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熱中症警戒アラートを出しておきながら、夏の甲子園を敢行する不思議。

作者: ムクダム
掲載日:2026/08/12

 初めに断っておくと、私は野球が嫌いである。野球に関する良い思い出がまるでない。少年野球チームでは補欠で試合に出たことはなく、いつも雑用ばかりさせられていたし、キャッチボールの練習ではいつもチームメイトから罵詈雑言を浴びせられていた。学生時代に友人と見にいったナイターゲームでは、応援団らしき集団の喧しさに辟易した。ついでに野球場で買った弁当も不味かった。

 何より、自分の周りで野球に熱中する連中に碌な人間がいなかった。小学校の同級生で、後に早稲田に進学してハンカチ王子と一緒に甲子園に出場した人間がいた。彼はお山の大将気取りのいじめっ子だった。成人式後の飲み会では、その天狗ぶりに拍車がかかりまるで人間的な成長を感じさせなかった。ああいう人間がいずれプロ野球選手になるのかと思うと、プロ野球の世界の程度が知れると感じた。薬物やら、暴力やら、女性問題やら、どんなニュースが飛び出してきても全く驚くことがない。そんな人種が持て囃される世の中になんともいえない失望を覚えたものである。

 兄弟全員が野球チームに所属し、年柄年中野球のことばかり考えている親戚がいたが、親戚の集まりでの彼らのテンションにはついていけなかった。健康な体に、誰とでもすぐ打ち解ける社交性、そしてひねくれたことを言わない無邪気さ。概して、野球に関わる人間は集団行動が得意な人種であり、私には相性が悪い。 


 そんな私でも夏の甲子園に関して言えば、選手たちに同情を禁じ得ない。炎天下の日中に、球を投げたり、打ったり、球を追いかけて走り回される子供たちの姿はあまりに痛々しい。

 おまけに、本来は子供の安全を第一に考えるべき大人が、そんな光景を嬉々とした笑顔で眺めているのだからグロテスク以外の何物でもない。

 先日、ニュース番組で熱中症警戒アラートについて報じられていたが、その直後、夏の甲子園のニュースが流れときにはなんとも薄寒い気持ちになった。

 ほんの数秒前まで、熱中症は命取りになるので屋内で涼しく過ごしましょうと読み上げていた人間が、その真逆のことをやっている甲子園のことを嬉々として報じているのである。こんなニュースはAI音声で流す方がまだマシだと思った。人間が非人間的なことを平気で行うことに恐怖を覚えるばかりだ。


 ご存知の通りの炎天下である。そんな状況で、子供が激しい運動を繰り広げることになる野球大会を敢行することにどれだけの理があるのだろうか。

 そもそもなぜ夏にやるのか。もう少し涼しい季節にやっても良いのではないか。夏の甲子園(正式名称:全国高等学校野球選手権大会)が始まったのは1915年であり、今から100年以上前である。当時と現在では夏の気温に大きな違いがあるはずだ。

 きっと色々事情があるのだろうが、利権やら伝統やら、およそ真っ当な内容ではないだろう。単に意固地になっているだけという可能性も大いにある。この国では、これまでやってきたことに異議を唱えられると、理屈ではなく感情で反発する人間が多いように思える。

 もちろん、これまでも熱中症対策についてはさまざまな議論されているようだが、夏に甲子園を開催することの是非が議題に上がったことはあるのだろうか。

 開催時期をずらすのが無理なら、せめて、大人たちがやっているようにドームでナイターゲームをすれば良いではないか。青少年が夜遅くまで試合をするのは健康上良くないと言われそうだが、炎天下での試合を強いることの方がよほど健康に害があると思うが如何か。


 口先だけで注意を呼びかけ、実際の行動はそれと真逆という状況に気持ち悪さを感じているのだ。社会全体で、物事を深刻に捉えることが出来ない危うさが漂っているように思える。

 青少年の汗やら、青春の涙やら、美化された常套句で問題の本質を覆い隠す。発想の飛躍かもしれないが、今が良ければそれで構わないという機運がずっと社会を覆っており、それが現在まで続いているのではないか。

 欺瞞はいつまでも続かない。いつかは決定的な破局を迎えることになる。だが、本当に恐ろしいのは、その破局を迎えてもなお、喉元過ぎればそのことを忘れ、人間はまた同じ過ちを繰り返すことになるだろうと予想できる点にある。

 私たちは過去から学ばないのではない。学んだことを忘れ、都合よく書き換えてしまうのである。これは人間という生き物にとって最も悲惨な性質であるといえないだろうか。終わり


 

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