2話
「ただいま〜。お父さん、お母さん。」
あれから家へと真っ直ぐに帰ると、日は落ちあたりはすっかり暗くなっていた。
「今日は随分と遅かったじゃないか。何かあったのか?」
「森に行ってきたんだ!だけど気づいたら寝ちゃってたんだ。起きたら外がもう暗くなってきてたから急いで帰ってきたんだ。」
「そうか。森に入るなとは言わんがあまり遅くはなるなよ。流石に父さん達も心配になるからな。」
「ごめんなさい。」
「わかったならいいんだ。」
「うん。あれ?そういえばお母さんは?」
「ん、あぁそういえば言っていなかったな。喜べアル。お前にもうすぐ弟か妹が出来るぞ。」
「え⁉︎」
「アルが遊びに行って少し後にお母さん気分を悪くしてな。」
「気分が治らないから心配になってロウさんに診てもらったんだ。そしたらお母さんのお腹の中にアルの弟か妹がいたのさ!」
「本当⁉︎」
「あぁ、本当だとも。」
「凄い‼︎僕に弟か妹ができるんだね!」
「あぁ。」
アルの頭の中には「凄い」という言葉しか思い付かないくらい喜びに満ちていた。それは、無意識のうちに小躍りしてしまう程であった。
「アル、これから、お母さんは産まれてくる子のために力を蓄えなければならない。だから、お母さんを手伝って助けてやってくれないか?もちろん、お父さんも手伝うがな。」
「うん!絶対手伝うよ。」
「はは、頼むぞ。あ、お母さんは奥にいるから顔を見してこい。」
緊張というよりは、どうやら怯えているようだ。無理もないかもしれない。会った人に差別を受けてきたのかもしれないのだから。
「俺の名前はアルバ、アルバ=ユーリス。君は?」
「わ、私はリナ、ただのリナ。」
「そっか。よろしく。」
「う、うん。よろしく。」
そう言って握手をする。その時の彼女の手は若干震えていた。やはり怖いのだろうか。
「ね、ねぇ?私が嫌じゃないの?」
やはり、何かを言われてきたのだろうか。悲しげな顔で聞いてきた。
「嫌いじゃないっていうか、会ったばっかりだしわかんないよ。」
「で、でも、今までに会った人はみんな会ってすぐに嫌われたよ?」
「俺は、人種とか、人の評価だとかそういうのは気にしない。先入観にとらわれたっていいことないしね。それに、俺も同じくらいの年齢の人に避けられてるから。」
「そう・・なんだ。ありがとう。でも、やっぱりごめんね。信じれないや。」
「・・ははは。正直なやつだなお前は。初対面のやつに初めて言われたよ。別にいいよ、信じてくれなくても、今」
「なんで?」
「明日も会える?ここにきたら。」
「え、うん。することないから・・・ここにいるけど。」
「なら、明日もここに来るから。また、話せないか?」
「え、いい・・けど。どうして・・・信じられないって言われたのに来るの?」
「村で話せる同い年がいないんだ。それに、面と向かってそういうことが言われて、なんか、仲良くなれそうな気がしたからな。それに、今日はもう日が暮れるから帰らないといけないんだ。親との約束でね。」
「・・・・わかった。私も話す人お父さんとお母さん以外に・・いない、から。」
「そうか。じゃあ、そん時に信じて貰えるように頑張るよ。」
「他の人じゃダメなの?」
「あ〜、その、なんていうか、相性が合わないんだよ、きっと。それに比べたらリナとは喋りやすいしな。だから、かな。」
「何それ。」
そう言って、彼女は微笑む。
「じゃあ、また明日ね。アルバ。」
「ああ、また明日な。リナ。」
そして、俺は、村へと帰っていった。