1/2
生き残った少年と少女
2013年2月某日の日本国は、冷酷なまでに冷え切っていた。物理的な寒さもあったが、何よりもこの街には人の温もりが全くと言っていいほど無かった。敵兵がうろつき、関係のない非戦闘員を見つけては嬲り殺しにしていく。
時は夕暮れ。廃墟と化したビル群の間を縫ってこちらまで届く緋色の輝きは、虚しさを一層際立たせ、それと同時に、敵国への怒りを覚える。
「そろそろ起きる時間だ」
俺は横で眠っている妹を叩き起こすと、食糧などが入ったバックパックを担ぎ、建物の壁に立て掛けてあるAK47を装備した。
目をこすりながら起き上った妹も、手際良く荷物をまとめ始めた。俺はその様子を見て感心しながら、辺りの警戒を始めた。
結局敵が来ることもなく準備を終えた俺たちは、街の至る場所にいる米兵の目を掻い潜りながら、次の目的地となるビルへ向かうことにした。そのビルに行けば、同志と合流できるし、食糧も補給できる。直線距離で約30キロ、敵との戦闘が無ければ明日までには着けるだろう。
俺たちは近くのマンホールの蓋を開けると、暗闇が広がる秘密の地下道へと降りて行った。