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真・恋姫†夢想~朱霊伝~「六人目の大将軍」  作者: 羅貫厨
2章・歌姫+黄巾=乱
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~黄巾の乱~平原の戦い・3

戦争シーン。

書いててワクワクしてしまいます。

でも思ったように書けません汗

 それは悪夢とも言える出来事だった。


 開戦初日にして黄巾の中央本隊五万のうち、三万が怒涛の勢いで義勇軍に牙を剥いた。


 先鋒の第五軍、中軍の第二軍を無視するかの様に正面から突破。


 そのまま本隊である第一軍に襲いかかったのである。


 関羽や張飛、司馬懿と言った名将達が率いる隊が為す術もなく縦に割られ、本隊への突撃を許し、朱霊の目の前で丁遠志の大刀が煌く。



「ぬぅん!!!」


「ちぃっ!!」



 迎撃の為に剣戟を繰り出す。


 が、大刀の一閃に脆くも剣は叩き折られ朱霊の身体が宙を舞う。



「お兄さん!!!」


「志牙君!!」



 程昱と劉備の悲痛な叫びが第一軍本陣に響き渡る。


 朱霊の身体が地面へ叩きつけられ、



「ぐはっ!…う…ぐっ…」



 と息が吐き出される。



「…ほう?まだ生きていたか。だが、これまで!!」



 翻る冷艶鋸。


 なんとか避けようとするものの身体を打ち付けた時の痛みのせいか、満足に動けない朱霊。


 そんな彼に一閃される刃が、



『ガギンッ』



 という音と共に弾かれた。



「ぬぅ!?」



 慌てて馬を下げた丁遠志。


 そんな彼の耳に、



「おーっほっほっほっほ!こ・の・張儁乂!華麗に参上ですわ!おーっほっほっほっほ!」



 と気が狂ったかの様な笑いが聞こえた。


 その場には凡そ武人とは思えない華美な衣装に身を包んだ女。


 その手には杭の付いた鞭。


 まさかとは思うが、振り下ろされた刃に鞭に付けられた杭を当てて弾いたとでもいうのだろうか?


 どちらにしろ只者ではない。


 大刀を構え直し女へ向き直る。


 そこへ、



「兄者!周囲からわんさか集まってきてやがる!」



 蛇矛を振り回しながら鄧茂が寄ってくる。



「今一歩でありながら…!引き上げるぞ!」



 朱霊の首を諦め、来た道を一直線に戻っていく丁遠志と鄧茂。


 この時、第一軍本陣は混乱しておりこの後、訪れる惨劇に気付ける者はいなかった。





 この日、中央を正面突破されたという事態を重く見たため、冀并の両袁家、朱家義勇軍は後退を余儀なくされた。


 そして朱霊は重症を負い戦線を一時離脱。


 并州袁家はともかく、朱霊と関わりが深かった冀州袁家と朱家義勇軍の諸将の士気の低下が著しく、戦闘続行が不可能な状況に追い込まれていた。


 黄巾軍を甘く見ていたわけではない。


 だが、朱霊が名乗りの途上で管亥を斬ったという事実が黄巾軍の怒りを買い必要以上に戦意を高揚させてしまった。


 その結果が朱霊の負傷である。



「…その、志牙さんはご無事ですの?」



 見舞いに来た袁紹が心配そうに意識を失った朱霊を覗き込んでいる。



「命の心配はないだろう。だが、指揮を執るのは無理だな」


「では、義勇軍の指揮はどうするのだ?」



 淳于瓊は複雑そうな顔をしている。


 袁基絡みで遺恨はあれど今は肩を並べ戦に臨む間柄。


 袁紹と淳于瓊は中央に陣取る朱家義勇軍の天幕に来ていた。



「指揮は俺が引き継ぐ。だが、兵の損耗が酷いな」



 今回の正面突破を受け、朱家義勇軍は大幅にその数を減らしていた。


 開戦前まで一万を数えた義勇軍。


 初日が終わった所で真面に戦えるのは半分程という有様だった。



「こちらから顔良隊、張郃隊を回します。指揮下に組み込んで下さいまし」


「こちらも呂威璜隊、牽招隊を回そう。上手く使え」


「ああ、済まないな。その四隊は動きを見ていた故、問題なく回せるはずだ」



 兵数に関しては問題は解消された。


 しかし、士気をどうしたものか…。


 司馬懿は思考を回す。


 懸念はあった。


 しかし、このような形になるとは思ってもいなかった。


 崩されかけた右軍。


 右軍の立て直しに動いた朱霊。


 そして管亥を討ち取った。


 報復を警戒する伝令も飛ばされていた。


 が、報復で敵本隊が突撃を掛けてくるとは思っていなかった。


 生粋の武人ではない司馬懿は黄巾の爆発の原因を測りかねていた。


 まさかそれが、管亥を『名乗りの途上で斬り伏せた事にある』とは想像も出来なかったのである。



「それにしても納得いきませんわね。志牙さんほどの方が遅れをとるなんて…」



 朱霊の実力をよく知る袁紹からすると今回の負傷は納得出来る物ではなかった。



「それは…」



 言い淀む司馬懿。



「何か理由があるのですわね?」



 袁紹が射抜く様な視線を司馬懿に向ける。



~劉備視点~



「…ヒック…うぅ…ヒック…」



 彼女は泣いていた。


 自分のせいで朱霊が斬られた。


 その事実が彼女を打ちのめした。


 あの時、迫り来る敵軍の勢いに体が硬直し、逃げる事は疎か身動ぎすら出来なかった。


 迫る死の恐怖に抗えなかった。


 朱霊は敵軍本隊が動いたと知ると、



「伝令!第五軍と第二軍に敵軍騎馬の突撃を軍を二つに分け躱しその後、後続の歩兵を塞きとめる為に蓋をしろと伝えろ!」


「はっ!」


「お前達は右軍と左軍の中陣へ行き張郃隊と牽招隊を呼べ!敵騎馬隊を包囲追撃し敵総大将を討つ!」


「「はっ!」」



 朱霊は的確な指示を出していた。


 これは彼にとって想定内であり、しっぺ返しという枠を越えていなかった。


 むしろ敵の総大将を討つ絶好の機会と狙ったのである。


 だが、そんな彼も計算に入れていなかった事が二つ。


 劉備の恐怖に対する免疫の無さ。


 そして、彼女を見捨てる事が出来なかった自身の甘さである。


 作戦の通り、第五軍と第二軍は敵騎馬隊をやり過ごし、敵歩兵隊を止める為に蓋をした。


 そして、第一軍も敵騎馬隊を流そうとしたのだが、劉備が立ち竦んでいた。


 そんな彼女に丁遠志の刃が牙を剥いたのである。



「その首、貰い受ける!」


「ぁ…」



 逃げる事も出来なかった劉備。



「ぬぅん!!!」


「ちぃっ!!」



 朱霊が咄嗟に救出に向かい、劉備の前に立ち塞がりその勢いのまま抜刀、丁遠志の大刀に剣が砕かれ馬上から叩き落とされて負傷した。


 そこに張郃が現れ、朱霊は生き長らえた。


 では、なぜ張郃が現れたのか。


 牽招は伝令を正しく理解し、追撃の準備をして機会を伺った。


 張郃は共に包囲追撃すると言う伝令を聞き、『呼ばれたから来た』のである。


 つまり張郃の勘違いの登場により朱霊は命を救われたのだった。


 そして、義勇軍第一軍の異変を察知した牽招隊が押し寄せた為に、丁遠志達は取って返しそのまま蓋をしている第二軍と第五軍に襲い掛かったのである。


 この動きに対処が遅れた第二軍と第五軍は背後からの奇襲ともいえる突撃を真面に受け甚大な被害を被った。


 不幸中の幸いか、将や軍師を失う事は無かったものの、劉備一人の失態で義勇軍は総大将の負傷、第二軍と第五軍が半壊と言う悪夢の様な損害を出してしまったのである。


 この事実に劉備は耐えられなかった。


 自身の不甲斐なさに涙を止める術が無かった。



「桃香さま…」


「お姉ちゃん…」



 二人の義妹は掛ける言葉を見つけられないでいた。




 ~天幕~



「そうでしたの…。桃香さんが…」



 司馬懿から事のあらましを聞いた袁紹はなんと言って良いのか分からなくなってしまっていた。



「これは俺の落ち度だ。どうやら俺は志牙に甘えてしまっていたらしい」



 これは事実だった。


 彼は朱霊という支柱に寄り掛かり知らず知らずの内に自らの才にに蓋をしてしまっていた。


 それが朱霊が傷付き倒れた事で危機感を覚え甘えが拭い去られた。



「明日からの戦、全ての指揮を俺に委ねろ。奴等を徹底的に叩き潰す」



 司馬懿の眼がギラリと鈍く光る。



 司馬仲達という稀代の天才。


 その恐るべき才能が今、目覚めの時を迎えようとしていた。


桃香さんは今のところお荷物です。

次回は司馬懿さんが無双する予定です。

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