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真・恋姫†夢想~朱霊伝~「六人目の大将軍」  作者: 羅貫厨
2章・歌姫+黄巾=乱
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~黄巾の乱~家族の団欒と決意の別離

最近暑いですねー。皆さんは如何お過ごしでしょうか?

羅貫厨は溶けてます。

 ~荊州宛城~



「たっだいま~!」



 住み慣れた家の扉を開き、愛しき者達へ帰省の声を掛ける。


 彼の名は韓忠。字を紀章。真名を大和。


 波才と志を同じくした荊州出身の英傑である。


 波才から荊州を纏める大将の一人として派遣された為、思った以上に早く家に帰ってくる事が出来たのだ。


 宛太守の褚貢が同士に加わった為に宛を今まで以上に自由に出入り出来る様になったというのが大きい。


 入城認可を待っている者達には申し訳ない気分になるが最優先で入れて貰えるようになった。



「あら、大和くんお帰りなさい」



 出迎えたのは長い藤色の髪を揺らす一人の美女。


 彼女の名は黄月英。字を漢升。真名を紫苑。


 荊州の名士である黄承彦の娘である。



「おー!紫苑!逢いたかったぜ~。青洲まで行ってたから随分と家を空けちまったなぁ。すまんすまん」


「いえ、大和くんは大和くんのやりたい事をやってくれればいいのよ?帰ってくるのを楽しみにして待っているのも悪くないし、ね?」



 お互い苦笑しながら身を寄せ合い唇を重ねる。


 そこへ、



「お父さーん!!」



 ぴょーんと幼女が飛びつく。



「おおぅ!?璃々!ははは!ただいま~!」



 飛び付いて来た娘を抱える様にしてその場でくるりと一回転。



「璃々~。ちゃんとお母さんの言うこと聞いていい子にしてたか?」


「うん!お母さんのお手伝いとかいっぱい頑張ったよー!」


「お!そうかそうか!ちゃんとお手伝いしたか!いい子だな璃々!」



 元気いっぱいの顔で胸を張る娘の頭を優しく撫でてやる。


 にへへーと目を細める娘を抱き上げそのまま肩車。



「実は今日はまだ何も食ってなくてなぁ…紫苑、残り物とかでも良いから何かない?」


「あらあら~、お昼時にはちょっと早いから簡単な仕込みが終わっているだけなのよ」


「ありゃ、そうかぁ。じゃあ家族で外食でもどうだ?」


「そうね~。仕込みの分は夕餉に回せば良いですからお出掛けもいいわね」


「わ~い!」



 という訳で外食に決まったらしい。


 家を出て喧騒で賑わう街を家族で手を繋いで歩く。



「璃々~。何が食べたい?」


「おいしいのがいい~」



 幅が広すぎて困る返答である。


 なんでも良いと言われるよりはマシなのだろうが、それでも困るものは困る。


 実際、世の中の奥様達はなんでも良い、美味しい物がいいと言われブチ切れてる人は多いはず。


 もっと具体的に言ってくれと。



「そっかぁ、美味しい物かぁ…紫苑はどこがいい?」


「大和くんと一緒ならどこにでも着いていくわよ?」



 そしてまた困る韓忠。


 転勤先に着いて来てくれと言った時にこのセリフは嬉しいだろう。


 が、お出掛けする時にどこにでもと言われると困る。


 世の中の恋人たちもこのセリフに内心ブチ切れてると思われる。


 まぁ、儒教国家であるこの国では男を立てる事として当たり前なのだろうが……。



「そ、そっか(参ったなぁ…どこにしようか)…」



 ゆっくり考えたい所なのだが腹は減っている。


 考えても拉致があかないと思い、近場の飯屋へ。


 店内に入り注文を済ませ、紫苑へ話しかける。



「なぁ、紫苑。俺の気分で決めちゃったけど良かったか?」


「ふふ。こうして家族で一緒にいられるのにワガママは言わないわ」



 そう言って微笑む紫苑。



「ねぇ、璃々もわがまま言わないよ?」



 という娘の頭を撫でてやりながら



「ははっ。そっか、ありがとな」



 素直な気持ちが口から零れる。


 家族との団欒を楽しんでいる内に料理が運ばれて来て食事に取り掛かる。



「こら。璃々、ちゃんと噛んで食べなさい」


「はーい!………三十回…」



 睦まじい母娘の会話。



「お!じゃあ、お父さんは百回噛むぞー!もがもが………」



 何故かそれに張り合う父親。


 ……ふと思う。



(俺はあと何回こうやって家族と穏やかな刻を過ごせるんだろうなぁ…)



 娘が嫁に行くまでだろうか、もしかしたら黄巾が起こす争いで自分は死ぬかもしれない。


 死ぬつもりはないが万が一ということもある。


 この二人を巻き込む事はしたくない。


 益州辺りへ避難させるべきだろう。



「どうかしたの?」



 愛する妻の声に我に返る。


 どうやら考え込んでいたらしい。


 紫苑が不思議そうに首を傾げている。



「いやぁ、璃々が嫁に行っちまったらこうやって家族で一緒に食事することも減るのかなぁ…と」


「クスクス…気が早すぎるわよ。それに、先ずは素敵な男の子を見つけて貰わないと」



 クスクス笑いながら言う紫苑だが、言ってることは韓忠と大差ない。


 似たもの夫婦である。


 途中までは…。



 それからは気を取り直し食事を進めた。



 食事を済ませてから家族で街を散策し店を冷やかしていれば時間の経つのは早いもので気が付けば日は既に傾いている。


 歩き疲れたのか璃々は韓忠の背中で小さな寝息を立てている。


 夕日に影が主を追いかけるように伸びる中、彼らは住み慣れた家へと帰っていった。

「ねぇ、大和くん。なにか言いたい事があるんじゃないかしら?」



 睦み愛し合った余韻に浸る中、紫苑が声を投げる。



「ん?なんで~?」


「クスッ…なんでって言われても…女の勘。かしら?」



 勘でこちらの心情を察して来る愛する妻。


 正直敵わないなと思う韓忠。


 もしかしたら顔に出ていたのかもしれない。


 ただ、今を逃せばこの先言うのが辛くなるだけだろう。



「紫苑。俺は仲間と共にこの腐敗した国を立て直す為に立ち上がる事になった。この宛城の太守褚貢も俺達の同志だ。俺達が立ち上がれば中華の広い部分で戦争になるだろう…」


「………」



 紫苑は黙って韓忠に言葉に耳を傾けている。



「万が一の事もある。璃々と荊州を離れてくれないか?お前たちを巻き込みたくない」


「それは…」



 紫苑には韓忠が何を言いたいのかが分かってしまう。


 本音を言ってしまえば側に居たい。


 だが、もし万が一が起きてしまった場合、自分は疎か娘の璃々でさえ粛清されるだろう。



「なーに、負けるつもりも死ぬつもりもないさ。少しの間知り合いの所に遊びに行ってる感じで待っててくれよ」



 ニコリと微笑む韓忠。



「…わかったわ」



 紫苑にはそう言うしか出来なかった。








 それから数日後、紫苑は娘を伴い益州にいる友人の厳顔の元へ旅立っていった。



『愛してる』と『またね』の言葉を残して…。

次回は涼州でのお話になります。

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