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バナナ星人のおじいさん

作者: なるかわ
掲載日:2026/03/17


未来からやってきたバナナ星人のおじいさんは、今日も元気に森へ屍を漁りに出かけました。

「いってらっしゃい」

デスボイスでそう見送ったのは、ヘヴィメタルバンドのボーカルのお婆さんです。そのデスボイスは窓ガラスを三枚割り、近所の犬を失神させましたが、おじいさんはすっかり慣れっこでした。

おばあさんはおじいさんが見えなくなると、バナナの皮を入れたゴミ袋を手に取りました。川への不法投棄。これが週に一度の、おばあさんの小さな楽しみでした。

川辺に着いたおばあさんが袋を放り投げようとしたその瞬間——

どんぶらこ。

どんぶらこ。

川の上流から、目にスカウターを装着したスーツ姿の中年男が流れてきました。

税務官・後藤でした。

スカウターが起動し、おばあさんを分析します。ピピピピ——

〔判定:脱税王 シーヌマーデ=ハラワン 納税額:0円 逃走回数:114回〕

 お婆さんは脱税王シーヌマーデ=ハラワンだったのです。

「見つけたぞ!」

後藤が川から這い上がるのを見て、お婆さんは相手をコロすか、逃げるか考え、逃げることを選びました。倉庫からバナナ色の革ジャンをひっつかみ、愛車のハーレーにまたがって、エンジンをかけます——

グオン。グオングオングオン——!

けたたましいエンジン音とともに、おばあさんは川沿いを爆走し始めました。

後藤は物凄い速さで追いかけました。世界陸上選手権フルマラソンで三連覇している後藤でしたが、差はまったく縮まりません。グオングオングオン——けたたましい音もやみません。

後藤は知りませんでした。

グオングオンという音が、おばあさんのデスボイスであることを。

そして彼女が乗っているのが、ハーレーではなく、ハーレー風自転車であることを。

一方、森の奥。

おじいさんは土を掘っていました。スコップを打ち込むたびに、白いものが顔を出します。人間の骨です。

「この骨が未来に帰れる材料になるぞーッ!!」

バナナ星人のおじいさんは興奮のあまり叫びました。鳥が三羽逃げました。

骨を袋いっぱいに詰め込み、さあ帰ろうとしたとき——光る竹が目に入りました。

おかしな竹だと近づいていくと、その隣で、光るタケノコを鍋でグツグツ煮込んでいる人物がいました。

未来の税務官・鈴木でした。

スカウターが起動します。ピピピピ——

〔判定:脱税プロマジシャン バナーナ=ノー=ゼイシナーイ 納税額:0円 逃走回数:514回〕

 お爺さんは脱税プロマジシャンバナーナ=ノウゼイシナーイだったのです。

「逃がさん」

鈴木は鍋を置きました。おじいさんは袋を抱えて走り出しました。

追跡戦の最中、おじいさんはふと考えました。

——こいつを追い払う方法はないか。

そこで閃きました。

う○ちを投げれば、あいつを撃退できるのではないか、と。

おじいさんは立ち止まり、踏ん張りました。全力で踏ん張りました。

……出ませんでした。

水分が足りなかったのです。水、一杯さえあれば出せるのに。

おじいさんは涙をのみ、汚いお尻をしまって、川に向かうことにしました。

川に着いたおじいさんが見たのは、ハーレー風自転車をぶっとばしながら逃げ回るおばあさんと、それを全力疾走で追う後藤の姿でした。

「おばあさんが!」

おじいさんは迷わず川に飛び込みました。がぶがぶと水を飲みました。

準備完了。

おじいさんは光速でバナナのような形のう○ちを製造し、それを税務官鈴木めがけて投げました。

「うぎゃぁぁあああッ!!」

鈴木は悲鳴を上げ、その場に倒れました。

しかし次の瞬間——後藤もそこへ駆け込んできました。

おじいさんはすかさず第二弾を構えました。渾身の一投。

後藤はそれを受けました。しかし、う〇ちを受けたはずの後藤は、ゆっくりと振り返りました。

「私は——」

後藤は高らかに言いました。

「元う○ち省の官僚だ」

税務官後藤にう〇ちは通用しなかったのです。おじいさんは膝から崩れ落ちました。

その瞬間、グオングオングオン——ハーレー風自転車が猛スピードで突っ込んできました。

おばあさんです。

おばあさんはここで口を開けて、入れ歯を取り出しました。仕留めるために——

しかし入れ歯は弧を描き、後藤ではなく、おじいさんの頭に直撃しました。

 お婆さんは頭を大きく上下に振りながらデスボイスを出しているので、正確なコントロールはできませんでした。

「痛ぁッ!!」

怒ったおじいさんは自分の入れ歯を取り出し、後藤に全力で投球しました。

後藤は入れ歯を見た瞬間、顔色が変わりました。

実は後藤、ちょうど歯槽膿漏だったのです。「自分も入れ歯になったらどうしよう」という恐怖が、三連覇フルマラソンランナーの両脚を歯の根っこのように縫い止めました。

「……参った」

後藤はがっくりと膝をつきました。

税務官二人を振り切ったおじいさんとおばあさんは、手を取り合って夕焼けの中を歩いて帰りました。おじいさんの袋には骨。おばあさんのボエボエボエと喉の調子をととのえています。

「今日も疲れたのう」

「いってらっしゃい」

「それは、帰ったときのセリフじゃないぞ〜」

おばあさんのデスボイスが、夕暮れの空に響き渡りました。近所の犬が、また失神しました。

めでたし、めでたし。

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