~黄巾の乱~平原の戦い・2
駄文ですがお付き合い下さい。
第一軍の騎兵1000を率いて右軍を迂回するように進軍。
元高覧兵500、義勇兵500の混成部隊。
右軍先鋒の趙叡、張楊の両隊を相手に猛威を奮っている敵を目指す。
陣内から見えた敵の軍旗には管の文字。
恐らく管亥だろう。
演義で関羽と数十合に及ぶ力闘を演じた猛将。
それが今、右軍で牙を剥いている。
急造の義勇兵では分が悪いがやりようはある。
回り込んだ先に見えたのは黄色い暴風に蹂躙されている最右翼の趙叡隊。
「全隊!蜂矢隊形!右軍先鋒に食らいついている敵をぶち抜く!
元高覧兵は短弓を準備!敵部隊に牽制射撃用意!!狙わなくていい!!斉射後突入する!!」
「「応!!!」」
駆ける馬上からの射撃。
鐙の無いこの時代では命中率などお察し。
普通ならやろうと思っても出来ないが、出来てしまうのは袁家が河北にあり騎兵の運用に長けているからこそ。
冀州袁家の兵なら出来ないだろう。
だが、元高覧兵は并州袁家の兵。
并州兵という異民族と密接に関わってきた彼らだからこそ出来ること。
後少しで短弓の射程内まで接近すると言うところで、
「構え!!!」
馬上で短弓を構える元高覧兵。
敵部隊が射程圏内に収まったところで、
「放て!!!」
敵部隊後方へ馬上からの斉射。
右軍先鋒は殆どが歩兵だ。
少数とは言え目立つ騎兵。
既にこちらの存在は敵も捉えているだろう。
だが、それがこちらの狙い。
「俺に続け!!」
右軍の味方の合間を縫って敵部隊へ横擊を掛ける。
こちらへ意識が向けば右軍先鋒への圧力は軽減される。
敵部隊の横っ腹を突きそのまま駆け抜ける。
来ると分かっていても止められないのが騎兵。
凡そ時速60kmで突っ込んでくる馬なんて易々と止められるものではない。
敵を斬り伏せながら勢いを止めず疾走。
「勢いを殺すな!足を止めたら的にされるぞ!!」
「「おおおお!!!」」
勢いのまま突き進み敵部隊の前衛と後衛を切り離す。
この一撃である程度流れを引き寄せられたら儲け物と言えるだろう。
だが、そう上手くはいかないのが戦の常。
管亥隊の半ばまで斬込み、そのまま呂威璜隊方面へ斬り抜けるのが目的だったんだが、左方からこちらへ向かって大刀を振りかざし迫ってくる巨漢が……。
「待てえぇぇい!これ以上勝手はさせぬぞ!!」
たぶんアレが管亥だと思われる。
狙い通りとは言え、ほいほい釣られすぎだろう。
バカなのか?
あ、某ゲームだと知力10しかなかったわアイツ。
つまりバカだった。
ただ、武力はバカにできないので真っ向から斬り結んでやる必要はない。
僅かに騎馬の速度を下げる。
管亥との距離が縮まっていく。
接敵し、管亥が騎馬の速度を落とした瞬間に騎馬の速度を最大戦速にまで引き上げ肉薄、
「我こそは黄き…!?」
慌てた管亥が大刀を大きく振り上げた隙を突いてすれ違いざまに首を狙い一閃。
管亥の首が宙を舞う。
「バカな奴だ。あんな大振りを振らせて貰えるとでも思っていたのか?」
管亥の首を飛ばし勢いを殺さずに管亥隊の兵を躱し、呂威璜隊方面へ斬り抜けていく。
敵の歩兵は追い縋ることも出来ないだろう。
ひと当てするだけのはずが敵の左軍先鋒の将を倒せるという戦果になるとは思わなかったな。
恐らくこれで右軍も体制を立て直せるはず。
問題は、管亥配下の兵達か…。
復讐に燃えてこちらへ猛攻を掛けてくる可能性が高い。
陣へ戻ったら各軍団に注意を促しておこう。
こちらの動きが見えていたであろう呂威璜隊から歓声上がる。
管亥隊を抜け呂威璜隊の間を抜けるように帰陣。
「志牙君!無事で良かった…」
「おかえりなさいー」
「ただいま。伝令!各軍に管亥隊残党の報復の特攻に注意を」
「はっ!」
出迎えてくれた桃香と風への挨拶と共に伝令を飛ばす。
「いきなり敵将を倒してしまうとは思っていませんでしたー」
「いや、俺も出来過ぎだと思うよ。後のしっぺ返しが怖いな」
前線を睨む。
管亥を倒したせいで敵から目を付けられてしまった可能性が高い。
ここからどう動くか…。
~第四軍~
「は、はわわ…」
諸葛亮は絶句していた。
敵の真っ只中を突破した朱の軍旗。
義勇軍の総大将である朱霊が動いた事もそうだが、少数で横擊を仕掛け突破に成功したその力に。
そしてその常識外れな戦い方に。
崩されかけた右軍はたった一度の突破劇により息を吹き返している。
隣の呂威璜隊から上がる歓声。
実はこの朱霊の突破劇にはからくりがあるのだが、諸葛亮にはそれがわからなかった。
いや、諸葛亮だけではない。
恐らくこの戦場にいる誰もがわからないこと。
『未来に生を受けた朱霊にしか出来ない戦い方』
この時代の『戦いの在り方』を知っているから仕掛けることが出来た事実。
この時代、特に三国が成り立つ以前の戦争はほぼマスゲームである。
全軍を並べバカ正直にぶつかり合う戦争。
そして一騎打ちで名乗りを上げるという愚かさ。
それらを逆手に取った朱霊の戦。
実際、この時代において戦場で計略や、策、戦術と言ったものが使われる事は珍しい。
なぜなら、大軍を以て戦うというノウハウが確立されていないからだ。
ソレを確立させ、実用化まで漕ぎ着けた人物はこの場にいない。
――その人物は曹孟徳。
この時代に生まれた超世の傑。
彼女がここにいれば朱霊と同じ事をしただろう。
朱霊は敵の配置、自軍の配置を見てすぐにマスゲームだと理解していた。
正面からぶつかり数と力を誇示する戦場。
横合いから攻撃を仕掛けられるなど思ってもいなかったであろう。
故に朱霊の騎兵1000を以ての横擊が簡単に成功したのである。
管亥の首はオマケに過ぎない。
諸葛亮は朱霊が右軍先鋒の増援として動いたのだと思っていた。
ところが朱霊は敵先鋒の部隊を真っ二つに割ったのである。
戦争の常識。
ソレを覆した彼の在り方は彼女にとって異端であった。
~黄巾本隊~
「報告!!左軍の先鋒大将の管亥さまが討ち死に!!敵右軍の先鋒は未だ健在!」
「!!なんだと!?」
本陣に動揺が走る。
「詳細を」
「はっ!中央に位置している義勇軍の大将である朱の軍旗が左軍の左方より騎馬を以て突入!
それに気付いた管亥さまが敵を討とうと迎撃に向かわれたのですが、名乗りを上げている最中に斬られたと…」
「なっ…」
「兄者…」
言葉を失う丁遠志。
それを気遣う苦虫を噛み潰したような顔の鄧茂。
武人としての誇りを穢された気がした。
名乗りを上げ正々堂々と敵と相対せんとした管亥。
それを名乗りの途上で斬り伏せるなど…。
戦に綺麗も汚いもないのかもしれない。
だが、彼にはそれが許せなかった。
「冷艶鋸を持てぃ!!」
「はっ!」
兵から大刀を受け取る。
冷艶鋸。
演義にて関羽が愛用していたとされる大刀。
青龍偃月刀である。
「俺も行くぜ!!」
裂帛の気合と共に吼える鄧茂。
本来であれば軽挙と言える愚行。
だが、それを止める者はいない。
「ゆくぞ!弟よ!!」
「応!!」
今、黄巾が誇る二将が義勇軍へ牙を剥かんと立ち上がった。
既に予測されてた方はいるかと思いますが、
丁遠志と鄧茂のモデルは三国志演義の関羽と張飛です。
この時代の戦争は本当にマスゲームで、策や計略なんてものは戦場で使われることが殆どなかったらしいです。
それを実用化まで持っていったのが曹操らしいですね。
そもそも大規模な戦争らしい戦争なんてなかったというのが事実で大軍を出しても小競り合い程度で終わっていたらしく、漫画やアニメ、ゲームの様に派手な戦闘は殆ど無かったみたいです。
その代わり、偉くなれば偉くなるほど死にやすい時代で、指揮官が陣頭指揮を執るのが当たり前だったようです。
歴史に名を残している方の多くが戦死しているのも納得ですね。
続きます。




