キャラクターメイキング-1
意識が戻ってくると同時に目を開く。
その景色はゴーグル越しの部屋ではなく、幾つかのウィンドウが浮かぶ部屋の様な場所だったす。
周囲はと見渡せば、視界に気になる表示が頭の斜め上に浮かんでいるのが分かったので改めて視線をそこに向けると"waiting"の文字とカウントダウンされる数字。
それを見て、キャラクターメイキング迄には時間が掛かりそうだと思い、他に浮かんでいるウィンドウを覗き見るがそのウィンドウも同様だった。
「何が原因なのかな?」
背後から唐突に別の声が聴こえてきて、それに反応して身体ごと振り向けば、本来であればここに居る筈のないもう1人の人物がいた。
「何故?同時ログインであったとしても、キャラクターメイキングは別空間で行われる筈だろ?」
知らずに声を出してしまう。
俺の声にその人物もまた振り替えりこちらを凝視してくる。
「渡瀬君?」
「七瀬か?」
お互いに名字を呼び合う。
お互いに意外な相手と意外な場所で会うというのは良く聞く話ではあるが自身がその場面に遭遇するというのは奇妙に感じる。
それが、お互いを名字で呼び合う程度のクラスメイトとなると余計そう感じると他人事の様に考えてしまった。
「七瀬がこのゲームに興味があったのは驚きだな?」
知らず笑みを浮かべつつそう告げれば
「渡瀬君も普段からは想像出来ないよ?このゲームをやるなんて?」
そう七瀬も笑いながら返してくる。
俺達が同時ログインで同じ場所で顔合わせをしたこのゲームの名は
「Metal Hunt Online」
崩壊した世界を舞台に、過去の世界の遺物である戦車を武器として、世界中に溢れた危険なミュータントモンスターをハントしていくという設定のSF・RPGジャンルのonlineゲームである。
金属と火薬の匂いが似合う世界観に女子が飛び込んてくるのだから、俺が七瀬へと告げた言葉も妥当ではないかと思われる。
また、七瀬の普段からは想像出来ないとの発言には事情がある。
公言していないが、俺は両膝から下が生体義肢。俗に義足を着けて普段生活をしている。
その調整やデータ取りの為に、企業や大学の研究所に出入りしている為に、クラスメイトとの会話が最低限しかされない為クラス内では浮いた存在になってしまっているから、七瀬の評価も致し方ないのだ。
個人的事情に踏み込んでこないのはありがたいと思う。七瀬個人の内心は俺は解らないのだが・・・