~冀州袁家~虎に翼
戦闘シーンを文面で表すのって難しいですね。難しかったので端折りました。ごめんなさい。
ちびっ子二人にもみくちゃにされ、三人の姉達により救出されました。
朱霊です。
俺は今現在案内された客間にて、寝台の上で正座中で御座います。
両脇をちびっ子二人に囲まれ、目の前にはお姉様方三人が仁王立ちして俺を見下ろしているという針の筵。
「コレが私達の婿候補…ねぇ?」
「姉様、何故母様はこんな奴を婿候補にしたんでしょうか?」
「シャオ、いつまでくっついてるつもりじゃ!そろそろ離れんか!」
「さあ?」
「あら?中々見所のある殿方だとわたくしは思いましてよ?」
「やだもーん!美羽が離れれば良いじゃない!」
「麗羽は他人事だからそんな事が言えるのよ。当事者になったら同じ事が言える?」
「なんで妾が離れねばならぬのじゃ!このちびっこ!」
「あら、わたくしは構いません事でしてよ?炎蓮さんが認めた殿方ですもの。」
「それ本気で言ってる?」
「なんですってー!?美羽だってシャオと変わらないでしょー!このちびっこ!」
「私はこんな奴認めないわ!」
見ての通りかなりカオスな事になっております。
俺は触らぬ神に祟りなし。
君子は危うきに近寄らず。
……神から触ってきて危うきから近寄って来た場合はどうすれば良いんでしょうか?
A.逃げれば良い。
逃げらんねぇよ!
何でこんな事になってるかと言うと、
『おい!策、権、尚香!お前達も行け!将来の婿候補だ!頑張れよ!』
と炎蓮さんが爆弾を放り投げ、今現在爆発中です。
誰かタスケテー……。
~玉座の間~
「炎蓮さん。先の発言はどういうおつもりかしら?お教え願えますこと?」
「どうも何もそのままの意味だが?」
「朱霊さんは娘達に相応しい殿方だと見込んでいますの」
「それは此方とて同じ事」
「……退いて下さる気は御座いませんこと?」
「引くつもりなどある訳ないだろ?」
こっちはこっちで爆発してた。
~客間~
「で、いつまで黙ってらっしゃいますの朱霊さん?」
「男でしょー?もっとシャキッとしなさいよねー」
「シャオは朱霊のお嫁さんになるんだから!」
「なんでこんな軟弱者が婿候補なのよ…?」
「なんじゃと!?なら妾も朱霊のお嫁さんになるのじゃ!」
(そういえば南皮にも私塾があるんだったな。袁隗にさんに聞いて見よー)
只今絶賛スルースキル発動中。
南皮に戻って来たのは私塾に行く為であって決して嫁探しの為じゃありません。
周りはギャーギャー五月蝿いけどほっとけば騒ぎ疲れて大人しくなるっしょ!
~中庭~
なーんて思ってた時期が俺にもありました。
スルーしてたら火に油を注ぎまくってたらしい。
で、怒っちゃった三人のお姉様方に引き摺られやって来ました中庭。
問答無用で木剣を握らされた俺の前で孫策さんがプンスカしながら木剣を振り回しております。
小覇王が相手かよ…。
周りを見ると、腰に手を当て此方を睨んでる孫権さん。
お腹あたりに左腕を回し、左手で右肘を支える様にして頬杖をついてる袁紹さん。
未だにプギャプギャ喧嘩してるちびっ子二人。
止めてくれそうな人はいないな。
さてどうするか…。
なんて考えてたらいきなり突っ込んでくる孫策さん。
孫策といい、孫尚香といい突進してくるの好きだな!
「いきなりかよ!?」
「あら、油断してるのが悪いのよ。文句言わないでよねー」
「ごもっとも」
さて、始まっちゃいました。
~朱霊vs孫策~
開始早々突っ込んで来て右手で下から掬いあげる様に一閃して来る孫策。
左に回り込む様に躱し回る様に水平に薙ぎ払う。
孫策は掬い上げた木剣を振り向き様に垂直に落としてくる。
木剣同士がぶつかり、水平に凪いだ俺の方は力負けし弾かれるが、弾かれた勢いのまま体を左に捻り後ろに下がりつつ回転しながら袈裟狩りで牽制。
木剣を垂直に振り下ろした孫策はその場で跳ねる様に後退。
お互いに間合いを取りつつ構え直す。
「へぇー。意外とやるじゃない。」
ニヤリとしながら嬉しそうに言葉を投げてくる。
「ははっ!そりゃどーも。そっちこそやるじゃねーか」
俺もお返しにとばかり声を投げる。
木剣が合わさったのは一合だけだがなんとなくわかる。
同類だ。
仔細は違えど自分の中の獣を持て余している。
白蓮の様に繊細な剣じゃない。
白兎の様な武でもない。
だだ楽しむ為だけの剣。
ただ暴を求め振るわれる剣だ。
恐らく孫策も気付いたんだろう。
嬉しそうにニコニコしてる。
俺も顔がニヤケっぱなしだ。
白蓮や桃香が相手では出せなかったからな。
お互いに無為の構え。
いつでも来いという合図。
今は静かに解き放たれるのを待っている――。
視線が重なる。
そして…、待っていたとばかりに
俺達の中の獣が咆哮えた。
~孫権視点~
「…ぁ…………」
声が出ない。
悪い夢でも見ているかの様だ。
今、目の前で起きているのは試合じゃない。
死合だ。
麗羽を見た。
顔が真っ青になっている。
恐らく私も同じだろう。
私と麗羽は姉様の獣を知っていた。
見た事があった。
でも、私は…私達は見た事がなかった。
同じ獣同士がぶつかり合う所を――。
このままではどちらかが死ぬ。
止めなきゃいけないのに、止めたいのに身体が動かない。
二人は笑っている。
ただただ楽しんでいる。
既に何合打ち合ったのか…。
徐々に姉様が押され始めた。
劣勢になっているというのに姉様は朱霊を愛おしいかの様な眼差しで見つめている。
二人は求め合うかの如く更に加速し激しくぶつかり合う。
まるで逢瀬を重ねる恋人同士の様に……。
しかし、逢瀬の時は終わりを迎えた。
姉様の手から木剣が弾かれ宙を舞い、崩れ落ちた姉さまの首に朱霊の木剣が吸い込まれて行く。
(!!!!)
思わず目を瞑ってしまう。
が、聞こえて来るであろう音が聞こえてこない。
怖くて震えが止まらない。
「俺の勝ちだな」
朱霊の声が聞こえた。
恐る恐る目を開けて見ると、姉様の首筋に木剣を添えニコリと笑ってる朱霊と、
「あ~あ。負けちゃった。」
と、いたずらを見つかった子供の様に舌を出して苦笑してる姉様がいた。
「いやー、楽しかったなぁ!ほれ」
と言いながら手を差し出す朱霊。
「うんうん。こんなに楽しかったのは初めてかも!」
と、その手を取り立ち上がる姉様。
そのまま二人は身を寄せ合って額をくっつけクスクス笑い合っている。
私はそんな二人の姿をただ呆然と見ている事しか出来なかった………。
次回はちびっ子二人の教育に関してのお話になります。
本来はちびっ子達のご機嫌取りに奔走する話の予定でしたが変更しました。




