けば未だ動いていない董卓軍が動いた時、対処出来るものがおりませぬ故」
「ふざけるな!呂布だって董卓軍だろうが!!それでも動かぬというのか!?」
頭に血が上った何曼には今の状況がわかっていなかった。
「…当たり前でしょう。状況をよく見なされ。呂布一人に圧されているとは言え、まだ敗北した訳ではありませぬ。董卓軍本隊がこちらを伺っている以上我々が動く事はありませぬ」
「…ぐぅ!仕方ない!少し兵を貰って行くぞ!」
張闓に諭され状況を確認。
黄邵が討たれた事を実感した何曼は自分だけが逃げ生き延びてしまった事を恥じ、戦場へ戻ろうとした。
「待ちなされ。よもや呂布に挑むと?折角拾った命を無駄になされるおつもりか?それに勝てぬと分かっていて兵を無駄に消耗される訳にはいきませぬな」
それに待ったを掛けた張闓。
敗北以前に何曼が戦死した場合は張闓に非はなく、それはそれで仕方のない事と何儀から言われていた。
だが、自らの手の内に護衛対象がある今、わざわざ死なれても寝覚めが悪いと言うのが彼の本音であった。
「この身は武人であり将である!何故己の命惜しさ故に敵に背を向けたままでいられようか!」
だが、そんな彼の思惑を他所に何曼は兵も引き連れず戦場へ馬を走らせてしまう。
「張闓様!如何なさいますか!?」
何曼の行動に驚きを隠せず陣中が騒めくものの、
「何儀殿には有りの侭を報告するしかあるまい。我等とて自ら死に行く者を守る義理はないのだからな…」
遠ざかり小さくなる何曼を見やり諦めたように頭を振る。
人外とも呼べる武を誇る呂布に対し、武人であるとして死地へ赴く。
傭兵として生きる彼には理解出来る生き様ではなく、
「…武人とは愚かだな……」
張闓の口から侮蔑を含んだ小さな呟きが戦場の中に零れるのだった…。
演義では悪役まっしぐらな張闓さんですが、この物語ではかなり立ち位置が変わってます。
次回は何儀さんと恋さんがぶつかる予定です。
投稿予定は未定ですが、なるべく早く上げられるように頑張ります!




