一本道
部活の部誌に掲載した作品です。
ここは、どこなのだろう……。
見わたしてみると、私は森の中に立っていた。なぜ、ここにいるのだろうか。ここは、どこなのだろうか。様々な疑問が頭の中を巡るが、それに対する答えはわからなかった。あたりを見回すと、改めてこの状況が異常であると理解った。まず、情報を得られる物――スマホや時計――がなにも無いこと。食料などもないこと。そして……なぜ私がここに来たのかという記憶が全くないこと。
つまり、この状況は、私ではない『誰か』によって創られたと言っていいだろう。
「一体誰が……」
そもそも、私は友達というものがいない。母親もすでに病気で他界していて、父親は顔も知らない。私と関わりのある人は皆無だった。私は、このことを考えるのをやめた。
ふと見ると、私のいるところからまっすぐに道があった。とりあえず、他に道がないのでそこを進むことにした。
もうどのくらい、この分岐のない道を歩いているのだろう。私は、さっきからほとんど変わっていない風景を見て、溜息をついた。
そのうちに私は、もうこのままここで息絶えてもいいと思い始めた。孤独な学校、誰もいない自宅……。別に必死に戻らなくてもいいじゃないか。私は、日が暮れても出られなかったらこの森の一部になろうと決めた。
やがて、森が夜に飲まれた。その時、私の目は一つの光を捉えた。光の方へ歩いていくと、小さな花畑があった。そこには、何年か前に死んだはずの母がいた。私は、幻覚だとおもいつつも、母のもとへ歩いて行った。
母は、私に気づくと驚いた顔をしたが、すぐに悟ったらしく、私を抱きしめてくれた。私は、孤独に晒されていた心が、温もりで満たされたのを感じた。そして、母に連れられて、光の中へと吸い込まれていった。
少女の行方は、誰も知らない。
Fin
さいごまで読んでいただきありがとうございます。