キャラクターメイキング-4
「まず、我々はこのゲームの各部門の責任者であると認識して貰いたい。・・・それで、我々がまず聞きたいのは君の脳反応レスポンスが同じ年齢層の反応レスポンスに比べて3倍近くある事についてなんだが、君はその理由は解っているのだろか?」
と、代表して壮年の如何にも研究者という雰囲気を纏う人物が問い掛けてくる。
VRゲームは直接身体を動かすのではなく、脳から身体へと動かす為の電気信号を延髄部から抜き出しインターフェースへと送り、電脳空間にあるキャラクターへとその信号を送り動かすし、反応はその逆手順を踏む。
その相互のやり取りが行われる事でVRゲームは、成り立っている訳だ。
その相互の信号のやり取りが同年代の人々に比べて早い理由を聞きたいらしい。
確かに俺はその理由を知っているというか、その可能性が起きうる事を事前に聞いていたのだ。
「・・・プライベートな事情は省きますが、俺は現実世界に於いて、生体義肢を用いて生活しています。・・・・・・」
そう前置きして、使用情報データをデータベースへと落とし込む方法の簡略化メンテナンスフリー化を狙ったN・Sを身体へと投与した被験者であること。
また、N・Sが身体の内部にコロニー(群生場所)を造る可能性があり、その可能性が自身に起きた事、そのコロニーが身体の各所に存在しまた、脳内にも存在する事。
そのコロニーが、脳内信号とインターフェースのやり取りを仲介し高速化させている事を告げる。
余談だが、脳内のコロニーの一部が脳の記憶領域と繋がり副脳と言える機能を獲得しているらしい。
「・・・うちの親会社とこのゲームの実現の為に技術提携している研究所が行っている義肢技術の被験者?・・・アレを身体に投与した対象に起こり得る可能性についての論文は読んでいたが、実際にその対象者にソレが起きているとは・・・イヤハヤ、とんでもない確率で遭遇したものだなぁ・・・」
説明が終ったのち、代表である壮年の男性はしみじみと呟く。
周囲のGM達も、一様に考え深い顔で頷きあっていた。
「ただ、ゲーム進行に際してN・Sがどう作用するのかは定かではないのですが?・・・・・・」
と、付け加えるのも忘れずに告げておく。
要は、ゲームにナノマシン群が勝手にアクセスして、情報を弄る可能性がある事を暗に告げる。
「・・・・・・まぁ、それについては君が意識してやらせる訳では無いだろうしねぇ・・・
多少は目を瞑ろう。・・・
というのは、建前でN・Sが起こすであろう出来事のデータがゲームを通じて獲られるのであれば、制限はしない。一プレイヤーとして、扱わせて貰うよ?」
逞しいと言える言葉を貰った。
技術者であるが故に、新機軸の技術がゲームに与える影響をデータとして欲しいという本音が解る言葉だった。