4話 LV8 ゴブリン
この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。
□□□□□ 4話「LV8 ゴブリン」 □□□□□
やっとメグが辿り着いたのもつかの間、
山賊にさらわれた城主の娘を救出した俺達は、
娘を待つ城主のもとへと帰る。
俺とカズサは、ナタクの肩に乗り、
娘をナタクが抱きかかえて空を飛ぶ。
「シロー、また城に戻るんですか?」
メグには、声を出さず、ゼスチャーで
グッと親指を立てて笑って見せた。
「なんですか、その気持ち悪い返事は、失礼ですー」
「シロー、何やってんの?」
「いや、仕事が上手くいったなと」
「ふーん、そう……」
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□□ 辺境の城 □□
俺達は娘を衛兵へと引き渡す。
報酬をそれぞれ4銀貨貰った。
その日は城に泊めてもらったが、
カズサだけ余計に4銀貨さらに貰って
何も言わず出て行ってくれと頼まれた。
「あの子も生きる気力も復活してた事だし、つきまとわれるのも
困るから助かるわー」
「カズサは、いい奴なのか悪い奴なのか、よくわからんなー」
「そう? 普通よ。普通。それよりもシロー、
私に隠している事があるでしょ」
「えー、まあ、あるけど、特別に隠す事でもないし、
教えるよ」
「へー、どんな事?」
「カズサには見えないけど、そこに死神がいる」
「嘘、冗談?」
「いや、本当にいる。その死神は本来の能力が上手く使えなくて
死んだ人間をHP1で生き返らせてしまう」
「へー、すごい能力だね」
「よくわからない能力だから確実ってわけではないと思う」
「それでもすごいよ、死んだ時の保険になる。
名前はなんて言うの?」
「メグだよ」
「メグちゃーん、私が死んだら生き返らせてね。お願い」
カズサは可愛く頼んでいる。本当に可愛い。
それを見ていたメグが返事をした。
「むー、カズサ可愛いから助けるですー」
「助けるってさ」
「わーい、ありがとう、これからヨロシクね」
「よろしくですー」
「よろしくですーっだって」
会話の伝言めんどくせー。
「シロー、そんな死神連れているんだったら仲間になるメリットがあるわね。
山賊との戦闘では役にたたないから仲間解消しようかと思ってた」
「ですよねー」
「これからは、ヨロシク。あっ、私に手を出すのは無しね」
「はいはい、わかってますよー」
「それじゃ、おやすみなさい。私は寝ます」
「はい、おやすみ」
俺達は、別々のベッドで寝床についた。
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□□ 大きな街へと続く街道 □□
俺達は、次の仕事を探すため大きな街へと移動する事になった。
メグを置いてけぼりにしないため、ナタクの肩に乗り、
街道を歩いて移動する。
「遅いわねえ、なんとかならない?」
カズサが愚痴をこぼす。
カズサは、ナタクで空を飛べばもっと高速に移動できるのに、
歩いて移動は遅いとぼやいている。
「うーん、考えてみる」
最初にメグと会った時、すぐに現れた気がする。
あれと神様がここに転送した能力を使えばいけそうな気がする。
「メグ、神様に会う時、すぐに現れたけど、あれここでもできる?」
「できるですー。天界の神様の部屋への瞬間移動ですー」
「それと、神様の転送の能力を使えばいつでも俺の所へ瞬間移動
できるんじゃないかな?」
「そうですね。シロー頭いいですー、これからはそうするですー」
今の話をカズサに説明する……のめんどくせ。
「カズサ、かくかくしかじかでメグは瞬間移動できるようになった」
「うむ、全然わからんが、よくやった」
俺達が、よくわからない漫才をやっていると
前方で戦闘が行なわれていた。
馬車がゴブリン10匹ほどに襲われているようだ。
女剣士が勇敢に6匹ほどと戦っているが、
残り4匹が馬車の中の令嬢を連れ出そうとしている。
「助けるか?」
「うむ、助けよう!」
ナタクは俺達を肩に乗せたまま、低空を高速で飛ぶ。
(LV8 ゴブリン HP 80/80)×10
ナタクは、令嬢を捕まえたゴブリンを蹴り殺す。
俺は、止まる反動でそのまま放り出される。
「うわっ、危ねえ」
思わず空中で魔剣を強く握ると、ふんわり着地ができた。
あれ? 魔剣は念じれば自在に操作できるって事は、空も飛べる?
そんなアイデアも今は後回しでゴブリンとの戦いに集中する。
女剣士と戦っているゴブリンに切りかかる。
「助太刀するぜ!」
「かたじけない」
俺は、ゴブリン3匹ほどをあっという間に切り殺した。
女剣士も1匹を既に倒していて残り2匹を切り殺す。
「助かった。礼をいう。はっ! お嬢様は無事か?」
「いいって事よ」
女剣士はもういなかった……。
「お嬢様!」
女剣士は叫ぶと、カズサに助けられていた令嬢のそばへ移動していた。
「この女性が巨人を使って助けてくれました」
カズサは地面に降りていて、令嬢の肩を抱き、令嬢もカズサに体を預けている。
「お嬢様を助けていただき、ありがとうございます」
女剣士は深く礼をする。
俺へのご褒美は、もう聞きなれてきたレベルアップだった。
トゥルルトゥルー!
『レベルアップ LV5になりました』
『ドロップアイテム 80銅貨』
俺は、気をとりなおしてカズサ達に近づく。
女剣士が提案する。
「どちらにお向かいでしょうか? できれば御一緒して
お嬢様を警護していただけると助かるのですけど……」
カズサが答えた。
「ええ、よろしくてよ。シローもそれでいい?」
「ああ、いいよ。特に急ぐ必要もないし」
「それでは、警護よろしくお願いします。お礼は街についてから
という事でよろしいでしょうか」
「はい」
「うむ」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
カズサは、令嬢と馬車の中でイチャイチャしている。
俺は、女剣士と馬車の前に座る。
カズサは、異世界生活を満喫しているなあ。
それに比べて俺は……。
チラッと横を見る。
馬車を操る女剣士は、まあまあ美人だ。
だけど、俺にはまだ女をくどくスキルがねえええ。
女剣士から話しかけてきた。
「この街道は比較的安全で、いつもならゴブリンがあの数で
襲ってくる事はないのですが、誰かの策略かもしれません。
気を抜かないでくださいね」
うわ、よこしまな心を読まれていたんだろうか。
「そうですか。気をつけます」
ここで気の利いた事を言えないのが、ダメなんだろうな。
ナタクの事が気になって後ろを見てみる。
ちゃんとついて来ているようだ。
女剣士が聞いてくる。
「あの巨人は、ゴーレムなのだろう」
「はい、そうです」
「知り合いにゴーレム使いがいる。しかし、あのようなゴーレムを
見るのは初めてだ」
「まあ、そうでしょうね」
異世界のアニメのスーパーロボットとは言えない。
言っても信じてもらえないだろう。
そんな事を話している間に、前方に4体のゴーレムが見えた。