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真・恋姫†夢想~朱霊伝~「六人目の大将軍」  作者: 羅貫厨
2章・歌姫+黄巾=乱
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~黄巾の乱~平原の戦い・5

巧く修正作業が進んでおりません。

時間が足りない。

 丁遠志は死を覚悟した。


 初戦では敵中央の義勇軍を圧倒し、義勇軍の総大将を負傷させ戦線を崩壊させた。


 敵はこちらの勢いを警戒し、後退。


 さらに陣を丘陵に移し逃げ腰になっていた。


 そしてこちらは将が一人卑怯な手により討たれたものの、逆に結束が強まり士気が大幅に上昇していた。


 この勢いがあれば強大な袁家の足止めだけでなくその軍を粉砕出来る。


 そう思っていた。


 そう思っていたからこそ眼前の光景が信じられなかった。



 次々と変わる戦況、粉砕されていく味方、焼き払われた兵糧庫。


 今まで彼が培ってきた全てが通用しない戦場。


 それは初日、義勇軍の総大将がやってのけたこと。


 偶然の産物、二度目はない。


 彼はそう判断していた。


 だが、現実は無情にもソレを打ち砕いた。


 慢心など無かった。


 敵は余りにも強大だった。


 自らが持ち得た才と常識を覆し、大きく上回る者がいた。


 ただそれだけ。



 そして、目の前には敵の牙であろう一人の可憐な少女。


 初戦では相対しなかった将。


 目を奪われた。


 彼女の纏う武人としての気質。


 自らの武を上回るであろうその素質に。


 敬意を表し名乗りを上げる。



「…黄巾党第二軍団長。丁遠志」



 冷艶鋸を構える。



「朱家義勇軍、第五軍将。関雲長」



 槍を構えた。



「「参る!!」」



 丁遠志と関羽の刃が交差した。

「おいガキ!ここは戦場だ!おうちに帰んな!」


「鈴々はガキじゃないのだ!」


「そういうトコがガキだっつーの!…なんで戦場にこんなちっこいのがいるんだよ…」



 鄧茂は顔を顰め、参ったなぁといった感じでボリボリ頭を掻く。


 目の前にいる少女の存在は彼にとって想定外。


 というか予想もしていなかった。


 なぜなら自分達が守るべきか弱い存在が槍を突き付けてきているのだ。


 ただし、目の前の少女が放つ武の気配は自分と同等、若しくは上。


 強い奴と戦いたいとは思う。


 が、こんな幼い少女を相手に刃を向けたくはない。


 だから困っていた。


 ここは戦場。


 武器をとれば等しく死線に立つ。


 理解はしている。


 理解はしていても納得出来るわけではない。



「…なぁ、あっちで暴れてる奴と交代してくんねーか?」



 高覧を指差し聞いてみる。



「烈火より鈴々の方が強いのだ!」


「……」



 逃げ道はないようだ。



「はぁ…、ケガしてもしんねーぞ?」



 諦めて蛇矛を構える。



「鈴々は強いからへーきなのだ!」



 喜々として槍を構えた。



「おっちゃんは鄧茂ってんだ」


「鈴々は張飛!字は翼徳!」



 戦場には似つかわしくない穏やかな空気だった。



「あー、張飛。始める前に一つ言っておく。一人称が真名なのは勝手に真名を知られるぞ?」


「にゃ?鈴々は難しいことはよくわかんないのだ!」


「難しくねーよ!?」


「隙アリなのだ!」


「うおっ!?それは卑怯だろ!?」



 張飛が攻めた。




 ~本陣~



「…ぅ…ぐっ…はぁ…」


「!志牙君!良かった…。目が覚めてくれて…ヒック…」



 気が付いたら横にされていて隣で桃香が泣いていた。


 身体を起こし、



「ダメだよ!今起き上がったら傷が開いちゃう!」


「桃香、今軍は誰が指揮を採ってる?」


「森羅君が…」


「そうか、なら問題無いな」



 森羅が指揮をしていると知って安心、身体を倒す。



「志牙君、ごめ、んなさぃ…わ、私のせいで…」



 ポロポロ涙を零しながら謝ってくる桃香。



「桃香のせいじゃないさ、アレは俺の失態だ」


「で、でも私がいなければ…」


「ふぅ…。事故みたいなものだったとはいえ、随分効果的だったみたいだな」


「……ぇ?」



 偶然だったとはいえ、死の恐怖と喪うという恐怖の両方を同時に経験させられるとは思っていなかった。



「なぁ、殺されそうになって怖かったか?」


「…ヒック、こ、怖かった…。っ…」


「俺が死ぬかもしれない感じた時どう思った?」


「…怖かった。悲しくて、辛くて痛くて…、目の前が真っ暗になった…」


「そうか…。そう感じたのなら桃香は人してとても正しい」


「…正しい?」


「お前が感じたそれは誰もが持ち得るものだ。敵味方関係なくな。そして彼らの帰りを待つ者達が抱えるもの」



 死に怯える感情。


 そして身近な者を失う事に対する痛み、悲しみ。


 それは誰もが持っているべき物。



「!」


「お前はその両方を知った。奪われる側の人間としてな。

 俺達はそれを戦争だからと命を奪い、奪われることを受け入れている。だからお前はそれを拒絶しろ」


「な、なんで…?」


「お前にしか出来ない事だからだ。お前以外の義勇軍の者は俺を含めて全員が血に染まった英雄になってしまった」


「英雄…」


「ああ、死の恐怖、喪う恐怖を俺達が語ってもそれは英雄譚にしかならない。

 恐怖を知り、戦争の虚しさと喪う事の悲しみや痛みを語るには英雄であってはならない」



 奪った者は奪われる痛みを語るには値しない。


 戦争の英雄とは奪った者達の事を指す。


 他人を引きずり下ろし登りつめた者。


 それが美談化され英雄となるのだから…。



「…」


「だからお前は英雄になるな。ただの劉備という人間として戦争を見届け続けろ。恐怖し心を痛め苦しみ、その眼に戦争という惨劇を焼き付けろ。

 そしていつか平和になった時、お前がそれを語り継げ。奪われる者の痛みをな」


「…そんなの、酷いよ……」


「残酷な事を押し付けようとしてるのはわかってるさ」



 そう、俺は彼女に最も辛い道を歩かせようとしている。


 彼女の意思に関係なく痛みを植え付ける。


 涙を袖で拭った桃香に睨まれる。



「絶対に許さない」


「…ああ」


「一生恨むから」


「構わない」


「最低」


「…」



 桃香は立ち上がり言葉を吐き捨て部屋の扉の前へ。



「バカ…。でも大好き」


「!!」



 いきなり爆弾を落とし、俺の返事を待たず部屋を出て行った。



「投げっぱなしかよ…」



 それで良かったのかもしれない。


 俺は彼女の想いになんと応えて良いのかわからなかったのだから…。

戦争で英雄と呼ばれる者。

それはただの殺人者。

それが美談として語り継がれた者が英雄だと思っております。

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