007 温もり
……沢山の感染者達を掻き分け、彼は進む。
……私は彼の進む道を塞ぐ感染者を撃ち、道を切り開く。
──……それは、永遠にも感じられる様な長い時間やっていた気もするし、一瞬で終わった様な気もする。
──しかし、何事にも……"終わり"はある。
「……助かったんだ……。私たち。」
猛スピードで走る車の助手席で私はそう呟く。
……サイドミラーに映るのは遠ざかっていく廃れた都市。そして運転席には彼がいる。
「……ああ、助かったんだ。」
彼は前を向いたまま、呟くように言そう言う。
──……そう言えば。
「そう言えばさ……名前……どうしようか?」
そう私は聞く。すると彼はポカンとした顔で、
「……え?名前?」
と言ったので私は、
「……これから一緒に旅をするんだからさ、お互い名前で呼びあった方がいいでしょ?……だから新しい名前、決めない?」
と彼に言うと、彼は不思議そうな顔をしたが……私は彼に、
「ねえ?私の名前さ、何がいいと思う?」
と聞いてみた。すると彼は、
「……ロゼッタ。なんてどうだ?」
……と、即答した。
「ろ、ロゼッタ……。」
──私は驚いた。
……ロゼッタ、その名前は……かつての……私の名前だったからだ。
──……どうして……その、名前を……?
まさか……彼は……。
「……あ、気に入らなかったか?そ、それなら別の名前を……。」
彼は心配そうにそう言う。
「……いいえ。ロゼッタがいい。」
そう言って私は微笑む。
──彼がロゼッタが良い、と言ったのなら、ロゼッタと呼ばれても良い、と思ったからだ。
「……じゃあ、さ。私貴方の事……ジョンって、呼んでもいい?」
私は彼に向かい、そう聞く。
──ジョン、その名前に……私は特別な思い入れがあった。
──……ジョン・アナーバシー。
……あの日私が失った……彼の、名前。
──失ったかと……思っていた。しかし……失っていなかったかもしれない。
「ジョンか……。良いな。」
そう言って彼は笑う。
「良かった……。気に入って貰えて。」
そう言って私も笑った。
──……それから、少しの沈黙。
「……ねえ? ジョン? 」
その沈黙を打ち破り……私は彼に声をかける。
「どうしたんだ? 」
すると彼はそう返事をした。
「……改めてだけど、これから宜しくね? ジョン。」
私はそう言って──笑う。
「こちらこそ宜しく。ロゼッタ……さん? 」
……すると彼は、笑顔で片手を私の目の前に出した。
──その姿が……あの日別れた彼の姿とダブる。
「呼び捨てでいいわよ? ジョン。」
そう言って私は彼の手を握る。
──……その手の温もりは……あの日と全く……同じであった。
Brute's man side.B FIN
ついに完結です!




